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4章 錬金術士だよ?
139.友だち作りをサポートします
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レイはまだりんごのドライフルーツを持っているそうなので、そのまま東の草原に向かうことにした。ここに来るの久しぶりだー。
「あんまりプレイヤーいないね?」
「皆さん、早々に北と南に向かったみたいですから」
閑散としたバトルフィールドは、モンスターを探そうと思わなくてもすぐに出会えそうだった。
でも、余計なバトルはしたくないなぁと思って、近くにいたスライムに声をかけてみる。
「そこのスライムくん。近くに跳兎いない?」
草むらから顔をのぞかせたスライムが、ふるふると体を揺らす。いないらしい。
「じゃあ、つれてきてくれる?」
頼んでみたら『うん』と頷く感じに体を動かしてから、スライムがどこかへ行く。声を掛けたスライムだけじゃなくて、たくさんのモンスターの気配が一斉に動いた気がする。
レベルが上がったおかげで広範囲を捉えられるようになった気配察知スキルを働かせながら、「う~ん?」と首を傾げた。
スライムがわざわざ追い払ってない限り、跳兎はすぐに出現するものだと思ってたんだけど、どういうことだろう。
「……モモさん、スライムと意思疎通ができるんですね?!」
なぜかレイにすごく驚かれた。
「うん。あれ、説明してなかったっけ?」
「してないです。でも、希少種だから、ってことですかね?」
「どうだろう。僕、スライムに好かれる称号を持ってるから、その効果もある気がする」
とはいえ、ピアと初めて会った時も、なんとなく意思が読み取れたし、希少種効果の割合が大きいのかな。
「羨ましい……やっぱり希少種ガチャすれば良かったかなぁ」
呟いてるレイの顔を見上げる。
「もふもふ好きならすれば良かったのに」
「でも私、リアルラックの自信がないので。物欲センサーにいつも負けるんで……」
なんか死んだ目をしてる気がする。これは深堀りしちゃいけない。
慌てて違う話題に変えようと考えてたら、スライムたちがモンスターを追い込んでくる気配を感じ取った。
「あ、跳兎が来るよ。りんごのドライフルーツを用意して」
「もう準備万端です!」
僕が言うまでもなく、レイは大量のドライフルーツが入った袋を握りしめていた。……どんだけ作ってるの。多すぎじゃない?
まぁ、目に生気が戻ったから、ツッコミは入れずにスルーしよう。
「キュピッ」
草むらから跳兎が飛び出してきた。スライムに気を取られてたのか、目の前にいる僕たちを見て、ぎょっとした感じで固まってる。
これ、懐柔できるかな……?
「ウサギさん、おやつをどうぞ!」
レイがドライフルーツを地面に投げる。僕たちと跳兎の間に落ちた。
跳兎がちょっと戸惑ってる。
「スライムたちー、もう追い込まなくていいよ。他の跳兎が近づいて来ないようにしてくれたら、さらに嬉しいけど」
声を掛けたら、色んなところから『わかったー』って感じの意思が届いた。結構距離があっても通じるものなんだねぇ。
「キュピ……」
スライムたちの気配が遠のいて、跳兎はちょっと安心した感じだ。僕たちを警戒しながらも、ドライフルーツに関心を示してる。
レイはじっと見守るだけで、跳兎に近づこうとはしなかった。
モンスターと仲良くなる最初ってこうするものなんだね。やっぱり僕は特異な例ってことだ。最初から好感度高いっていうアドバンテージがあったの、本当に幸運だったなぁ。
そんなことを考えながら、僕はのんびりとレイと跳兎を眺めた。
スライムたちが警戒してくれてるから、僕の役目なんてないも同然だし。目の前の跳兎がレイに襲いかかるなら、僕が倒さなきゃいけないだろうけど、そんな感じは全然ないもん。
「美味しいですよー。食べてみてー」
「……キュピ」
跳兎がパクッとドライフルーツを食べた。一度食べたら止まらなくなったみたいで、次々に口に運ぶ。
好物っていうのは本当だったんだね。美味しそうに食べてるなー。僕も食べたくなっちゃう。
「美味しい? もっと食べる?」
「キュピ!」
跳兎はいつの間にかレイの傍まで来てた。ねだるような眼差しに、レイが微笑みながら追加のドライフルーツを出す。
手に載せられたままのそれを跳兎が食べ始めたから、もう勝ち確って考えても良さそう。
「レイ、勧誘してみたら?」
「はい!」
頷いたレイが気合いを入れて、跳兎を見下ろし口を開く。
「――跳兎さん、私の友だちになってくれませんか?」
丁寧な誘い方だなー。僕ももうちょっと言葉遣いを考えるべきかも? でも、丁寧語で話すと堅苦しい気がしちゃう。ゲームの中なんだし、気楽に過ごしたいんだよねぇ。
ちょっぴり自分のあり方を考えてたら、いつの間にか跳兎の気持ちは固まっていたらしい。
――シャラン!
