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6章 どたばた大騒動?
229.完勝は通過点です
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――神とはなんだろう。人の心を癒やす存在? 奇跡を起こすもの?
その答えは人それぞれだろうけど、今この場においてはただ一つだけ。
「これが、もふもふ教の神の力……」
異世界の住人の陶酔したような声が聞こえた。
僕は遠くを見つめる。
バトルフィールド上にいたレイドボス凶獣とその他のモンスターたちの姿がない。
たった一度の閃光がすべてを薙ぎ払い、消し去ったんだ。
――奥義【神の威光】……強すぎでは!? というか、これ、範囲攻撃だったんだね?
〈〈東の鉱山エリアのレイドボス凶獣が倒されました。また、フィールド上のモンスター討伐率が100%に達しました。街壁損傷率0%。東の鉱山エリアに参戦したプレイヤーに完勝報酬【強化石・極】が贈られます〉〉
ワールドアナウンスがあった次の瞬間、バトルフィールドに歓喜の声が溢れた。
「ヤッター! 完勝だって!」
「もふもふ教の勝利!」
「モモさんが神々しすぎた……!」
「録画してた人いる!? 私、撮り忘れちゃった!」
「ご心配なく。後でもふもふ教連絡板に載せますよ」
「さすがもふらーさん!」
みなさん楽しそうだねー。よかったねー。
あまりの効果を発揮した奥義に呆然としてたけど、騒がしさを感じてなんとか立ち直った。上手くいったんだから、それでいいや。
ルトの傍に下りると、呆れた顔をしつつも喜びを隠せない表情を向けられる。
「モモ、あの演出は必要だったか?」
「僕は神でアイドルなので」
「……そっか。まぁ、お前がそれで楽しいなら、別にいいけど」
「今んとこ楽しいよ」
神として祭り上げられるのに戸惑うことはあるけど、普通はできない経験だし、最終的には面白いと思うから良いんだ。
僕がにこにこと笑って頷くと、ルトもフッと笑って僕の頭を撫でた。
「おつかれ」
「どもども~。ルトもおつかれ。でも、すぐにお城の方に行った方がいいかも?」
「あー……まだ向こうで騒ぎは起きてねぇみたいだけど、レイドボス一体が倒されたことで、なにか起きるかもな。行くか」
頷いたルトが、タマモに声を掛けに行く。犯人逮捕に行くメンバーと、他のエリアに行くメンバーに分けるんだって。
僕とルト、リリ、希少種会、他数人は犯人逮捕に向かう。タマモは他のエリアへの援助を指揮するらしい。頼りになるねぇ。
〈〈西のキーリ湖エリアにレイドボス凶獣が出現しました。三十分後に外壁に到達し、破壊を開始します〉〉
おっと……西エリアにもレイドボスが現れたのか。同じ名前だけど、見た目も一緒なのかな? ちょっと気になるけど、僕は犯人逮捕が優先!
でも、良いタイミングで出現したから、西エリアは大丈夫そうだな。僕たちの方からたくさんの人が向かうはずだし、すぐに倒せそう。
「――というか、僕が行って、奥義を使った方がいいのかな? 一瞬で倒せそう」
「無理ですよ」
独り言に返事があった。タマモがしゃがんで僕と目を合わせてくる。
「どうして?」
「奥義は一度発動すると、次に発動するまで二十四時間のクールタイムがあるんです」
「長いね。それは無理だ」
納得です。あれだけ強力な攻撃なんだから、そりゃあ連発はできないよね。できたら、パワーバランスが崩壊しちゃう。
僕が頷いてたら、タマモがにこにこと微笑んだ。表情だけで『可愛い!』と思ってるのが伝わってくる。
タマモががんばってくれてるのは知ってるから、いくらでも愛でてくれていいんだけど、今はそれよりするべきことがあるんだよなぁ。
「モモ、行くぞ」
「おっけー、ルト。タマモもがんばってね!」
「はい、お任せください。他のエリアでも完勝を目指しますよ!」
キリッとした表情になったタマモとハイタッチをして別れる。
犯人逮捕が早く済んだら、僕も他のエリアを助けに行かなくちゃ。というか、イグニスさんをどのタイミングで呼ぶかが悩みどころだな。
◇◆◇
転移を使って、領主さんたちがいるお城までやって来る。事前に、ここに転移ピンを設定しておいたんだよ。
「静かだね」
「物々しい雰囲気だけどな」
お城の門は、たくさんの騎士で塞がれていた。ピリピリとした空気が痛いくらい伝わってくる。
第三の街は、領主が暮らすお城と役所が別々の敷地にある。といっても、隣り合わせだけど。
警戒されてるのはお城の方だけだ。領主さんの周囲は、ここよりも騎士がたくさんいるんだろうな。
「これ、入れるの?」
「この状況のための協力依頼と許可証だろ」
堂々とした態度でルトが門前に立つと、少しのやり取りの後に中に通された。こんな感じでいいんだ?
