72 / 87
72 罠
しおりを挟む
「公爵様!ローレンの軍が着々とウィルベルト王国軍を追い詰めています!公爵様が王国の王位に就く日も近いかもしれません!」
「……?ああ……そうだな……」
嬉々としてそんなことを口にする騎士に対し、私は適当に返事をした。
(王位……?王国……?そんなもの、興味など無い……)
血の滴る剣を手にした私は、次々とウィルベルトの者を切り捨てていった。
別に殺してはいない。
私の狙いはコイツらでは無かったのだから。
(レオン……あの餓鬼がマクシミリアンを……絶対見つけ出して私の手でやってやる……)
そう、私の真の目的はマクシミリアンを殺したレオン・ウィルベルトの首を獲ることだった。
いくら剣術に長けているとはいえ、私の敵ではないだろう。
武力で私に勝てる者など、この王国ではいないのだから。
(それよりシルヴィが心配だな……アイツはしっかりと任務を遂行しているだろうか……)
私が動くと目立ちすぎてしまうため、妻の避難は部下に任せてあった。
部下には死んでもシルヴィを守れと言ってある。
あの男が裏切ることは無さそうだが、先ほどから一切連絡が無いのがどうも気になる。
(何か嫌な予感がする……)
そう思いながらシルヴィがいる別邸の方向に目をやると、信じられない光景が目に入った。
(何だ、あの煙は……?)
ちょうどシルヴィの住んでいる別邸が位置するところから大量の煙が発生し、辺り一面に立ち込めていたのだ。
「おい、あれは何だ?」
「あれは……煙……?どうやら、あちらの方で大火災が発生しているみたいですね」
「……!!!」
まさか、まさか。
最悪の事態を想定した私は、すぐに行動を開始した。
私は馬に乗り、部下たちを置いて駆け出した。
「こ、公爵様!?どちらへ行かれるのですか!?」
困惑する彼らの声が聞こえてきたが、今の私にはそんなものどうだって良い。
(シルヴィ……頼む……どうか無事でいてくれ……!)
***
数十分前。
レオンは数十人の騎士を引き連れてレスタリア公爵夫人が過ごした別邸の前にいた。
「陛下、邸の周辺にいた者を全員避難させました」
「ご苦労だった。夫人の遺体もしっかりと持ち出せたか?」
「はい、ご遺体はどういたしましょう……何せ夫である公爵が大罪人なので……」
「……遺体は丁重に扱え。後で埋葬する」
「陛下……分かりました」
レオンの考えを察したのか、騎士はそれ以上何も言わなかった。
「本当に中には誰もいないんだな?」
「はい、隅々までしっかり確認いたしました」
「――なら、作戦実行だ」
その声で、周囲にいた騎士たちが一斉に邸に火を付けた。
一瞬にして邸宅が火に包まれ、建物が崩れ始める。
「陛下……これで本当に公爵は来るのでしょうか……」
「ああ、見ていろ。間違いなくアイツはここに来るはずだ……」
そしてレオンはじっと、騎士たちと共に敵の大将の訪れを待った。
「……?ああ……そうだな……」
嬉々としてそんなことを口にする騎士に対し、私は適当に返事をした。
(王位……?王国……?そんなもの、興味など無い……)
血の滴る剣を手にした私は、次々とウィルベルトの者を切り捨てていった。
別に殺してはいない。
私の狙いはコイツらでは無かったのだから。
(レオン……あの餓鬼がマクシミリアンを……絶対見つけ出して私の手でやってやる……)
そう、私の真の目的はマクシミリアンを殺したレオン・ウィルベルトの首を獲ることだった。
いくら剣術に長けているとはいえ、私の敵ではないだろう。
武力で私に勝てる者など、この王国ではいないのだから。
(それよりシルヴィが心配だな……アイツはしっかりと任務を遂行しているだろうか……)
私が動くと目立ちすぎてしまうため、妻の避難は部下に任せてあった。
部下には死んでもシルヴィを守れと言ってある。
あの男が裏切ることは無さそうだが、先ほどから一切連絡が無いのがどうも気になる。
(何か嫌な予感がする……)
そう思いながらシルヴィがいる別邸の方向に目をやると、信じられない光景が目に入った。
(何だ、あの煙は……?)
ちょうどシルヴィの住んでいる別邸が位置するところから大量の煙が発生し、辺り一面に立ち込めていたのだ。
「おい、あれは何だ?」
「あれは……煙……?どうやら、あちらの方で大火災が発生しているみたいですね」
「……!!!」
まさか、まさか。
最悪の事態を想定した私は、すぐに行動を開始した。
私は馬に乗り、部下たちを置いて駆け出した。
「こ、公爵様!?どちらへ行かれるのですか!?」
困惑する彼らの声が聞こえてきたが、今の私にはそんなものどうだって良い。
(シルヴィ……頼む……どうか無事でいてくれ……!)
***
数十分前。
レオンは数十人の騎士を引き連れてレスタリア公爵夫人が過ごした別邸の前にいた。
「陛下、邸の周辺にいた者を全員避難させました」
「ご苦労だった。夫人の遺体もしっかりと持ち出せたか?」
「はい、ご遺体はどういたしましょう……何せ夫である公爵が大罪人なので……」
「……遺体は丁重に扱え。後で埋葬する」
「陛下……分かりました」
レオンの考えを察したのか、騎士はそれ以上何も言わなかった。
「本当に中には誰もいないんだな?」
「はい、隅々までしっかり確認いたしました」
「――なら、作戦実行だ」
その声で、周囲にいた騎士たちが一斉に邸に火を付けた。
一瞬にして邸宅が火に包まれ、建物が崩れ始める。
「陛下……これで本当に公爵は来るのでしょうか……」
「ああ、見ていろ。間違いなくアイツはここに来るはずだ……」
そしてレオンはじっと、騎士たちと共に敵の大将の訪れを待った。
343
あなたにおすすめの小説
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる