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1 プロローグ
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王妃フランチェスカ。
ウィルベルト王国の名門公爵家の令嬢で、国王レオンとは幼い頃からの婚約者であり兄妹のように過ごしてきた。
婚約者だった頃の仲は誰から見ても良好で良き夫婦関係を築いていくことが出来ると誰もが信じて疑わなかった。
しかし、実際はそうでは無かった。
「ふぅ……」
フランチェスカは夜になり、一人ポツンと寝台に座る。
こうして一人で寝るのにももう慣れた。
しかし胸の奥から湧き上がってくる寂しさが消えることは無い。
「王妃陛下……」
そんな彼女の背後から声をかけてきたのは王妃専属侍女であり、フランチェスカが公爵家にいた頃から仕えていたリリアンである。
リリアンとは幼い頃からずっと一緒で、フランチェスカが最も信頼を置いている侍女である。
「リリアン……心配しないで……大丈夫よ……」
不安げに自身を見つめるリリアンにフランチェスカは優しく微笑んでみせる。
余計な心配をさせたくなかったからだ。
「王妃陛下……いくら何でもこの仕打ちはあんまりですッ!」
リリアンは声を荒げ、王への怒りに震える。
そんなリリアンをフランチェスカは穏やかな口調で咎める。
「まぁまぁ落ち着いて。陛下には別に愛する人がいるのだから、仕方ないじゃない」
「ッ……」
リリアンはフランチェスカのその言葉に黙り込んだ。
そう、王妃フランチェスカと夫である王レオンは白い結婚である。
王妃フランチェスカと王レオンは幼馴染であり、フランチェスカは密かにレオンを慕っていた。
レオンとの関係は悪くなかったと思う。
レオンはフランチェスカを愛してはいないように思えたが彼女はそれでも良かった。
フランチェスカにとってレオンの傍にいられることが何よりも幸せだったから。
実際、レオンといる間は本当に幸せだった。
しかし、その幸せは突然崩れることとなった。
フランチェスカの婚約者であるレオンがとある少女に恋をしたのだ。
その少女の名はフレイア。
ゆるくウェーブのかかった金髪に、大きな青い瞳。誰に対しても優しく、愛想が良い。
そんな彼女にレオンはあっという間に虜になった。
フランチェスカはレオンとフレイアのことを噂で聞いてショックを受けた。
婚約破棄か、側室として迎えるか。
どちらになるのだろうと考えていたが、ここで予想外のことが起こった。
「レオン王の寵愛するフレイアは平民の少女である」
そう、フレイアは王妃どころか側室にすらなれない身分だった。
そしてそんなある日、フランチェスカはレオンに呼び出される。
「国王陛下、お呼びでしょうか」
「あぁ、フランチェスカ。よく来てくれたな」
レオンは昔と変わらない笑顔でフランチェスカを出迎えた。
しかし以前と違ってその青い瞳はフランチェスカを映してはいなかった。
「フランチェスカ、私の噂を知っているか?」
「陛下に愛する人がいるという話でしょうか?」
「その通りだ」
レオンがあっさりと認めたことにフランチェスカは酷くショックを受けた。
嘘だと、そんなものはただの噂に過ぎないから心配しないでくれと優しく言ってくれることを期待している自分もどこかにいたからだ。
そんな希望はたった今打ち砕かれてしまったが。
「しかし彼女は側室にすらなれない身分でね、私は彼女を愛妾に据えようと思っている」
レオン王は苦しそうな顔をしてそう言った。
まるで本当は正妃にしたかったとでも言わんばかりに。
(愛妾……か)
フランチェスカは愛する人が自分以外の女性と関係を持つということだけでもかなり傷ついた。
フランチェスカはずっとレオンだけを見て生きてきたから。
だがそれでも良かった。
フランチェスカは王妃で彼女は愛妾。
身分の差はハッキリしている。
たとえレオンの愛が愛妾の方にあったとしても王妃として尊重くらいはしてくれるだろう。
そう思っていた。
しかし、その次にレオンが発した言葉はフランチェスカを更なる地獄に突き落とすこととなる。
「それとフレイアのいた市井では一夫一妻が普通で自分以外の女とは関係を持たないでほしいそうだ。君は私の婚約者だ。妻には迎えるが君とは白い結婚になる」
その言葉にフランチェスカの心臓がドクリとなった。
(………………………え?)