「犯人が簡単に通れそう……」
「それは俺らで倒せばいいんだろ」
「モンスターと違って、人は倒しちゃいけないんじゃない?」
「……一歩間違えれば、俺らが犯罪者扱いか?」
「正当防衛なら許されると思う」
マップを確認して、領主さんたちの傍に控えているプレイヤー陣のところへ向かいながら、今後の行動を話し合う。
僕たちは東エリア担当だったから、ここでの行動はあんまり決めてなかったんだよね。なにが起こるかわからなかったから、決められなかったとも言うけど。
「あー、攻撃より、拘束系のスキルを使えってことか」
「私の出番?」
木の罠を使えるリリが微笑む。僕もそのスキルは使えるよー。他にも、拘束系のアイテムを作ってきたから使えそう。
「スラリンも拘束系のスキル持ってるよ」
転移を使うために帰していたスラリンを召喚する。スラリンは周囲を見渡した後、不思議そうに体を傾けた。
「スラリン、これから犯人逮捕に行くからね。攻撃しすぎちゃダメだよ」
「きゅぃ(僕が捕まえる~)」
楽しそうに体を揺らしてる。相手はモンスターじゃなくて人だから、スラリンの能力でなんとかなるかな。
「俺も一応拘束系のアイテムは用意したけど……とりあえず、ここに詰めてるヤツらと相談しねぇとな」
ルトはそう言うと、辿り着いた部屋の扉を叩いた。
この先に、領主さんたちとプレイヤーがいるはずだ。これからなにが起きるのかな~。楽しみ!
その答えは人それぞれだろうけど、今この場においてはただ一つだけ。
「これが、もふもふ教の神の力……」
異世界の住人の陶酔したような声が聞こえた。
僕は遠くを見つめる。
バトルフィールド上にいたレイドボス凶獣とその他のモンスターたちの姿がない。
たった一度の閃光がすべてを薙ぎ払い、消し去ったんだ。
――奥義【神の威光】……強すぎでは!? というか、これ、範囲攻撃だったんだね?
〈〈東の鉱山エリアのレイドボス凶獣が倒されました。また、フィールド上のモンスター討伐率が100%に達しました。街壁損傷率0%。東の鉱山エリアに参戦したプレイヤーに完勝報酬【強化石・極】が贈られます〉〉
ワールドアナウンスがあった次の瞬間、バトルフィールドに歓喜の声が溢れた。
「ヤッター! 完勝だって!」
「もふもふ教の勝利!」
「モモさんが神々しすぎた……!」
「録画してた人いる!? 私、撮り忘れちゃった!」
「ご心配なく。後でもふもふ教連絡板に載せますよ」
「さすがもふらーさん!」
みなさん楽しそうだねー。よかったねー。
あまりの効果を発揮した奥義に呆然としてたけど、騒がしさを感じてなんとか立ち直った。上手くいったんだから、それでいいや。
ルトの傍に下りると、呆れた顔をしつつも喜びを隠せない表情を向けられる。
「モモ、あの演出は必要だったか?」
「僕は神でアイドルなので」
「……そっか。まぁ、お前がそれで楽しいなら、別にいいけど」
「今んとこ楽しいよ」
神として祭り上げられるのに戸惑うことはあるけど、普通はできない経験だし、最終的には面白いと思うから良いんだ。
僕がにこにこと笑って頷くと、ルトもフッと笑って僕の頭を撫でた。
「おつかれ」
「どもども~。ルトもおつかれ。でも、すぐにお城の方に行った方がいいかも?」
「あー……まだ向こうで騒ぎは起きてねぇみたいだけど、レイドボス一体が倒されたことで、なにか起きるかもな。行くか」
頷いたルトが、タマモに声を掛けに行く。犯人逮捕に行くメンバーと、他のエリアに行くメンバーに分けるんだって。
僕とルト、リリ、希少種会、他数人は犯人逮捕に向かう。タマモは他のエリアへの援助を指揮するらしい。頼りになるねぇ。
〈〈西のキーリ湖エリアにレイドボス凶獣が出現しました。三十分後に外壁に到達し、破壊を開始します〉〉
おっと……西エリアにもレイドボスが現れたのか。同じ名前だけど、見た目も一緒なのかな? ちょっと気になるけど、僕は犯人逮捕が優先!
