婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました

相馬香子

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やるからにはお遊びでも徹底します

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「きゃあああ! クローネ、素敵っ!!」

興奮したルピアがクローネの周りをぴょんぴょんと跳ねる。
クローネは現在――ルピアの着せ替え人形となっていた。

街へ出るとルピアは侯爵家の支援する劇団へクローネを引っ張り込んだ。
そして、クローネは片っ端から舞台衣装を着させられたのだ。……男性用の。

王子様や騎士のほか、砂漠の民だの魔術師だの、ありとあらゆる衣装に身を包むたび、ルピアと劇団員たちに黄色い悲鳴が上がった。
今着ているのは執事服だ。

「あ~ん、このままわたくしの執事にしてしまいたいわぁ……」

うっとりとこちらを見上げるルピアに、クローネの笑顔がひきつった。

「ちょっとルピア……私そろそろ疲れたんだけど……」
「あら、ごめんなさい! お茶にしましょう! さ、こっちへ来て。美味しいチョコレートがあるのよ」
「着替えさせないんかい」
「だってもうしばらく執事のクローネを堪能したいんだもの。……ダメ?」

うるうると上目遣いでお願いされるとクローネは弱い。あざといお嬢様め! 可愛い! などとキュンキュンしつつ、そのままの服装でお茶をいただく。

「はぁ~本当に素敵だわ…。“初恋は虹色に染まる”のアルバート様みたい……」

ぶふっとクローネが紅茶を噴く。
“初恋は虹色に染まる”は女性向けの恋愛小説で、アルバートというのは主人公に愛を囁くヒーローである。執事の身でありながら、実は隣国の第三王子でした~という超人気キャラだった。

「ちょ、わ、私なんかがアルバート様になれるわけないでしょ! 失礼よ!」

クローネも実はアルバートのファンであった。クローネだって恋愛小説大好きっ子なのだ。

「せめてプラチナブロンドのカツラをかぶれば、もう少し似せられるかもしれないけど……」

ポツリと言ったが最後、ルピアの目がギラリと光った。

「誰かっ! プラチナブロンドのカツラを持ってきてちょうだい! どうせなら徹底的にアルバート様に近づけるわよっ!」
「「「「ラジャー!!!」」」」

劇団員たちがザザザッと小道具をかき集めてくる。
プラチナブロンドのロングヘアのカツラに、藤色の髪紐、護身用の短剣などなど。

「ああ……! アルバート様……!!」

ルピアがうっとりとアルバート仕様になったクローネを見つめる。
鏡を見て、うむうむと頷いたクローネは、これなら合格点かしらと満足げに微笑んだ。
楽しくなってきたので、ついルピアへアルバートのセリフを再現してしまった。

「…お嬢様。私以外に目を向けたら、お仕置きですよ?」
「「「「「「ぎゃあああああ!!」」」」」

至近距離で推しに囁かれてしまったルピアは、その場でバタンと気絶した。
劇団員たちも、腰砕けになりよろよろと倒れこむ。

「えええええ!? ちょ、ルピアっ!? みなさ~~ん!?」

クローネだけが自分の破壊力を分かっていなかった。




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