もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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5章 もふもふいっぱい?

172.おばけさん、こんにちは

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 南の密林に到着してシーズンモンスターを探す。
 同じ目的っぽいプレイヤーが結構たくさんいた。バトルフィールドは広いから、そうそう同じモンスターを狙って横取りしちゃうことはないだろうけど、気をつけなきゃ。

「おばけさん~、出ておいで~」

 歌うように呟きながら、飛翔フライを使って木々の間を縫うように低空を飛ぶ。

 気配察知に引っかかるのは通常モンスターばかり。余計なバトルは避けて、シーズンモンスターを探す。どこにいるの~?

「――って、いきなりすぎぃ!」

 突然、目の前に白い布の塊のようなものが現れた。慌てて空を蹴って方向転換しながら距離をとる。
 このモンスターの気配を事前に察知できなかったんだけど、どういうこと?

 改めて観察すると、モンスターはボールに白い布を被せたみたいな姿で、ふよふよと浮いていた。アニメとかに出てくるおばけっぽい?
 大きな黒い目と赤い口がニコッと笑ってるのが、可愛いと言えばいいのか、不気味と言えばいいのか……。

「えっと――【化衣オバルン】か」

 全鑑定スキルの結果、闇属性のモンスターだと判明。瞬間移動が得意らしい。その能力でいきなり近づいてきたんだね?
 でも、攻撃力・防御力はあまり高くないらしく、逃さないように倒すのが大変なタイプみたいだ。

「んー、まずは普通に倒して、ゴムゴムトラップを使った時との差を知りたいから――えい! 火炎放射フレイムラジエーション!」

 一番強い魔術攻撃で、逃がす前に一撃必殺を狙ってみた。

 ――のぉぉぉ……。

「なんかすごく悲しい叫びだったんだけど。申し訳なくなっちゃう……」

 布が一気に燃え上がって、化衣オバルンが消えた。瞬間移動したんじゃなくて、見事討伐成功。
 後引くような嘆きの声に微妙な気分になりながら、ドロップアイテムを確認する。

「【化衣オバルンの白布】と【おばけのコア】×1かぁ」

 一個しかもらえないのは悲しい。でも、化衣オバルンの弱さを考えたら妥当な結果かな。
 また化衣オバルンを探して、次はゴムゴムトラップを使ってみたいなー。

「——のわっ!?」

 また急に現れた。化衣オバルンめ、びっくりするじゃん!

 慌ててゴムゴムトラップを取り出してる間に姿が消えてる。……倒すより、探すのが大変だから、掲示板にあんまり情報がなかった感じ? 最初だけサービスしてくれたの?

「むぅ……」

 僕を揶揄うように目の前に現れては消える。びっくりして、ゴムゴムトラップを投げるのが一瞬遅れちゃうんだよなぁ。その隙に逃げられるの、そろそろムカッとしちゃうぞ。

 飛翔フライを使って飛びながら、真剣にモンスターの気配を探ってみる。
 すると、なんとなく化衣オバルンの瞬間移動の法則がわかった気がした。予想をつけた場所に、急いで向かう。

「ここに現れるはず――……来た!」

 目の前に出てきた化衣オバルンに、構えていたゴムゴムトラップを投げつけた。

 ――のうぅぅ……。

「また悲しげに鳴いてるー、やめてよー」

 投げた途端、パッと広がったゴムの網が化衣オバルンを地面に張り付けた。ウゴウゴとしてる化衣オバルンを見て、やっぱり微妙な気分になる。
 弱い者いじめみたいに思えるよ……。

化衣オバルンが弱いなら【足蹴】スキルでも倒せるかな?」

 ジャンプしてスキル発動。

「――って、あれ?」

 地面を蹴りつけた感じしかしなかった。化衣オバルンの体力バーも減ってない。
 もしかして、化衣オバルンって物理攻撃が効かないタイプ!?

 改めて全鑑定スキルを使ってみると、説明の最後の方に『属性を纏っていない物理攻撃は効かない』と書いてあった。
 それ、太字で注意書きすべき情報じゃないかな!

「じゃあ、魔術かぁ。んー、風の玉ウィンドボール!」

 キーリ湖のモンスター対策に風魔術を鍛えようと思って、普段あまり使わない魔術を選択する。風魔術が唯一レベル1のままなんだよねぇ。

 ――のぉぉぉ……。

 また悲しげな鳴き声を上げて、化衣オバルンが消えていった。地面に残ったゴムゴムトラップを回収して、ドロップアイテムを確認する。

「あ、【おばけのコア】二個もらえた!」

 二倍になってるぞ。これ、すごくない? もっと強いモンスターだったら、さらに効率よく交換用アイテムを集められるかも。
 ゴムゴムトラップは行動阻害効果もあって、倒すのが難しそうなモンスターにも挑戦しやすくなるし。

「いいねいいねー」

 るんるん、と弾む心のままに鼻歌を歌う。
 ついでに近くの採集ポイントで【特殊採集】スキルを使ってみたら、【おばけの実】を二個採れた。僕は採集量が増えるアイテムを持ってるからだろうな。

「よーし、がんばるぞー」

 サブリングを入手するのに、交換用アイテムが二千個必要って知った時は気が遠くなりそうだったけど、なんとかなる気がする。
 ついでに装備とかの入手もできるといいな。

「――って、また急に来た!」

 油断してるところで現れる化衣オバルン。神出鬼没すぎて、何度でもびっくりしちゃうよ。
 でも、ギリギリのところでゴムゴムトラップを投げて捕まえられた。こうしちゃえば逃げる心配もないから、やっぱりこのアイテムいいよね~。

 化衣オバルンを狩り尽くす勢いで倒しながら、採集をして、着々と交換用アイテムを集めていく。

 元々いたモンスターが仮装(?)してるのも倒したよ。黒マント付けただけのカエルとか、天冠つけてるだけのヘビとか、「仮装なめてるでしょー!」ってなったけど。
 もっと仮装クオリティを高めて、と運営ちゃんに文句を言おうかな。

 仮装はともかく、交換用アイテムは五十個集めた。一度の採集で採れる数は不定だけど、モンスターを倒した時のドロップアイテム数はほぼ変わらない。

〈風魔術がレベル2になり、【風の槍ウィンドランス】を習得しました〉

「おお! レベルアップ、やったね!」

 風の槍ウィンドランスは『敵一体に中程度のダメージを与える。貫通力が高い』魔術なんだって。
 風の玉ウィンドボールよりクールタイムが長いのが欠点。でも、ダメージ力の高さはいいよね。

「――シーズンモンスターがこんな感じなら、第三の街周辺でも戦えるかなぁ」

 もっと効率良く交換用アイテムを集めたいし、モンスターのテイムもしたいし、明日挑戦してみようっと。

 そろそろ帰ろうかなー、と思ったところで、木々の合間にオレンジと黒のふわふわが見えた。

「……ピア?」

 すごくそっくり。ピアがピンクのクマなら、今見てるのはオレンジのパンダって感じだ。黒の垂れ目みたいな模様があるから。

 隠れながら鑑定してみて確信。
 ピアがイベントバージョンになってる! 即死攻撃持ちなのは変わらないよ!

「ボスと同種がイベントモンスター化はありなの……?」

 これ、知らずに攻撃しちゃったら、すぐに死に戻りだよね。
 なんとなく、密林での情報が少ない理由がわかった気がする。

 ふよふよーと飛んでるオレンジパンダちゃん(正式名称:おばけ毛玉ハロウィラン)からそっと距離を取る。

 即死攻撃持ちとはできるだけ戦いたくないよ。戦略的撤退だー!
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