でも、良いタイミングで出現したから、西エリアは大丈夫そうだな。僕たちの方からたくさんの人が向かうはずだし、すぐに倒せそう。
「――というか、僕が行って、奥義を使った方がいいのかな? 一瞬で倒せそう」
「無理ですよ」
独り言に返事があった。タマモがしゃがんで僕と目を合わせてくる。
「どうして?」
「奥義は一度発動すると、次に発動するまで二十四時間のクールタイムがあるんです」
「長いね。それは無理だ」
納得です。あれだけ強力な攻撃なんだから、そりゃあ連発はできないよね。できたら、パワーバランスが崩壊しちゃう。
僕が頷いてたら、タマモがにこにこと微笑んだ。表情だけで『可愛い!』と思ってるのが伝わってくる。
タマモががんばってくれてるのは知ってるから、いくらでも愛でてくれていいんだけど、今はそれよりするべきことがあるんだよなぁ。
「モモ、行くぞ」
「おっけー、ルト。タマモもがんばってね!」
「はい、お任せください。他のエリアでも完勝を目指しますよ!」
キリッとした表情になったタマモとハイタッチをして別れる。
犯人逮捕が早く済んだら、僕も他のエリアを助けに行かなくちゃ。というか、イグニスさんをどのタイミングで呼ぶかが悩みどころだな。
◇◆◇
転移を使って、領主さんたちがいるお城までやって来る。事前に、ここに転移ピンを設定しておいたんだよ。
「静かだね」
「物々しい雰囲気だけどな」
お城の門は、たくさんの騎士で塞がれていた。ピリピリとした空気が痛いくらい伝わってくる。
第三の街は、領主が暮らすお城と役所が別々の敷地にある。といっても、隣り合わせだけど。
警戒されてるのはお城の方だけだ。領主さんの周囲は、ここよりも騎士がたくさんいるんだろうな。
「これ、入れるの?」
「この状況のための協力依頼と許可証だろ」
堂々とした態度でルトが門前に立つと、少しのやり取りの後に中に通された。こんな感じでいいんだ?
「犯人が簡単に通れそう……」
「それは俺らで倒せばいいんだろ」
「モンスターと違って、人は倒しちゃいけないんじゃない?」
「……一歩間違えれば、俺らが犯罪者扱いか?」
「正当防衛なら許されると思う」
マップを確認して、領主さんたちの傍に控えているプレイヤー陣のところへ向かいながら、今後の行動を話し合う。
僕たちは東エリア担当だったから、ここでの行動はあんまり決めてなかったんだよね。なにが起こるかわからなかったから、決められなかったとも言うけど。
「あー、攻撃より、拘束系のスキルを使えってことか」
「私の出番?」
木の罠を使えるリリが微笑む。僕もそのスキルは使えるよー。他にも、拘束系のアイテムを作ってきたから使えそう。
「スラリンも拘束系のスキル持ってるよ」
転移を使うために帰していたスラリンを召喚する。スラリンは周囲を見渡した後、不思議そうに体を傾けた。
「スラリン、これから犯人逮捕に行くからね。攻撃しすぎちゃダメだよ」
「きゅぃ(僕が捕まえる~)」
楽しそうに体を揺らしてる。相手はモンスターじゃなくて人だから、スラリンの能力でなんとかなるかな。
「俺も一応拘束系のアイテムは用意したけど……とりあえず、ここに詰めてるヤツらと相談しねぇとな」
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