もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

473.ニャンコ(?)とは……

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 てってれー、透けてるスケルトンじゃないヤナが探検の仲間に加わったよ!

 ……ぷる君が「ヤナさんだー! 一緒に行きましょう!」と歓迎しちゃったからしかたないんだ。

 僕だって別にヤナが一緒に来ることはイヤじゃないんだよ? ヤナも僕の友だちだし。
 でも、ねぇ──

「穴の奥に猫……そんなところにいるなんて、きっとそのネコ、寝込ねこんじゃってるんでしょうね! ネコだけに!」

 闇系モンスターアバターにあるまじき、明るい口調で軽快にダジャレを放つヤナを見ると、僕の顔がチベットスナギツネ化しちゃうんだよ。

 これで、僕の進化先に『チベスナ天兎アンジュラパ』が生じたらどうしてくれるの!? そんなの可愛くないよ!

「ヤナ、今日はこれからダジャレを言ったら、置き去りにするからね」
「な、なんでですか!?」

 ヤナがめっちゃ驚いてるけど、アリスちゃんの戸惑ってる顔を見ても理解できないの? 僕も目が細くなりすぎて、ちょっと視界が悪いよ。

「なんで、も何もないよ。ダメと言ったらダメ!」
「……わかりましたぁ」

 しょんぼりしてるのを見るとちょっと罪悪感が湧く。でも、心を鬼にして、意志を貫いた。

 アリスちゃんやトアさんを、ヤナのノリに巻き込ませないぞ……!
 ちなみに、ぷる君はもう手遅れだと諦めてます。

「残念ですねーヤナさん」
「残念だなーぷる君」

 慰め合ってる二人をスルーして、僕はアリスちゃんとトアさんを連れて穴に突入した。
 ヤバい雰囲気の穴も、この二人よりはマシな気がする。

「わあ……暗い……」

 穴の中を覗き込んで、思わず呻くように呟いた。
 明かりがなく穴の近くしか見えない。しかも、地面を掘って作った歪な階段が暗い地下へ続いてるのを見たら、ちょっとこの先に進むのを躊躇っちゃう。
 僕、ホラーは苦手だよぉ。

「──とりあえず、視界確保のためにも、ユキマルを呼んだ方がよさそうだね!」

 暗いところは友だちいっぱいで進んだ方が恐怖が和らぐはず。
 あと、ユキマルなら明かり代わりになるし、なにより暗いところでの危機察知能力は僕以上だから、すごく頼りになる!

 ということで、早速「【召喚】ユキマル!」と詠唱して召喚した。
 パッと現れたユキマルは、白い体を揺らして、すぐに光を放って周囲を照らしてくれる。気が利くねー。

「ぴぅ(ここを探検するの?)」
「うん、一緒に行こうねー。危ないものがあったらお知らせをお願い」
「ぴぅ(わかったよ)」

 ぴょんと跳ねたユキマルを見て、ぷる君が目を輝かせてる。「雪パイセンだ……!」と呟いてるけど、ユキマルはそんな名前じゃないし、ぷる君の先輩じゃないよ。

「便利ね」
「でしょー。可愛いし、頼りになる仲間なんだよ」

 褒めてくれたトアさんに胸を張って自慢したら、ユキマルが照れた感じで体を揺らした。やっぱり可愛いね!


 僕に褒められてさらにやる気いっぱいになったユキマルが、僕たちの先頭を進む。

 階段は想像以上に長くて、終わりがないように感じた。
 あまりに長すぎて、その間に何も起きないから、ホラーが苦手な僕ですら、ちょっと緊張感がなくなって飽きてきたくらいだよ。

 でも、それも終わりが近づき──

「ぴぅ(あっ、モンスターの気配があるよ)」
「あ、ほんと? 噂のニャンコ(?)だろうね」
「ぴぅ(敵意はなさそう)」

 優秀なユキマルが真っ先に察知した気配を報告してくれて、ワクワクしてきた。
 ニャンコ(?)ってどんな子だろうなー。

「ちょっとつかれたから、みんなでおいしいおやつをたべられたらいいね」
「うん? まあ、アリスちゃんが欲しいなら、いくらでも美味しいものを出すけど──」

 ニコニコと笑ってるアリスちゃんに僕が答えたところで、前方に明かりが見えた。階段を降りきったところに、部屋のような空間があるようだ。
 それと、なんだかいい匂いがしてるような……?

「にゃにゃっ、また失敗したにゃーっ!」

 突然知らない声が聞こえたかと思うと、猫っぽい子が部屋から飛び出してきた。

 二足歩行で赤色の長靴を履いてるキジトラの猫だ。猫獣人というには、猫要素が強すぎる。
 でも、普通に人の言葉を喋ってるし……どういうこと?

 きょとんとしながら固まる僕たちの前まできたところで、ニャンコ(?)は目を大きく見開いて急停止した。

「にゃ!? お客さんであるかにゃ! って、君たちを巻き込んだら、今度こそ吾輩はここを追い出されちゃうにゃ! こうなったら……!」

 慌てた様子でニャンコ(?)は着てるベストのポケットを探り、何かを取り出したかと思うと、自分が来た方──つまり階下の方に勢いよく投げた。

「え、今、何をして──」

 僕が問いかける言葉を言い切る前に、猫のイラスト付きバルーンのようなものが一気に膨らみ、洞窟の中でミチミチになる。え、これ割れたらヤバくない?

 ──ドガーンッ! ババババッ!

 凄まじい音がして、反射的に耳を押さえながら、アリスちゃんを守るための水盾ウォーターシールドを展開した。
 僕たちプレイヤーは死に戻れるけど、異世界の住人NPCのアリスちゃんが傷ついたらどうなるかわからないからね。

 どれほど時間が経ったか……激しい音が止まり、恐る恐る耳から手を離す。
 幸運なことに、爆発のような音が聞こえたわりに、僕たちを襲ったのは爆音だけだった。

 まあ、それは幸運というより、ニャンコ(?)が投げたバルーンのようなアイテムの防御効果ゆえだったみたいだけど。

 ボロボロになって消えていくバルーンの残骸を無言で見下ろす。
 バルーンは部屋で起きた爆発から僕らを守ってくれたのだ。
 ……これ、このバルーンがなければ、僕たちはヤバいことになってたよね。

「僕が穴を見て感じたヤバさは、やっぱり正しかったんだな……」

 思わずハハッと乾いた笑いを浮かべちゃった。
 アリスちゃんは驚いた様子で目を瞬かせているし、トアさんは呆れた顔をしてる。ぷる君はヤナと抱き合って、プルプルと震えてた。

 そんな僕たちを見て、ニャンコ(?)は「ごめんなさいなのであるにゃー!」と潔くごめん寝を披露して謝った。
 可愛いもふもふは無条件で許したくなるけど、今回ばかりは先に説明を要求します!

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