もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
533 / 555
12章 美味しいもの大好き!

487.ガラスは取り扱い注意

しおりを挟む
 驚きの水獺竜アクアラッコーリュ情報はおいといて。
 僕は「はいどーぞ」とお土産を差し出した。

 ウサギ柄の包装に包まれたそれを、レアナさんが「ありがとう」とにこやかに受け取る。

 モンちゃんは何故か爆発物でも見るかのような、警戒心に満ちた目で凝視していた。
 失礼だなぁ。ちゃんと美味しいものなのに。

「可愛らしいわね」
「見た目と中身のギャップがヤバいパターンだろ。コイツそっくり」
「モンちゃん、それ、どういう意味!? 僕の見た目と中身のギャップがヤバいみたいな言い方しないでよー」

 プンプン、と怒って僕が抗議すると、モンちゃんに半眼で見据えられた。

「……自覚ないのか」
「なんのこと??」

 じっと見つめ合う僕とモンちゃんを、レアナさんが微笑ましげに見比べる。

「ふふっ、楽しそうね、二人とも。仲がいいのは素敵なことよ」
「仲良くねーよ」
「うん、僕たち仲良し!」

 同じタイミングで正反対のことを言った僕たちに、レアナさんは「やっぱり気が合うのね」とクスクス笑った。

 モンちゃんはそっぽを向く。
 重ねて否定しないってことは、実は仲がいいことを認めてるんだ。モンちゃんって素直じゃないよねぇ。

「……ニヤニヤ笑ってんなよ、ウサギ」
「そんな変な笑い方してないもん! それと、僕のことウサギって呼ばないで。モモだよ!」
「知ってる。ウサギ」
「わかってないじゃんー!」

 ペシペシと机を叩いて僕が抗議したら、モンスフードを食べ終えたラッタンが楽しそうに真似をした。

「らっぴゅ、らぴゅぴゅー(ぺし、ぺし、ぺしぃ♪)」

 可愛い。
 僕の曲『もふもふプリティ』のリズムと似た叩き方なのは、最近レコーディングしてたくさん歌ったからかな。
 覚えが早くて、応用力あるなんて、ラッタン優秀!

「すげぇ親バカな気配を感じた……」
「もふもふはすべからく可愛いからしかたないね」
「開き直ってんじゃねーよ。あと、可愛いのはもふもふだけじゃなくて、全モンスだ。敵意がなけりゃ、すべからく尊ぶべし」
「もふもふ至上主義を超える、だと……!?」

 さすが世界一のテイマーのモンちゃん。全モンスター推しで、一番好きなのは王鮪キングマグロというだけある。
 正直、その好みはわりと変人の域に入ってると、僕は密かに思ってます。

「不本意なことを考えられている気がする……」
「モンちゃんって察しが良すぎるところあるよね」
「それ、自白してるよな? ぁあ? お前、なに考えた?」

 モンちゃんが凄んで言うけど、僕が「てへぺろっ」とお茶目に返したら、脱力した感じで目を逸らした。
 多少の苛立ちを感じていたとしても、全モンスター推しのモンちゃんは、僕のもふもふパワーが通用するのだ。もふもふの効果はバツグンだぁ。

「らぴゅ(てへぺろぉ)」

 ラッタンが僕を真似て、テヘッと笑いながら舌をチョロッと出した。
 思わず、僕はモンちゃんと真顔で見つめ合う。

「僕の真似っ子なラッタン、可愛すぎない!?」
「……異議なし」

 モンちゃんと意見の一致を得ました。握手。

「あら……綿菓子?」

 マイペースにお土産の包装を開けたレアナさんが、中を見て楽しそうに呟く。
 モンちゃんは「綿菓子?」と不思議そうに復唱しながら横から覗き込んだ。

「そうだよ。お土産は綿菓子なんだ~。僕のもふもふさを表現しました!」

 えっへん、と胸を張って言う。
 お土産はウサギの形をした綿菓子。丸い玉にうさ耳が付いてる感じの形なんだよ。
 しかも、こだわったのは可愛い見た目だけじゃない。実はふわふわの綿菓子の中には驚きが隠れてるんだ。

