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4章 錬金術士だよ?
131.毛繕い祭りだよ
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称号【世話焼き】の効果は、農地や牧場などでのお世話によりアイテム取得数が二倍になる、というものだった。めちゃくちゃすごいよね!?
おかげで青乳牛の長毛を大量ゲットできたよー。自分を毛繕いしても、手に入れられる綿毛の数が増えてたし、ラッキーだったな~。
ルンルンの状態のまま、仮想施設に飛んで向かう。
でも、その道中でムギからの連絡に気づいて止まった。ちょっと屋根をお借りしますねー。
「あ、ログインしたのかぁ。今なら時間が取れる、と」
毛繕いさせて、とお願いしていたことへの返事だ。ツッキーとソウタも一緒にいるらしい。
今日は毛繕いデーかな? と思いながら、はじまりの街へ転移。待ち合わせ場所はアリスちゃんのお家の近くだった。
「お、来たな!」
「おっはー、ツッキー」
「あたいもいるにゃ」
「モモさん、おはようございます」
一番最初に見えたツッキーに挨拶をしたら、物陰からムギとソウタが顔を出した。なんで二人は隠れてたんだろう。
「やっぱり人目を感じるにゃ」
「みなさん、なかなか慣れてくれませんね」
ムギとソウタの言葉で理解した。二人とも目立つのが嫌で隠れてたんだね。この辺はプレイヤーが多いからなぁ。
第二の街まで進むと、大抵のプレイヤーは慣れるのか希少種のことを気にしなくなるんだけど、初心者は物珍しく感じちゃうだろうな。
「ツッキーは気にならないんだ?」
一人表通りで佇んでいたツッキーに尋ねる。目印代わりで立っていてくれたのかもしれないけど、今も視線はどうでもよさそうにしてるから、ちょっと気になった。
「二人は見られてると思うから気にしちまうんだ」
「うん?」
心なしかキリッとした表情で言われた。でも、あんまり理解できない。
首を傾げてると、ツッキーが再び口を開く。
「俺は見られてるんじゃない。――見せてるんだ!」
ドヤッという顔で胸を張るツッキーに、なんと返事をしたらいいものか。
色んな人に視線を向けられても、ツッキーが『俺カッコいいだろ?』という感じで振る舞ってみせてるのはすごい。ポジティブってことかな。
そのマインドはちょっと僕と近い気がする。僕だって『可愛いものにはつい目が向いちゃうよねー。しかたないなー』と思って、視線を気にしなくなったわけだし。
「見られてるんじゃなくて、見せてる……うん、わかるよ! もふもふの魅力は自ら振りまいていかないとね!」
「おっ、モモはこっち側か」
嬉しそうに「イェーイ」とハイタッチを求められてこたえる。
ムギとソウタから少し冷めた視線を感じた気がした。振り向くと、ムギは呆れた顔で顔を横に振ってて、ソウタは苦笑してる。
「ま、まぁ、そんな話は置いといて――」
「毛が欲しいんだったよにゃ?」
「そう! 僕の毛からぬいぐるみを錬金できるから、みんなの毛からもアイテムを作れるんじゃないかなーって思って」
改めてお願いしていたことの理由を語ると、ふんふんと頷きながら聞いていた三人から毛繕いの許可をもらえた。代わりに、バトルに役立ちそうなアイテムをくれ、という要求はされたけど。
「これから小象に挑むつもりだにゃ。転移スキルを獲得できるように、アイテム欲しいにゃ」
「そっかー。ダメージを重ねるなら、行動阻害効果がある麻痺薬(中)かな。小象に効くかは試してないんだけど」
アイテムボックスから取り出して渡す。
「ほー、そんなら、試してみるぜ」
「うん、がんばって。あとは、羽が生えるアイテムもあるよ」
「羽ですか?」
不思議そうな顔で、ソウタが僕の背中の方を見る。
それにこたえるように、ちっこい羽をパタパタと動かしてアピールしてみた。そして、小声で説明を加える。
「そうだよ。僕の羽みたいなやつ。ちょっとの間飛べるようになるんだー」
