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20 夫の元恋人
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その日、私はたまたま用があり結婚してから初めて王宮へ赴いていた。
そこで出会ってしまったのだ。
”あの人”と。
――「すみません、道に迷ってしまって。謁見の間へはどう行けば良いでしょうか?」
突然声をかけられて顔を上げる。
そこにいたのは――
「あ、貴方は……」
夫の元恋人――オーレリアだった。
見間違えるはずが無い、ウィルベルトの隣を歩いていたあのときと全く同じ姿だ。
ウェーブのかかった金色の髪に美しい菫色の瞳。
かつては社交界の華とまで謳われたほどの美貌だ。
私がウィルベルトの妻だということに気付いていないのか、彼女は朗らかな笑みを浮かべてじっとこちらを見つめていた。
「あら、私ったら。自分の名前も明かさずに声をかけてしまうだなんて。無礼を働いてしまいましたね」
「あ……」
そう言ってフフッと笑うと、オーレリアはスカートの裾を持ち上げて礼をした。
「初めまして、ヘイル男爵家の長女オーレリアと申します」
「……」
オーレリアが挨拶を終えたのだから、次は自分が身分を明かす番。
しかし、何故だか体が思うように動かない。
夫の元恋人を目の前に足がすくむ。
(しっかりしなさい、たとえ以前の恋人で寵愛を受けていた方であろうと今の妻は私なのだから……)
自分にそう言い聞かせて何とか言葉を紡いだ。
「ブリンストン公爵の妻、リーゼですわ」
「あら、まぁ……」
オーレリアは驚いたように目を丸くした。
「ウィルベルト様が結婚したという話はお聞きしましたわ」
「……」
(ウィルベルト様だなんて……)
他人の夫を下の名前で呼ぶだなんて礼儀に反する行為だ。
わざとなのか、それとも素で間違えたのかは分からない。
オーレリアは私を探るようにしばらく見つめた後、ニッコリと笑った。
「こんなにも綺麗な方と結婚出来るだなんて、ウィルベルト様は運が良いですわね」
「まぁ……ありがとうございます。令嬢」
美しく笑うオーレリアに笑い返した。
何を考えているのか全く分からない。
舞踏会でウィルベルトの隣にいるときとは違って、何故だか妙な違和感を感じる。
「夫人が羨ましいですわ、あのような素敵な方の妻になれて」
「……」
元々その椅子は私の物だったのだと言われているような気分だ。
「ご令嬢もきっと良い出会いがありますわ」
「……」
そう言うと、オーレリアはピクリと眉を動かした。
彼女からすれば私の存在自体が不快極まりないだろうが、こればっかりは仕方が無い。
ウィルベルトは私の夫で、オーレリアと結婚するという未来は訪れない。
彼女はしばらく視線を彷徨わせた後、口元に笑みを浮かべた。
「……ありがとうございます、夫人」
「こちらこそ、こうやってお話出来て光栄ですわ」
本当は会いたくも無かったが、礼儀としてそのように言っておく。
握手をすると、オーレリアは一礼してこの場から立ち去って行った。
(……礼儀正しい人なのね)
王宮で夫の元恋人と遭遇して会話をすることになるとは。
何とも不思議な時間だった。
そこで出会ってしまったのだ。
”あの人”と。
――「すみません、道に迷ってしまって。謁見の間へはどう行けば良いでしょうか?」
突然声をかけられて顔を上げる。
そこにいたのは――
「あ、貴方は……」
夫の元恋人――オーレリアだった。
見間違えるはずが無い、ウィルベルトの隣を歩いていたあのときと全く同じ姿だ。
ウェーブのかかった金色の髪に美しい菫色の瞳。
かつては社交界の華とまで謳われたほどの美貌だ。
私がウィルベルトの妻だということに気付いていないのか、彼女は朗らかな笑みを浮かべてじっとこちらを見つめていた。
「あら、私ったら。自分の名前も明かさずに声をかけてしまうだなんて。無礼を働いてしまいましたね」
「あ……」
そう言ってフフッと笑うと、オーレリアはスカートの裾を持ち上げて礼をした。
「初めまして、ヘイル男爵家の長女オーレリアと申します」
「……」
オーレリアが挨拶を終えたのだから、次は自分が身分を明かす番。
しかし、何故だか体が思うように動かない。
夫の元恋人を目の前に足がすくむ。
(しっかりしなさい、たとえ以前の恋人で寵愛を受けていた方であろうと今の妻は私なのだから……)
自分にそう言い聞かせて何とか言葉を紡いだ。
「ブリンストン公爵の妻、リーゼですわ」
「あら、まぁ……」
オーレリアは驚いたように目を丸くした。
「ウィルベルト様が結婚したという話はお聞きしましたわ」
「……」
(ウィルベルト様だなんて……)
他人の夫を下の名前で呼ぶだなんて礼儀に反する行為だ。
わざとなのか、それとも素で間違えたのかは分からない。
オーレリアは私を探るようにしばらく見つめた後、ニッコリと笑った。
「こんなにも綺麗な方と結婚出来るだなんて、ウィルベルト様は運が良いですわね」
「まぁ……ありがとうございます。令嬢」
美しく笑うオーレリアに笑い返した。
何を考えているのか全く分からない。
舞踏会でウィルベルトの隣にいるときとは違って、何故だか妙な違和感を感じる。
「夫人が羨ましいですわ、あのような素敵な方の妻になれて」
「……」
元々その椅子は私の物だったのだと言われているような気分だ。
「ご令嬢もきっと良い出会いがありますわ」
「……」
そう言うと、オーレリアはピクリと眉を動かした。
彼女からすれば私の存在自体が不快極まりないだろうが、こればっかりは仕方が無い。
ウィルベルトは私の夫で、オーレリアと結婚するという未来は訪れない。
彼女はしばらく視線を彷徨わせた後、口元に笑みを浮かべた。
「……ありがとうございます、夫人」
「こちらこそ、こうやってお話出来て光栄ですわ」
本当は会いたくも無かったが、礼儀としてそのように言っておく。
握手をすると、オーレリアは一礼してこの場から立ち去って行った。
(……礼儀正しい人なのね)
王宮で夫の元恋人と遭遇して会話をすることになるとは。
何とも不思議な時間だった。
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