もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

475.猫のお悩み

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 お菓子と紅茶を夢中になって楽しんでから、ハッと気づいた。

「まだ爆発に巻き込まれた理由を聞いてない!」
「にゃっ……有耶無耶にできなかったであるにゃあ……」

 ギクッと体を固まらせたナーグが、そっと目を逸らす。
 お菓子で有耶無耶にするつもりだったなんて、姑息じゃない?

 僕がジトッと見据えると、ナーグはしょんぼりとした様子で耳とヒゲを垂らした。

「──吾輩、料理研究家をしているのであるにゃ」
「料理研究家?」

 思いがけない言葉を聞いて、きょとんとしちゃう。
 でも、こんなに美味しいお菓子を作れるなら、ナーグがそういう仕事をしているのもわからないではないかも。

「新たな料理を研究して、上の店で買い取ってもらってるにゃあ」
「上の店……」

 思わず天井を見上げる。
 硬い地面を掘ったような天井の上──地上には、穴があいた建物があるはずだ。

 あそこは料理を売る店だったのか。裏側しか見てないからわからなかった。
 壁と地面を削っていた穴も、その奥の部屋の方は板で塞がれて見えなかったし。

「『猫博士料理店』という店であるにゃ。知る人ぞ知る隠れた名店にゃあ」

 ナーグが少し得意げな顔で説明してくれた。

 どうやらその店は、ナーグから買い取った料理を地元の異世界の住人NPCたちに提供するレストランらしい。
 とはいえ、本業は錬金術アイテム販売店で、料理を売るのはおまけのようなものらしいけど。

「ナーグは店主であり家主でもある人と契約を結んで、この場所を使わせてもらってるらしいよ」

 トアが口周りについたクリームをペロッと舐め取りながら言う。

 さらに説明してくれたことによると、元々ナーグは建物内を間借りして料理の研究をしていたそうだ。
 でも、新レシピの開発に失敗する度に、なぜか毎回爆発が起き、建物を破壊してしまうため、地下に追いやられたらしい。

 ……うん、店主さんの気持ちを考えたら当然の対応だと思う。むしろ、完全に追い出さなかっただけ優しい気がする。

「最初はもっと地上に近いところで研究をしていたのであるにゃあ。吾輩が最後に爆破してしまった穴を、そのまま部屋としてくれたからにゃあ」
「それがどうしてこんな深いところになったんです?」

 ヤナが左手から外した指の骨でカットフルーツを刺して食べながら聞いた。

「……ねえ、骨を楊枝代わりにする必要あった?」
「いや、たまにはこのアバターを活かした振る舞いをした方がいいかなーっと」

 明るい口調で僕に答えたヤナを、ジトッと睨む。
 そういう配慮(?)はノーセンキューです! 見た目がホラーだから!

「爆発で床が掘られて、ドンドン深いところまで来ちゃったのであるにゃあ」

 僕たちのやり取りをスルーしてナーグが答えた言葉に、時が止まったような気分を味わう。

 爆発する度にドンドン深いところへ、ってことは、僕たちが通ってきた階段は、部屋があった名残の可能性がある?
 あの長い階段が作られるくらい、ナーグはここを爆発させてたってこと?

「ヒエッ……めっちゃ危険なニャンコじゃん……」

 僕よりよっぽど『爆弾魔』の称号が相応しいと思うよ!
 こぼした感想に、みんなが無言で頷く。

 アリスちゃんだけが「でも、おいしいおかしをつくれて、すごいよねー」とニコニコしてた。

 危機感、仕事して!
 この幼女、僕が守ってあげなきゃ、ナーグの爆発に巻き込まれて二度と会えなくなる可能性があるのでは……? 怖っ。
 とりあえず、あとで爆発から身を守れるようなアイテムのレシピがないか、探しておくね。

「最近はずっと爆発してばっかりにゃあ……」

 ナーグがしょんぼりと肩を落として呟く。

「それはつまり、何度も開発を失敗してるってこと?」
「そうにゃあ。やっぱり、ちゃんとした素材を手に入れられてないからだろうにゃ。冒険者ギルドに依頼を出さないといけないけど、お金がないにゃ……」

 なんか、フラグが立った気がする。スキルで見なくてもわかるよ。

 チラッとトアさんを見ると、ニコッと微笑み返された。この後の展開を、トアさんはわかっているはずだ。
 一体何が起きるんだろうね? たぶんミッションだと思うんだけど……

「それはたいへんね! たすけてあげたいけど、わたしもお金はもってないし──」

 優しいアリスちゃんが、同情した感じでナーグに応じる。その視線が僕に向くのは自然の流れだったんだろうなぁ。

「ねえ、モモ。たすけてあげられないかな?」
「……アリスちゃんが言うなら、がんばるけど」

 やっぱりこうなったかー、と思いながら僕は頷く。
 ヤナとぷる君も「おっ、なんか楽しいことが起きそう!」とか「こういう展開初めてですー」とか、ワクワクした感じだ。

「本当であるにゃ!? なんて優しい者たちにゃあ♪」

 ナーグが一気にルンルンとした雰囲気に変わった。
 そして、慌ただしく壁際にある棚から何かを取ってきてテーブルに載せた。

「──これが吾輩が欲しい素材一覧にゃ。持ってきてくれたら、心ばかりの報酬を渡すのであるにゃあ」

 緑色の宝石のような玉が三つ。
 その一つに触れると、それはパッと消えて、目の前に半透明の薄青のウィンドウが現れた。

〈シークレットミッション【長靴猫ナガグツニャンコのお悩みを解決しよう】を受諾しました。ミッション欄より、納品対象アイテムの一覧を確認できます〉

 アナウンスを聞きながら、僕は「そっかぁ」と頷く。やっぱりミッションが出てきたね。

 ウィンドウには白色の字でズラッとアイテム名が並んでいる。
 一つを選択すると、それがどこで入手できるのか、大まかな情報が提示される仕組みになっていた。
 すでに持っているアイテムは、赤色の字で表示されている。

「品質が足りないものは受け取れないから、気をつけてほしいのであるにゃ」

 ナーグが注意した通り、納品用のアイテムはほとんど『品質:高』以上に限定されている。これは、低レベルのプレイヤーだとクリアするのが難しそうだなぁ。

 僕は結構持ってるし、早速納品しちゃおうっと。どんな報酬をもらえるかなー?

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