そしてそれと同時に彼女は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。
レオンの何気ない一言がフランチェスカを果てしない暗闇へと引きずり込んでいく。
どうして彼はここまで自分に残酷に振舞えるのだろうか。
たしかにレオンにはフランチェスカに対する愛は無かったかもしれないけれど、それでも昔は仲が良かったのに。
一体いつからレオンはそんな風になってしまったのだろう。
フランチェスカはどれだけ考えても分からなかった。
「話は終わりだ」
レオン王はそれだけ言うとすぐに手元の書類に視線を戻した。
今すぐに出て行けという意味だ。
即位してからずっとレオンはフランチェスカに冷たかった。
「は……い……分かり……ました……陛下……」
フランチェスカは震える唇を必死で動かして何とか言葉を紡いだ。
それからすぐに覚束ない足取りで部屋を出て行った。
そしてレオンはそんな彼女の様子を気にも留めなかった。
この日からフランチェスカの地獄のような日々が始まったのだった。
ウィルベルト王国の名門公爵家の令嬢で、国王レオンとは幼い頃からの婚約者であり兄妹のように過ごしてきた。
婚約者だった頃の仲は誰から見ても良好で良き夫婦関係を築いていくことが出来ると誰もが信じて疑わなかった。
しかし、実際はそうでは無かった。
「ふぅ……」
フランチェスカは夜になり、一人ポツンと寝台に座る。
こうして一人で寝るのにももう慣れた。
しかし胸の奥から湧き上がってくる寂しさが消えることは無い。
「王妃陛下……」
そんな彼女の背後から声をかけてきたのは王妃専属侍女であり、フランチェスカが公爵家にいた頃から仕えていたリリアンである。
リリアンとは幼い頃からずっと一緒で、フランチェスカが最も信頼を置いている侍女である。
「リリアン……心配しないで……大丈夫よ……」
不安げに自身を見つめるリリアンにフランチェスカは優しく微笑んでみせる。
余計な心配をさせたくなかったからだ。
「王妃陛下……いくら何でもこの仕打ちはあんまりですッ!」
リリアンは声を荒げ、王への怒りに震える。
そんなリリアンをフランチェスカは穏やかな口調で咎める。
「まぁまぁ落ち着いて。陛下には別に愛する人がいるのだから、仕方ないじゃない」
「ッ……」
リリアンはフランチェスカのその言葉に黙り込んだ。
そう、王妃フランチェスカと夫である王レオンは白い結婚である。
王妃フランチェスカと王レオンは幼馴染であり、フランチェスカは密かにレオンを慕っていた。
レオンとの関係は悪くなかったと思う。
レオンはフランチェスカを愛してはいないように思えたが彼女はそれでも良かった。
フランチェスカにとってレオンの傍にいられることが何よりも幸せだったから。
実際、レオンといる間は本当に幸せだった。
しかし、その幸せは突然崩れることとなった。
フランチェスカの婚約者であるレオンがとある少女に恋をしたのだ。
その少女の名はフレイア。
ゆるくウェーブのかかった金髪に、大きな青い瞳。誰に対しても優しく、愛想が良い。
そんな彼女にレオンはあっという間に虜になった。
フランチェスカはレオンとフレイアのことを噂で聞いてショックを受けた。
婚約破棄か、側室として迎えるか。
どちらになるのだろうと考えていたが、ここで予想外のことが起こった。
「レオン王の寵愛するフレイアは平民の少女である」
そう、フレイアは王妃どころか側室にすらなれない身分だった。
そしてそんなある日、フランチェスカはレオンに呼び出される。
「国王陛下、お呼びでしょうか」
「あぁ、フランチェスカ。よく来てくれたな」
レオンは昔と変わらない笑顔でフランチェスカを出迎えた。
しかし以前と違ってその青い瞳はフランチェスカを映してはいなかった。
「フランチェスカ、私の噂を知っているか?」
「陛下に愛する人がいるという話でしょうか?」
「その通りだ」
レオンがあっさりと認めたことにフランチェスカは酷くショックを受けた。
嘘だと、そんなものはただの噂に過ぎないから心配しないでくれと優しく言ってくれることを期待している自分もどこかにいたからだ。
そんな希望はたった今打ち砕かれてしまったが。
「しかし彼女は側室にすらなれない身分でね、私は彼女を愛妾に据えようと思っている」
レオン王は苦しそうな顔をしてそう言った。
まるで本当は正妃にしたかったとでも言わんばかりに。
(愛妾……か)
フランチェスカは愛する人が自分以外の女性と関係を持つということだけでもかなり傷ついた。
フランチェスカはずっとレオンだけを見て生きてきたから。
だがそれでも良かった。
フランチェスカは王妃で彼女は愛妾。
身分の差はハッキリしている。
たとえレオンの愛が愛妾の方にあったとしても王妃として尊重くらいはしてくれるだろう。
そう思っていた。
しかし、その次にレオンが発した言葉はフランチェスカを更なる地獄に突き落とすこととなる。
「それとフレイアのいた市井では一夫一妻が普通で自分以外の女とは関係を持たないでほしいそうだ。君は私の婚約者だ。妻には迎えるが君とは白い結婚になる」
その言葉にフランチェスカの心臓がドクリとなった。
(………………………え?)
そしてそれと同時に彼女は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。
レオンの何気ない一言がフランチェスカを果てしない暗闇へと引きずり込んでいく。
どうして彼はここまで自分に残酷に振舞えるのだろうか。
たしかにレオンにはフランチェスカに対する愛は無かったかもしれないけれど、それでも昔は仲が良かったのに。
一体いつからレオンはそんな風になってしまったのだろう。
フランチェスカはどれだけ考えても分からなかった。
「話は終わりだ」
レオン王はそれだけ言うとすぐに手元の書類に視線を戻した。
今すぐに出て行けという意味だ。
即位してからずっとレオンはフランチェスカに冷たかった。
「は……い……分かり……ました……陛下……」
フランチェスカは震える唇を必死で動かして何とか言葉を紡いだ。
それからすぐに覚束ない足取りで部屋を出て行った。
そしてレオンはそんな彼女の様子を気にも留めなかった。
この日からフランチェスカの地獄のような日々が始まったのだった。
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