ルトはこのアイテムを活用して、転移スキルを獲得できた。ツッキーたちの役にも立つんじゃないかな。
「それはすごいにゃ!」
一番前のめりで興奮したのはムギだった。遅れてソウタとツッキーが「おお!」「面白そうですね」と乗り気になる。
「食べるだけだから試してみてね。でも、非売品だから、他の人には内緒だよ」
貴重な希少種の毛と引き換えなら、空を飛べるアイテムも等価くらいになるんじゃないかな。空を飛べるアイテムを作れるのは、僕の希少種としてのメリットの一つだし。
食べかけニンジンを使ったキャロットケーキを一人二切れずつ渡す。足りなくなったら売ってあげよう。また毛と引き換えでもいいけど。
「わかったにゃ。大事に使うにゃ」
重々しく頷いたムギと、「バレないように気をつけなきゃ」と緊張した顔になるソウタを交互に眺め、苦笑する。そこまで真剣に受け止めなくてもいいんだけど。
ツッキーは「空飛ぶ狼って絵面、絶対カッコいいよなー」と能天気な感じだった。
「対価に納得してもらえたってことで、毛繕いしていい?」
「もちろんだぜ。ほれ」
「うわっ」
大きな体を押し付けてくるツッキーに呻きながら、毛繕いスキルを使う。シャボンのようなものがツッキーの全身を走った後には、艶々とした豊かな毛がより魅力的になっていた。
僕のアイテムボックスの中には【月狼の毛】が入ってる。無事ゲットだ。アイテムをもらえなくなるまで続けて使う。見た目の変化はさほどない。
「俺、すっげー綺麗になったな!」
「毛繕いスキル、アイテムを得るのにも便利だから、取得してみたらいいよ。自分で綺麗に保とうって行動してたら、結構早めに獲得できるはず」
「そうなのか! よっしゃ、今日からやってみるぜ」
毛繕いされた姿が気に入ったのか、ツッキーはやる気いっぱいだった。
その姿をにこにこと微笑んで見守ってたら、背中をちょんちょん、とつつかれる。
「ムギ?」
「……あたいもやってにゃ」
ムギもツッキーが綺麗になる姿を見て羨ましくなったらしい。うずうずとした感じで見られて、笑いをかみ殺しながら毛繕いスキルを使った。
「わー、ムギさん綺麗ですね」
「さわり心地が今まで以上にいいにゃ」
ソウタに褒められて、ムギもご満悦な感じだ。艶々でふわふわの毛は魅力的だよね。
僕も【丸猫の毛】をもらえて嬉しい。ムギからも限界までアイテムをもらってから、ソウタの毛繕いに移る。
「……おお?」
「僕も艶々になりましたね」
嬉しそうにしてるソウタの声を聞きながら、アイテムボックスに入ったアイテム【絹銀鼠のベルベット】を見つめる。
……毛じゃない、だと!?
「モモ、どうしたんだ?」
僕が固まっていることに真っ先に気づいたツッキーが、不思議そうに首を傾げる。ムギとソウタからも視線を感じた。
アイテムボックスから絹銀鼠のベルベットを取り出す。――ハンカチほどの大きさの触り心地のいい布だ。
「それはなんにゃ?」
「ソウタを毛繕いして、入手したアイテムだよ」
「……毛じゃないですね?」
ムギとソウタがきょとんと目を丸くする。それに頷き返しながら、僕は『これはどういうことだろう』と首を傾げてしまった。
僅かな沈黙を破って、ツッキーが衝撃を受けたように体を震わせ、口を開く。
「っ、もしかして、モモはソウタの皮を剥いだのか!?」
「痛い痛い痛い、そんなことしてないよー!」
瞬時に想像してしまって、僕の方が痛くなっちゃったじゃん! ソウタも「ひえっ!?」と震えてムギの後ろに隠れちゃったし。僕、そんなひどいことしないよ。
「――見て! ソウタ、ハゲてないでしょ!」
「確かに見た目は綺麗になっただけにゃ」
「尻の方も大丈夫か?」
「そんなとこ見ようとしないでくれます?」
心配して確かめようとしたツッキーに、ソウタの冷たい視線が突き刺さる。
わざわざ見られたい部分じゃないよね。ツッキーはデリカシーがない。
「たぶん、ただアイテムが獲得できただけで、見た目からなにかが減るわけじゃないんだよ。きっと」
僕だって、いくら毛繕いをしててもハゲてこないし!
