お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの

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29 穏やかな日

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私はその後、医師の診察を受けた。
その際に意外なことを聞かれた。


「陛下は、過去に何度か毒をお飲みになられたことがあるのですか?」
「……無いが、何故そんなことを聞く?」
「いえ、陛下には毒の耐性があったのでつい気になって……」
「耐性だと……?」


まさか私に毒の耐性があったとは驚いた。


「はい、たまにいるのですよ。毒の耐性がある方。まぁそういう方は大体が幼い頃から毒を飲み続けた方たちですけどね」


(幼い頃から毒を飲み続けた、か……)


医師のその話は私も聞いたことがあった。
他国では毒の耐性を付けるために幼少期から毒を飲まされ続けることもあるらしい。
まだ幼い子供に毒を飲ませるなど本当に恐ろしい話だと思う。


しかし私はもちろん毒を飲んだことなどない。


(……ただの偶然か?)


私はつい気になって医師に尋ねた。


「私が死ななかったのも、その耐性とやらのおかげか?」
「はい、そうですね。普通は運良く生き延びることが出来ても後遺症が残ったりするのですが……驚くことに陛下の体にはどこも異常は見当たりません。本当に、奇跡としか言いようがありません」
「そうか……」


私は医師のその言葉が妙に引っ掛かった。


毒の耐性があるのは良いことだ。
国王というのは敵が多い。
この先誰かに命を狙われることもあるだろう。


(・・・それなのに、)


何かが引っ掛かる――


「陛下、何してるんですか。身体が良くなったなら早く行きますよ」


考え込んでいた私の腕をガシッと掴んだのは侍従のアレクだった。


「え?行くってどこに……」
「執務室です。陛下が眠りについて三日も経ってるんです。仕事が溜まってるんですからね」
「う、嘘だろう……もう少しくらい休憩しても……」


病み上がりの人間に言うことではないだろう。
鬼だ、コイツ。


「ダメです。ほら早く行きましょう、陛下」


侍従はニコッと笑って私を引っ張っていく。


「さ、最悪だ!これなら目覚めない方がよかった~!!!」


私はそのまま侍従に引きずられて、強制的に執務室へ連れて行かれた。






◆◇◆◇◆◇





それから一週間後。


ようやく執務が片付いた。
ここ一週間仕事をしすぎていたせいで肩こりや腰痛はするが、不思議と体は軽かった。


(………やっとここに来れた)


私にはずっと行きたかった場所があった。
目が覚めてからというもの、ここに来るために執務を頑張っていたと言っても過言ではない。


「フランチェスカ……父上……母上……」


私の目の前にあるのは三つの墓だ。
父上と母上とフランチェスカの墓。


私は墓の前でそっとしゃがみ込んで、手に持っていた花束を供えた。




「父上……母上……貴方がたが愛したこの国を、私は守り抜いてみせます。誰にも壊させはしません。だからどうか、安らかに眠ってください」




私はそこまで言って視線を横に移した。


「フランチェスカ……」


そのときの私の視線の先にあったのはフランチェスカの墓。


「……」


思い出すのは幼い頃のフランチェスカとの記憶。





『レオ!私はレオのいるこの国が大好きなの!だからこの国をもっと良くしていけるように一緒に頑張ろうね!』





(……懐かしいな)


フランチェスカとの大切な思い出が頭に浮かんでつい口元が綻んだ。




「フランチェスカ、本当にすまなかった。君が昔言っていたように、私はこれから国のために全力を尽くすつもりだ。――そうしたら、また君に会えるだろうか」




「……」



もちろん返事は無い。
しかし何故だか悲しくはならなかった。
彼女はもういないのだから当然の話だ。


いつまでもフランチェスカの面影を求めるのではなく、いい加減前に進まなければならない。


彼女は死んでなどいない。
私の夢の中にいつも出てきてくれるし、何より私の心の中で生きているのだから。




「また来るよ。そのときは立派な王になって君の前に現れる。だから、どうか待っていてくれ」



私はそれだけ言うと立ち上がり、三人の墓に背を向けた。
三人のことを思い出すと涙が零れそうになったが必死で我慢した。
私はもう泣かないと決めたのだ。


もう後ろは振り返らない。
これからは前を向いて歩いて行く。


暖かい春の日差しが私を照らしている。
何だか心まで暖かくなったような気がする。




フランチェスカが亡くなってから初めて迎えた穏やかな日だった。


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