跳兎の体が光を放った。スラリンやピアをテイムした時と同じ感じだ。
「あ、モンスターカードをもらいました! でも、名前を付けますかって……?」
レイが首を傾げてる。その足元を、跳兎がぴょんぴょんと動き回っていた。たぶんドライフルーツの追加をねだってる。
「好きな名前でいいと思うよ。他の跳兎との区別が必要なだけだろうし」
「そうなんですね。じゃあ――」
ちらりと僕を見た後、レイは跳兎の頭を撫でながら微笑んだ。
「あなたの名前は【アップル】で」
「……僕がモモだから、跳兎の名前も食べ物にしたの?」
「そうです! 好物がわかりやすい名前ですよね」
「まぁ、レイと跳兎がそれでいいならいいんじゃない?」
跳兎は嬉しそうに跳ねていた。たぶんモンスターは基本的に名前を拒否しないんじゃないかな。さすがに『ウサギ肉』って名付けられたら拒否しそうだけど。
キャッキャと戯れてるレイと跳兎改めアップルを眺め、頷く。
「――上手いこと進んで良かったね!」
僕が一緒に来た意味がほとんどないとか言わないでよ。活躍してくれたのは、たくさんのスライムだって、僕もわかってるもん!
もっと先輩ぶりたかったなぁとちょっぴり残念になってるのは、レイには内緒だ。
「あんまりプレイヤーいないね?」
「皆さん、早々に北と南に向かったみたいですから」
閑散としたバトルフィールドは、モンスターを探そうと思わなくてもすぐに出会えそうだった。
でも、余計なバトルはしたくないなぁと思って、近くにいたスライムに声をかけてみる。
「そこのスライムくん。近くに跳兎いない?」
草むらから顔をのぞかせたスライムが、ふるふると体を揺らす。いないらしい。
「じゃあ、つれてきてくれる?」
頼んでみたら『うん』と頷く感じに体を動かしてから、スライムがどこかへ行く。声を掛けたスライムだけじゃなくて、たくさんのモンスターの気配が一斉に動いた気がする。
レベルが上がったおかげで広範囲を捉えられるようになった気配察知スキルを働かせながら、「う~ん?」と首を傾げた。
スライムがわざわざ追い払ってない限り、跳兎はすぐに出現するものだと思ってたんだけど、どういうことだろう。
「……モモさん、スライムと意思疎通ができるんですね?!」
なぜかレイにすごく驚かれた。
「うん。あれ、説明してなかったっけ?」
「してないです。でも、希少種だから、ってことですかね?」
「どうだろう。僕、スライムに好かれる称号を持ってるから、その効果もある気がする」
とはいえ、ピアと初めて会った時も、なんとなく意思が読み取れたし、希少種効果の割合が大きいのかな。
「羨ましい……やっぱり希少種ガチャすれば良かったかなぁ」
呟いてるレイの顔を見上げる。
「もふもふ好きならすれば良かったのに」
「でも私、リアルラックの自信がないので。物欲センサーにいつも負けるんで……」
なんか死んだ目をしてる気がする。これは深堀りしちゃいけない。
慌てて違う話題に変えようと考えてたら、スライムたちがモンスターを追い込んでくる気配を感じ取った。
「あ、跳兎が来るよ。りんごのドライフルーツを用意して」
「もう準備万端です!」
僕が言うまでもなく、レイは大量のドライフルーツが入った袋を握りしめていた。……どんだけ作ってるの。多すぎじゃない?