「へぇ、こんなもん作るなんて器用だな」

 手のひら大の綿菓子を眺めてから、モンちゃんがカプッと耳から食べる。

「ああ……そこから食べたら、残るのはただの丸い玉……」

 ウサギ要素がなくなったことを僕が大げさに嘆くと、モンちゃんは「ウサギの頭を齧ってるように見える方がグロくないか?」と、ご尤もなことを言った。

「まあ、中から星が出てきたわ」

 耳を残して顔面から食べるという大胆な食べ方をしたレアナさんが、綿菓子の真ん中に詰め込まれた星型のクッキーに目を輝かせる。

 そのクッキー、すごくホロホロで美味しいんだよー。綿菓子で甘くなった口をちょっと和らげてくれる絶妙な甘さに調整してあるし。

「……俺のはハートだ」
「僕の想いをたっぷり込めました♡」
「気色悪いな」

 茶目っ気を出して手でハートマークを作って言ったのに、返ってきたのは冷たい言葉。
 僕はとっても傷つきました。

「悪口が端的すぎてひどい。僕のガラスのハートにヒビが入りました。慰謝料を要求します」
「ガラス? オリハルコン製じゃね?」

 モンちゃんに心底不思議そうな顔をされた。

「誰が、世界で最も硬い金属製の心の持ち主じゃい! 怒りのあまりキャラ変しちゃうぞ、こんにゃろー!」

 ちなみに、幻の金属といわれるオリハルコンは、この世界では最も硬い金属として、高値で取り扱われているらしい。まだ、僕が行けるフィールド上では採集できないよ。

「このクッキー、ホロホロで、口に入れたら溶けてなくなるような食感が面白いわね。味も甘すぎなくて美味しいわ」
「レアナさん、超マイペース……でも、褒めてくれてありがとう」

 僕たちのやり取りをスルーしてお菓子を楽しんでくれているレアナさんに、すごく慣れを感じた。
 こうして僕の周りの人たちは、僕に染まっていくんだね。

「らぴゅ(ラッたんも、モモのハート欲しぃ)」
「たくさんあげるよ!」

 ラッタンにハートクッキーをたくさん渡した。
 僕のハートを欲しがるラッタン、可愛すぎる。

「らぴゅ(【頬張る】よぉ)」
「あれ? 今、スキル使った?」

 パクッとハートクッキーを食べたラッタンが、頬を両手で押さえて「らぴゅ(うままぁ)」と幸せそうな顔をする。
 可愛いなぁ──じゃなくて、なんで今スキル使ったの??

 キョトンとする僕の前で、ラッタンが脇にズボッと手を突っ込み、何かを取り出した。

「らぴゅ(なんかできたぁ。あげるぅ)」
「ありがとう?」

 首を傾げながら受け取る。
 もらったのは透明なハート型の石だ。

——————
硝子の心ブロークンハート】レア度☆☆☆
 ハートの形をした透明な石
 敵に投げると、精神力を5下げる
——————

 なんでこれをくれたの?
 あと、アイテム名のルビがひどい。ガラスのハートがもう壊れちゃってるじゃん!

「ぶっは!」
「モンちゃん、笑いすぎー!」

 呆然としてたら、モンちゃんに爆笑された。
 ラッタンは「らぴゅ(どうしたのぉ?)」と不思議そう。
 狙ってやったことじゃないだろうから、怒れないぞ……。

「ぴえん」

 しょぼんとしながら、紅葉の形の練り切りを大胆に切って口に放り込んだ。
 あんこ美味しいナァ……。優しい甘みが心に沁みる気がするよ。

しおりを挟む
感想 2,531

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。