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29 脅迫
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「……こんな時間までどこへ行っていた」
「……旦那様」
情報収集を終えた私は、夜遅く屋敷へと戻った。
帰って早々、最も出会いたくない相手と遭遇してしまった。
夫のウィルベルトだ。
(どこへ行っていたか、だなんて……)
あまりにも可笑しい質問に笑いが出そうになった。
そこまで私を気にかけたことなんてこれまで一回も無かったくせに。
そんな彼に嫌味ったらしく言った。
「あら、意外ですね。そんなこと気にするほど私に興味なんて無いと思っていましたのに」
「……夫として、妻の浮ついた行動を諫める義務がある」
「夫として……ですか」
私を妻として扱ったことなんて一度もない男が何を言っているのだろうか。
「どこへ行こうと私の勝手ではありませんか?」
「……お前は私の妻でブリントン公爵夫人だ」
「……」
――ブリントン公爵夫人
元々はオーレリアの物だった、お前を公爵夫人とは認めていないと何度言われたことだろうか。
まぁ、今となってはそんなものに何の価値も感じていないからどうでもいいが。
ただ、ウィルベルトに行動を制限されるのは色々と都合が悪かった。
「旦那様こそ、最近家を空けることが多くなりましたね」
「何……?」
ウィルベルトが眉をピクリとさせた。
私は動揺を隠しきれない彼に追い討ちをかけるように彼の耳元で囁いた。
「――元恋人の男爵令嬢と密かに会っていること、私が気付いていないとでも?」
「……!」
そう、ウィルベルトは結婚前に交際していた恋人のオーレリアとの関係を未だに切っていなかった。
両親に反対されても諦められないとは、何て素晴らしい愛なのだろうか。
それを知ったとき随分と感動したものだ。
(普通のご令嬢なら悲しむところでしょうけど……私は違うわよ)
むしろそれをネタにウィルベルトを脅迫することにした。
固まるウィルベルトと目を合わせた私は、口角を上げた。
「このことを貴方のご両親に言ったらどうなるかしら……お義父様とお義母様は過激な方だからオーレリア様を殺害してしまうかも……」
「やめろ!!!」
オーレリアの身を案じるようなことを言うと、彼は分かりやすく顔色を変え声を荒らげた。
(まぁ実際、あの二人ならやりかねないけどね)
私の父であるオーブリー伯爵は王国一の悪徳貴族として知られているが、彼の父親のブリントン公爵もまたなかなかに恐ろしい人間だった。
権力に執着し、自身に逆らう者を決して生かしてはおかない、生粋の暴君だったのだ。
そんな彼にとって男爵令嬢一人殺すことに躊躇いなど無いだろう。
息子であるウィルベルトがそのことを知らないはずがない。
「親が親なら子も子だな!お前はあの悪党の父親にそっくりだ!」
「まぁ、褒めてくださってありがとうございます」
ニッコリと笑うと、彼は苛ついた様子で足早に去って行った。
(それは貴方にも言えることよ)
そんな彼の後ろ姿に向かって、心の中でそう呟いた。
「……旦那様」
情報収集を終えた私は、夜遅く屋敷へと戻った。
帰って早々、最も出会いたくない相手と遭遇してしまった。
夫のウィルベルトだ。
(どこへ行っていたか、だなんて……)
あまりにも可笑しい質問に笑いが出そうになった。
そこまで私を気にかけたことなんてこれまで一回も無かったくせに。
そんな彼に嫌味ったらしく言った。
「あら、意外ですね。そんなこと気にするほど私に興味なんて無いと思っていましたのに」
「……夫として、妻の浮ついた行動を諫める義務がある」
「夫として……ですか」
私を妻として扱ったことなんて一度もない男が何を言っているのだろうか。
「どこへ行こうと私の勝手ではありませんか?」
「……お前は私の妻でブリントン公爵夫人だ」
「……」
――ブリントン公爵夫人
元々はオーレリアの物だった、お前を公爵夫人とは認めていないと何度言われたことだろうか。
まぁ、今となってはそんなものに何の価値も感じていないからどうでもいいが。
ただ、ウィルベルトに行動を制限されるのは色々と都合が悪かった。
「旦那様こそ、最近家を空けることが多くなりましたね」
「何……?」
ウィルベルトが眉をピクリとさせた。
私は動揺を隠しきれない彼に追い討ちをかけるように彼の耳元で囁いた。
「――元恋人の男爵令嬢と密かに会っていること、私が気付いていないとでも?」
「……!」
そう、ウィルベルトは結婚前に交際していた恋人のオーレリアとの関係を未だに切っていなかった。
両親に反対されても諦められないとは、何て素晴らしい愛なのだろうか。
それを知ったとき随分と感動したものだ。
(普通のご令嬢なら悲しむところでしょうけど……私は違うわよ)
むしろそれをネタにウィルベルトを脅迫することにした。
固まるウィルベルトと目を合わせた私は、口角を上げた。
「このことを貴方のご両親に言ったらどうなるかしら……お義父様とお義母様は過激な方だからオーレリア様を殺害してしまうかも……」
「やめろ!!!」
オーレリアの身を案じるようなことを言うと、彼は分かりやすく顔色を変え声を荒らげた。
(まぁ実際、あの二人ならやりかねないけどね)
私の父であるオーブリー伯爵は王国一の悪徳貴族として知られているが、彼の父親のブリントン公爵もまたなかなかに恐ろしい人間だった。
権力に執着し、自身に逆らう者を決して生かしてはおかない、生粋の暴君だったのだ。
そんな彼にとって男爵令嬢一人殺すことに躊躇いなど無いだろう。
息子であるウィルベルトがそのことを知らないはずがない。
「親が親なら子も子だな!お前はあの悪党の父親にそっくりだ!」
「まぁ、褒めてくださってありがとうございます」
ニッコリと笑うと、彼は苛ついた様子で足早に去って行った。
(それは貴方にも言えることよ)
そんな彼の後ろ姿に向かって、心の中でそう呟いた。
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