もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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6章 どたばた大騒動?

228.信仰の力!

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 タマモが言うには。
 宗教組織は、クランとは少し違うシステムを持っているらしい。それは――

「――奥義……?」

 ほとんどの人が戦闘を継続する中、僕とタマモ、それと巻き込まれたルトが顔を突き合わせて話し込む。
 すでにルトは頭痛に耐えるような表情をしてる。今度、頭痛薬を作ってあげようかな。レシピ探しからしないといけないけど。

「そうです。クランとは違い、宗教は神という絶対的な存在に対する信仰心で成り立つもの、というのはご理解くださいますよね?」
「うん、それはわかってるけど」
「神は信仰心を集めることで偉大な力を発揮するものです」
「うん……? そうだっけ……?」

 なんか違う気がするぞ。普通は偉大な存在だから信仰心を集められるんだよね。
 まぁ、このゲーム世界でプレイヤーが作る宗教なんだから、タマモが言うことも正しいのかもしれないけど。

 そんなことを考えて戸惑ってる僕に微笑みながら、タマモは話を続ける。もう少しペースを落としてくれてもいいんだよ?

「だからこそ、宗教組織には偉大な力を発揮する奥義が存在しているのです」
「その奥義について、効果を含めて詳しく説明してくれ」

 ルトは背景への理解を諦め、実利を追求することにしたらしい。深く考えちゃダメだって悟ったんだね。僕もルトに倣おう。

「奥義は信仰心を集めることで発動する、一種のスキルです。どのような効果を示すかは、代表者が選択できます。一度選択すると変更できなくなりますが、宗教組織が成長すると、新たに奥義を取得できるので問題ありません」

 つまり、プレイヤー個人ではなく、もふもふ教という集団の力で発動できるスキルってこと? 説明されてもいまいち想像できないんだよなぁ。

「タマモはどんな効果の奥義を選択しようとしてんだ?」
「奥義【神の威光】――信仰心の強さを攻撃力に変えて、敵にダメージを与える効果があります」

 タマモの目がキラッと輝く。すごく生き生きとしてるなぁ。対照的に、ルトの顔は引き攣ってるけど。

「……それ、信仰心が強ければ強いほど、与えるダメージ量も増えるってことか?」
「その通りです!」

 晴れやかな表情のタマモから、ルトは目を逸らしてため息をつく。

「やべぇ。俺、今、あのレイドボスに『早く逃げて』って言いたい気分」
「わかる」
「お前が神だろ。信者の暴走を止めろよ」
「だがしかし、とても有効な攻撃だと思うので、推進したい所存です」

 ふざけながらも本気で返答すると、ルトは「……まぁ、確かに、そうだよなぁ」と納得した。

 僕はみんながもふもふ教や僕に対して向ける熱意を疑ってない。たまに目を逸らしたくなるけど、いわゆる信仰心と呼ばれるものは、ものすごく強いんだろうなぁと理解してる。
 だから、その信仰心の強さが攻撃力に換算される奥義の効果は、もはや見なくても予想できた。

「奥義って、どうやって発動するんだ?」
「みんなで信仰心ゲージをためて、モモさんが奥義名を言ったら発動します」
「え、僕なの!?」
「私でもできますが、絶対モモさんがいいです」
「なんで?」
「モモさんが神だからです」

 全然納得できなかったけど、タマモが真剣な顔をしてたから、受け入れるしかなかった。
 僕が奥義を発動するのかぁ。ここまで神様プレイをするとは、考えてなかったよ。

「信仰心ゲージって、どうやってためるんだ?」
「それはもちろん、みなさんの心を一つにして、ですよ。そこで活躍するのが聖句です」
「なるほど、そこに繋がるのか……」

 ルトの理解が早い。僕は置いていかれてるんだけど?

「信仰心ゲージをためる設定はすでにしてありますから、もう半分以上たまってますよ。発動までもう少しです。そのためにも、みんなで聖句を唱えて、より信仰心を高めましょう!」

 タマモがにこやかに微笑む。その言葉は、僕たち以外にも即座に伝わった。これまで以上に一体感が生まれた気がする。

 多くの異世界の住人NPCがこの状況についていけなくなってるのは、心から謝りたい。早めにボスを倒して街を守れるのが免罪符にならないかなぁ。

 遠くを見つめる僕を置いて、タマモが全員に呼びかける。

「もふもふ教の力を見せつけるためにも、みなさんでご唱和ください! 『モモさんは神!』」
「「「モモさんは神!」」」
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」

 タマモが言う度に、たくさんの人が戦いながらも声を合わせて唱える。なんかヤバい宗教な雰囲気が漂ってない?

 ルトに視線を向けたら、表情だけで『諦めろ……』と言われた。確かに、もうこの熱狂をどうこうできるなんて思えないもんね。

 最初は戸惑った表情だった異世界の住人NPCたちが、周囲に巻き込まれて一緒に唱和し始めているのを見て、思わず僕の表情が死んだ。
 ほんと、ごめんね。この戦いが終わったら、これまで通りの日常に戻れることを祈ってるよ。

「あー……やり方はドン引きするけど、マジで信仰心ゲージの上がり方エグいわ」
「ルト、見れてるの?」
「おう。俺も役職に就いてるからだろうな。モモも見れるんじゃね?」
「……見たくない」
「でも、発動のタイミングを知るのに必要だろ」
「ルトが教えてくれたらいいんだよー」
「……おう」

 僕の気持ちをわかってくれたのか、ルトが言葉少なに受け入れてくれた。

 もうすぐ奥義を発動できるようになるらしいので、僕は準備を整えておくことにする。といっても、敵に対して奥義名を唱えるだけでいいみたいだけど――それだけじゃ、ちょっぴりつまらないよね?

 食べかけニンジンを使った料理を食べて、いつもより羽を大きくする。この方が飛翔時間が増えるし、見映えもするんだ。

「【飛翔フライ】!」
「なにするつもりだ?」
「まだ秘密ー。それより、カウントダウンよろしく」
「……ああ。十、九、八――」

 予想以上にカウントダウンの開始が早かった。
 スキルを使って飛びながら、ルトの声に耳を澄ます。視線を向けるのは凶獣イービルディアだ。

「三、二、一……!」

 タマモからの視線を感じた。もう奥義を発動できる。

「みんな、たくさんの応援ありがとー! みんながくれた力で、敵をやっつけちゃうぞ!」

 たくさんの視線を感じる。歓声を浴びながら、宙でステップを踏んで一回転。さらに、両腕を広げて踊るようにくるくると回る。アニメの変身シーンみたいな感じ。
 何も指示してないのに、ピアとユキマルが僕の動きにあわせて光の演出をしてくれた。

 さらに高まる歓声を受けながら、凶獣イービルディアを見据えてビシッと指差す。
 ここはキリッとしたカッコよさをイメージした。ちょっとは威厳出てる?

「――凶獣イービルディアよ、もふもふ教の力にひれ伏せ~! 奥義【神の威光】!」

 唱えた途端、たくさんの人とモンスターがひしめくバトルフィールドが、眩い光で白く染まった。

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