まぁ、目に生気が戻ったから、ツッコミは入れずにスルーしよう。
「キュピッ」
草むらから跳兎が飛び出してきた。スライムに気を取られてたのか、目の前にいる僕たちを見て、ぎょっとした感じで固まってる。
これ、懐柔できるかな……?
「ウサギさん、おやつをどうぞ!」
レイがドライフルーツを地面に投げる。僕たちと跳兎の間に落ちた。
跳兎がちょっと戸惑ってる。
「スライムたちー、もう追い込まなくていいよ。他の跳兎が近づいて来ないようにしてくれたら、さらに嬉しいけど」
声を掛けたら、色んなところから『わかったー』って感じの意思が届いた。結構距離があっても通じるものなんだねぇ。
「キュピ……」
スライムたちの気配が遠のいて、跳兎はちょっと安心した感じだ。僕たちを警戒しながらも、ドライフルーツに関心を示してる。
レイはじっと見守るだけで、跳兎に近づこうとはしなかった。
モンスターと仲良くなる最初ってこうするものなんだね。やっぱり僕は特異な例ってことだ。最初から好感度高いっていうアドバンテージがあったの、本当に幸運だったなぁ。
そんなことを考えながら、僕はのんびりとレイと跳兎を眺めた。
スライムたちが警戒してくれてるから、僕の役目なんてないも同然だし。目の前の跳兎がレイに襲いかかるなら、僕が倒さなきゃいけないだろうけど、そんな感じは全然ないもん。
「美味しいですよー。食べてみてー」
「……キュピ」
跳兎がパクッとドライフルーツを食べた。一度食べたら止まらなくなったみたいで、次々に口に運ぶ。
好物っていうのは本当だったんだね。美味しそうに食べてるなー。僕も食べたくなっちゃう。
「美味しい? もっと食べる?」
「キュピ!」
跳兎はいつの間にかレイの傍まで来てた。ねだるような眼差しに、レイが微笑みながら追加のドライフルーツを出す。
手に載せられたままのそれを跳兎が食べ始めたから、もう勝ち確って考えても良さそう。
「レイ、勧誘してみたら?」
「はい!」
頷いたレイが気合いを入れて、跳兎を見下ろし口を開く。
「――跳兎さん、私の友だちになってくれませんか?」
丁寧な誘い方だなー。僕ももうちょっと言葉遣いを考えるべきかも? でも、丁寧語で話すと堅苦しい気がしちゃう。ゲームの中なんだし、気楽に過ごしたいんだよねぇ。
ちょっぴり自分のあり方を考えてたら、いつの間にか跳兎の気持ちは固まっていたらしい。
――シャラン!
跳兎の体が光を放った。スラリンやピアをテイムした時と同じ感じだ。
「あ、モンスターカードをもらいました! でも、名前を付けますかって……?」
レイが首を傾げてる。その足元を、跳兎がぴょんぴょんと動き回っていた。たぶんドライフルーツの追加をねだってる。
「好きな名前でいいと思うよ。他の跳兎との区別が必要なだけだろうし」
「そうなんですね。じゃあ――」
ちらりと僕を見た後、レイは跳兎の頭を撫でながら微笑んだ。
「あなたの名前は【アップル】で」
「……僕がモモだから、跳兎の名前も食べ物にしたの?」
「そうです! 好物がわかりやすい名前ですよね」
「まぁ、レイと跳兎がそれでいいならいいんじゃない?」
跳兎は嬉しそうに跳ねていた。たぶんモンスターは基本的に名前を拒否しないんじゃないかな。さすがに『ウサギ肉』って名付けられたら拒否しそうだけど。
キャッキャと戯れてるレイと跳兎改めアップルを眺め、頷く。
「――上手いこと進んで良かったね!」
僕が一緒に来た意味がほとんどないとか言わないでよ。活躍してくれたのは、たくさんのスライムだって、僕もわかってるもん!
もっと先輩ぶりたかったなぁとちょっぴり残念になってるのは、レイには内緒だ。
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