18 / 32
18 優しい言葉
しおりを挟む
「……大丈夫か?」
「は、はい……」
(こんなのが日常茶飯事だなんて……私よりもずっと酷い……)
公爵家の次男に対する扱いとは思えない。
彼は幼い頃からこんな境遇を耐え抜いてきたのだろうか。
何て強い人なんだろう。
そう思いながら目の前にいるダリルをじっと見つめていると、彼は私の視線に気付いたようで、顔を上げた。
「……同情しているのか」
「い、いえ……」
慌てて否定しようとするも、彼は私の心の内に気が付いたのかフッと嘲笑うように口角を上げた。
「俺からしたらお前の方が可哀相だ。俺のように逃げることも出来ずこんな場所であの人たちと一生を過ごしていかなければならないのだから」
「……いえ、一番の被害者は旦那様とオーレリア様ですから」
「……何だって?」
そう口にすると、彼が驚いたように目を丸くした。
「兄上とオーレリアが被害者だと?――たしかに愛する者と結婚出来なかったのは可哀相だが、妻を蔑ろにしていい理由にはならない。それにオーレリアは別の相手と結婚してしまえばいいだけの話だ。兄上以外にも男なんて沢山いるんだからな」
「ッ……」
それを聞いて何だか泣きそうになってしまった。
ここへ来てから初めて優しい言葉をかけられたような気がしたからだ。
「で、ですが……私と旦那様の婚約が決まったときオーレリア様はショックで寝込まれたとお聞きしました……今でも立ち直れていないと……」
そこで、彼は呆れたような顔で私の言葉を遮った。
「――お前、あの女のこと何も知らないんだな」
「え……?」
突然の冷たい声に驚いて顔を上げると、彼が不機嫌そうな顔で私を見ていた。
(何だろう……?)
今になって気が付いたが、ダリルはオーレリアの話になると度々このような顔をすることがあった。
兄の恋人だったのだから何度か会ったこともあるはずだ。
(ウィルベルトの愛する人だから嫌っているのかしら……?)
「とにかく、兄上やオーレリアのことでお前が気に病む必要は無い。お前が一番の被害者であることに変わりは無いんだから」
「は、はい……」
戸惑いながらも頷くと、彼が一瞬だけ笑ったような気がした。
その後すぐに顔を逸らしてしまったため、勘違いかもしれないがそれでも嬉しかった。
私に笑顔を向けてくれる人は彼が初めてだったから。
(この公爵家にそんなことを言ってくれる人がいただなんて……)
ここへ来てからというもの、辛いことばかりだった。
夫となった人には愛されることなく冷遇され、義父には醜悪な目で見られ、義母にはキツく当たられていた。
その上使用人たちからも無視され続け、心が壊れそうになっていた。
だけど、彼だけは違った。
人を噂で判断することなく、よそ者の私にこんなにも温かい言葉をかけてくれた。
彼だってとても辛いはずなのに、どうしてこれほど他人に優しく出来るのだろうか。
私は到底真似できない。
(嬉しい……)
胸がとても温かくなった。
「は、はい……」
(こんなのが日常茶飯事だなんて……私よりもずっと酷い……)
公爵家の次男に対する扱いとは思えない。
彼は幼い頃からこんな境遇を耐え抜いてきたのだろうか。
何て強い人なんだろう。
そう思いながら目の前にいるダリルをじっと見つめていると、彼は私の視線に気付いたようで、顔を上げた。
「……同情しているのか」
「い、いえ……」
慌てて否定しようとするも、彼は私の心の内に気が付いたのかフッと嘲笑うように口角を上げた。
「俺からしたらお前の方が可哀相だ。俺のように逃げることも出来ずこんな場所であの人たちと一生を過ごしていかなければならないのだから」
「……いえ、一番の被害者は旦那様とオーレリア様ですから」
「……何だって?」
そう口にすると、彼が驚いたように目を丸くした。
「兄上とオーレリアが被害者だと?――たしかに愛する者と結婚出来なかったのは可哀相だが、妻を蔑ろにしていい理由にはならない。それにオーレリアは別の相手と結婚してしまえばいいだけの話だ。兄上以外にも男なんて沢山いるんだからな」
「ッ……」
それを聞いて何だか泣きそうになってしまった。
ここへ来てから初めて優しい言葉をかけられたような気がしたからだ。
「で、ですが……私と旦那様の婚約が決まったときオーレリア様はショックで寝込まれたとお聞きしました……今でも立ち直れていないと……」
そこで、彼は呆れたような顔で私の言葉を遮った。
「――お前、あの女のこと何も知らないんだな」
「え……?」
突然の冷たい声に驚いて顔を上げると、彼が不機嫌そうな顔で私を見ていた。
(何だろう……?)
今になって気が付いたが、ダリルはオーレリアの話になると度々このような顔をすることがあった。
兄の恋人だったのだから何度か会ったこともあるはずだ。
(ウィルベルトの愛する人だから嫌っているのかしら……?)
「とにかく、兄上やオーレリアのことでお前が気に病む必要は無い。お前が一番の被害者であることに変わりは無いんだから」
「は、はい……」
戸惑いながらも頷くと、彼が一瞬だけ笑ったような気がした。
その後すぐに顔を逸らしてしまったため、勘違いかもしれないがそれでも嬉しかった。
私に笑顔を向けてくれる人は彼が初めてだったから。
(この公爵家にそんなことを言ってくれる人がいただなんて……)
ここへ来てからというもの、辛いことばかりだった。
夫となった人には愛されることなく冷遇され、義父には醜悪な目で見られ、義母にはキツく当たられていた。
その上使用人たちからも無視され続け、心が壊れそうになっていた。
だけど、彼だけは違った。
人を噂で判断することなく、よそ者の私にこんなにも温かい言葉をかけてくれた。
彼だってとても辛いはずなのに、どうしてこれほど他人に優しく出来るのだろうか。
私は到底真似できない。
(嬉しい……)
胸がとても温かくなった。
225
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。
音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」
「はぁ」
婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。
本当の身分を知らないで……。
父の後妻に婚約者を盗られたようです。
和泉 凪紗
恋愛
男爵令嬢のアルティナは跡取り娘。素敵な婚約者もいて結婚を待ち遠しく思っている。婚約者のユーシスは最近忙しいとあまり会いに来てくれなくなってしまった。たまに届く手紙を楽しみに待つ日々だ。
そんなある日、父親に弟か妹ができたと嬉しそうに告げられる。父親と後妻の間に子供ができたらしい。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
【完】幼馴染と恋人は別だと言われました
迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」
大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。
毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。
幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。
そして、ある日突然、私は全てを奪われた。
幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?
サクッと終わる短編を目指しました。
内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる