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66 レスタリア公爵夫人
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「……陛下」
公爵夫人は私を見ても全く動じていなかった。
まるでこうなるのを予想していたかのように淡々としている。
「奥様!お逃げください!陛下は私たちを始末しに来たに決まってます!」
悲痛な面持ちでそう叫ぶ侍女に対して公爵夫人は冷静に告げた。
「――静かにしてちょうだい。言ったでしょう、私はここから一歩も出ないと」
「で、ですが……このままここにいればきっと……」
それでも退かない侍女に公爵夫人は鋭い目を向けた。
「私がもうそんなこと出来るような身体ではないということは貴方が一番よく知っているはずだけれど?」
「……」
その言葉に侍女はグッと黙り込んだ。
そして侍女が静かになったのを確認すると公爵夫人は私の方に目を向けて口を開いた。
「体調が優れないもので……ベッドの上でお迎えするご無礼をお許しください。お会いするのは初めてでしょうか、若い頃の先王陛下と雰囲気がよく似ておりますわ」
「……」
そう言って公爵夫人はニッコリと笑った。
しかし、次の瞬間――
「ゴホッ……ゴホッ……!」
穏やかな笑みを浮かべたかと思えば、今度は激しく咳き込んだ。
「公爵夫人……!」
「奥様……!」
座り込んでいた侍女がそれに気付き、すぐに夫人に駆け寄って彼女の背中をさすった。
そんな彼女の様子を見て私は思った。
(……この状態だと長くは生きられないだろうな)
医学の知識など少しも無い私でさえそれがすぐに分かってしまうほど、夫人の体はボロボロだった。
むしろ生きているのが奇跡なほどである。
「陛下……ゴホッ……ゴホッ……」
「奥様、もう喋らないでください!」
「……私は大丈夫だから。水を持って来てちょうだい」
それから公爵夫人は侍女の持って来た水を飲むと、再び私に目を向けた。
「陛下がここに来られたということは、もう既にレスタリア公爵家の没落は確定しているようですね」
そう言った夫人の顔はどこか悲しそうだった。
やはり夫人は先ほどあったことを全て知っていたようだ。
なら、そのような表情になるのも当然だろう。
しかし、それを知っていたとなると一つだけ気に掛かることがあった。
(この後すぐに自分の家門が滅ぶというのに、何故それほど平然としていられるんだ?)
私は今まで何度か取り潰しになった貴族家の人間の最期を見たことがあった。
その全員が声を上げて泣き喚き、己の運命を嘆いていた。
それなのに、目の前にいる夫人からは――
「……陛下に、聞いていただきたいお話がございます」
身体は見るからに弱々しいのに、何故だかその瞳だけは異様に力強かった。
(レスタリア公子が言っていたのは……もしかしてこのことだったのか……?)
公子が罪を犯した後である今、その母親である彼女も罪人だった。
王である私がわざわざ罪人の望みを叶えてやる義理は無い。
しかし、私はどうしても公爵夫人のその願いを断ることが出来なかった。
何かが、隠されているような気がしてならなかった。
「何を言っていらっしゃるのですか、奥様!陛下が聞いてくれるわけ――」
「……聞こう」
「!?」
気付けば、何かに突き動かされたかのようにそう口にしていた。
「ありがとうございます、陛下」
公爵夫人は安心したように笑みを浮かべながらそう言うと、一度深呼吸をしてから口を開いた。
「――夫と息子の犯した罪は全て私のせいなのです」
「な、何……?」
そこで公爵夫人から聞いたのは、予想だにしていない衝撃的な事実だった。
公爵夫人は私を見ても全く動じていなかった。
まるでこうなるのを予想していたかのように淡々としている。
「奥様!お逃げください!陛下は私たちを始末しに来たに決まってます!」
悲痛な面持ちでそう叫ぶ侍女に対して公爵夫人は冷静に告げた。
「――静かにしてちょうだい。言ったでしょう、私はここから一歩も出ないと」
「で、ですが……このままここにいればきっと……」
それでも退かない侍女に公爵夫人は鋭い目を向けた。
「私がもうそんなこと出来るような身体ではないということは貴方が一番よく知っているはずだけれど?」
「……」
その言葉に侍女はグッと黙り込んだ。
そして侍女が静かになったのを確認すると公爵夫人は私の方に目を向けて口を開いた。
「体調が優れないもので……ベッドの上でお迎えするご無礼をお許しください。お会いするのは初めてでしょうか、若い頃の先王陛下と雰囲気がよく似ておりますわ」
「……」
そう言って公爵夫人はニッコリと笑った。
しかし、次の瞬間――
「ゴホッ……ゴホッ……!」
穏やかな笑みを浮かべたかと思えば、今度は激しく咳き込んだ。
「公爵夫人……!」
「奥様……!」
座り込んでいた侍女がそれに気付き、すぐに夫人に駆け寄って彼女の背中をさすった。
そんな彼女の様子を見て私は思った。
(……この状態だと長くは生きられないだろうな)
医学の知識など少しも無い私でさえそれがすぐに分かってしまうほど、夫人の体はボロボロだった。
むしろ生きているのが奇跡なほどである。
「陛下……ゴホッ……ゴホッ……」
「奥様、もう喋らないでください!」
「……私は大丈夫だから。水を持って来てちょうだい」
それから公爵夫人は侍女の持って来た水を飲むと、再び私に目を向けた。
「陛下がここに来られたということは、もう既にレスタリア公爵家の没落は確定しているようですね」
そう言った夫人の顔はどこか悲しそうだった。
やはり夫人は先ほどあったことを全て知っていたようだ。
なら、そのような表情になるのも当然だろう。
しかし、それを知っていたとなると一つだけ気に掛かることがあった。
(この後すぐに自分の家門が滅ぶというのに、何故それほど平然としていられるんだ?)
私は今まで何度か取り潰しになった貴族家の人間の最期を見たことがあった。
その全員が声を上げて泣き喚き、己の運命を嘆いていた。
それなのに、目の前にいる夫人からは――
「……陛下に、聞いていただきたいお話がございます」
身体は見るからに弱々しいのに、何故だかその瞳だけは異様に力強かった。
(レスタリア公子が言っていたのは……もしかしてこのことだったのか……?)
公子が罪を犯した後である今、その母親である彼女も罪人だった。
王である私がわざわざ罪人の望みを叶えてやる義理は無い。
しかし、私はどうしても公爵夫人のその願いを断ることが出来なかった。
何かが、隠されているような気がしてならなかった。
「何を言っていらっしゃるのですか、奥様!陛下が聞いてくれるわけ――」
「……聞こう」
「!?」
気付けば、何かに突き動かされたかのようにそう口にしていた。
「ありがとうございます、陛下」
公爵夫人は安心したように笑みを浮かべながらそう言うと、一度深呼吸をしてから口を開いた。
「――夫と息子の犯した罪は全て私のせいなのです」
「な、何……?」
そこで公爵夫人から聞いたのは、予想だにしていない衝撃的な事実だった。
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