という言い分が見事受け入れられて、ソウタを毛繕いして追加のベルベットをもらえることになった。
どんなアイテムになるかなー?
おかげで青乳牛の長毛を大量ゲットできたよー。自分を毛繕いしても、手に入れられる綿毛の数が増えてたし、ラッキーだったな~。
ルンルンの状態のまま、仮想施設に飛んで向かう。
でも、その道中でムギからの連絡に気づいて止まった。ちょっと屋根をお借りしますねー。
「あ、ログインしたのかぁ。今なら時間が取れる、と」
毛繕いさせて、とお願いしていたことへの返事だ。ツッキーとソウタも一緒にいるらしい。
今日は毛繕いデーかな? と思いながら、はじまりの街へ転移。待ち合わせ場所はアリスちゃんのお家の近くだった。
「お、来たな!」
「おっはー、ツッキー」
「あたいもいるにゃ」
「モモさん、おはようございます」
一番最初に見えたツッキーに挨拶をしたら、物陰からムギとソウタが顔を出した。なんで二人は隠れてたんだろう。
「やっぱり人目を感じるにゃ」
「みなさん、なかなか慣れてくれませんね」
ムギとソウタの言葉で理解した。二人とも目立つのが嫌で隠れてたんだね。この辺はプレイヤーが多いからなぁ。
第二の街まで進むと、大抵のプレイヤーは慣れるのか希少種のことを気にしなくなるんだけど、初心者は物珍しく感じちゃうだろうな。
「ツッキーは気にならないんだ?」
一人表通りで佇んでいたツッキーに尋ねる。目印代わりで立っていてくれたのかもしれないけど、今も視線はどうでもよさそうにしてるから、ちょっと気になった。
「二人は見られてると思うから気にしちまうんだ」
「うん?」
心なしかキリッとした表情で言われた。でも、あんまり理解できない。
首を傾げてると、ツッキーが再び口を開く。
「俺は見られてるんじゃない。――見せてるんだ!」
ドヤッという顔で胸を張るツッキーに、なんと返事をしたらいいものか。
色んな人に視線を向けられても、ツッキーが『俺カッコいいだろ?』という感じで振る舞ってみせてるのはすごい。ポジティブってことかな。
そのマインドはちょっと僕と近い気がする。僕だって『可愛いものにはつい目が向いちゃうよねー。しかたないなー』と思って、視線を気にしなくなったわけだし。
「見られてるんじゃなくて、見せてる……うん、わかるよ! もふもふの魅力は自ら振りまいていかないとね!」
「おっ、モモはこっち側か」
嬉しそうに「イェーイ」とハイタッチを求められてこたえる。
ムギとソウタから少し冷めた視線を感じた気がした。振り向くと、ムギは呆れた顔で顔を横に振ってて、ソウタは苦笑してる。
「ま、まぁ、そんな話は置いといて――」
「毛が欲しいんだったよにゃ?」
「そう! 僕の毛からぬいぐるみを錬金できるから、みんなの毛からもアイテムを作れるんじゃないかなーって思って」
改めてお願いしていたことの理由を語ると、ふんふんと頷きながら聞いていた三人から毛繕いの許可をもらえた。代わりに、バトルに役立ちそうなアイテムをくれ、という要求はされたけど。
「これから小象に挑むつもりだにゃ。転移スキルを獲得できるように、アイテム欲しいにゃ」
「そっかー。ダメージを重ねるなら、行動阻害効果がある麻痺薬(中)かな。小象に効くかは試してないんだけど」
アイテムボックスから取り出して渡す。
「ほー、そんなら、試してみるぜ」
「うん、がんばって。あとは、羽が生えるアイテムもあるよ」
「羽ですか?」
不思議そうな顔で、ソウタが僕の背中の方を見る。
それにこたえるように、ちっこい羽をパタパタと動かしてアピールしてみた。そして、小声で説明を加える。
「そうだよ。僕の羽みたいなやつ。ちょっとの間飛べるようになるんだー」
ルトはこのアイテムを活用して、転移スキルを獲得できた。ツッキーたちの役にも立つんじゃないかな。
「それはすごいにゃ!」
一番前のめりで興奮したのはムギだった。遅れてソウタとツッキーが「おお!」「面白そうですね」と乗り気になる。
「食べるだけだから試してみてね。でも、非売品だから、他の人には内緒だよ」
貴重な希少種の毛と引き換えなら、空を飛べるアイテムも等価くらいになるんじゃないかな。空を飛べるアイテムを作れるのは、僕の希少種としてのメリットの一つだし。
食べかけニンジンを使ったキャロットケーキを一人二切れずつ渡す。足りなくなったら売ってあげよう。また毛と引き換えでもいいけど。
「わかったにゃ。大事に使うにゃ」
重々しく頷いたムギと、「バレないように気をつけなきゃ」と緊張した顔になるソウタを交互に眺め、苦笑する。そこまで真剣に受け止めなくてもいいんだけど。
ツッキーは「空飛ぶ狼って絵面、絶対カッコいいよなー」と能天気な感じだった。
「対価に納得してもらえたってことで、毛繕いしていい?」
「もちろんだぜ。ほれ」
「うわっ」
大きな体を押し付けてくるツッキーに呻きながら、毛繕いスキルを使う。シャボンのようなものがツッキーの全身を走った後には、艶々とした豊かな毛がより魅力的になっていた。
僕のアイテムボックスの中には【月狼の毛】が入ってる。無事ゲットだ。アイテムをもらえなくなるまで続けて使う。見た目の変化はさほどない。
「俺、すっげー綺麗になったな!」
「毛繕いスキル、アイテムを得るのにも便利だから、取得してみたらいいよ。自分で綺麗に保とうって行動してたら、結構早めに獲得できるはず」
「そうなのか! よっしゃ、今日からやってみるぜ」
毛繕いされた姿が気に入ったのか、ツッキーはやる気いっぱいだった。
その姿をにこにこと微笑んで見守ってたら、背中をちょんちょん、とつつかれる。
「ムギ?」
「……あたいもやってにゃ」
ムギもツッキーが綺麗になる姿を見て羨ましくなったらしい。うずうずとした感じで見られて、笑いをかみ殺しながら毛繕いスキルを使った。
「わー、ムギさん綺麗ですね」
「さわり心地が今まで以上にいいにゃ」
ソウタに褒められて、ムギもご満悦な感じだ。艶々でふわふわの毛は魅力的だよね。
僕も【丸猫の毛】をもらえて嬉しい。ムギからも限界までアイテムをもらってから、ソウタの毛繕いに移る。
「……おお?」
「僕も艶々になりましたね」
嬉しそうにしてるソウタの声を聞きながら、アイテムボックスに入ったアイテム【絹銀鼠のベルベット】を見つめる。
……毛じゃない、だと!?
「モモ、どうしたんだ?」
僕が固まっていることに真っ先に気づいたツッキーが、不思議そうに首を傾げる。ムギとソウタからも視線を感じた。
アイテムボックスから絹銀鼠のベルベットを取り出す。――ハンカチほどの大きさの触り心地のいい布だ。
「それはなんにゃ?」
「ソウタを毛繕いして、入手したアイテムだよ」
「……毛じゃないですね?」
ムギとソウタがきょとんと目を丸くする。それに頷き返しながら、僕は『これはどういうことだろう』と首を傾げてしまった。
僅かな沈黙を破って、ツッキーが衝撃を受けたように体を震わせ、口を開く。
「っ、もしかして、モモはソウタの皮を剥いだのか!?」
「痛い痛い痛い、そんなことしてないよー!」
瞬時に想像してしまって、僕の方が痛くなっちゃったじゃん! ソウタも「ひえっ!?」と震えてムギの後ろに隠れちゃったし。僕、そんなひどいことしないよ。
「――見て! ソウタ、ハゲてないでしょ!」
「確かに見た目は綺麗になっただけにゃ」
「尻の方も大丈夫か?」
「そんなとこ見ようとしないでくれます?」
心配して確かめようとしたツッキーに、ソウタの冷たい視線が突き刺さる。
わざわざ見られたい部分じゃないよね。ツッキーはデリカシーがない。
「たぶん、ただアイテムが獲得できただけで、見た目からなにかが減るわけじゃないんだよ。きっと」
僕だって、いくら毛繕いをしててもハゲてこないし!
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