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6章 どたばた大騒動?
230.無計画でも大丈夫
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僕たちが着いたのは城の中の会議室みたいなところ。
そこでは領主さんが部下の人たちとモンスター襲撃に関する情報を集めて、話し合いをしてた。東エリアの防衛が完了した情報が伝わってるみたいで、少しホッとした表情だ。
領主さんたちの護衛と犯人捕縛の協力のために集まってるプレイヤーは、壁際に控えて黙ってた。
さすがに、真剣に話し合ってる偉い人の中にズケズケと交じろうとするような人はいなかったらしい。そういうことも考えて人選したらしいから。ユウシャがここにいない、ってだけで、なんとなく人選の基準がわかるでしょ。
「よっす。東エリア早々の防衛完了おめ」
「ども。こっちはどんな感じっすか?」
壁際で佇んでた男の人が、少し目元を緩めてルトに声を掛ける。ルトと仲がいい人なのかな? ルトは普段より丁寧な感じの対応してる。
「見たまんま。これなら、俺も東エリア手伝えば良かったな」
「経験値と報酬は美味しかったですけど、いろいろとヤベーこと起きたんで、タケミさんが関わらなかったの、マジ良かったと思います」
「すげー本気の顔で言うじゃん。なにが起きた……?」
真剣な顔で言うルトに、タケミさんという人が戸惑った顔してる。
なにが起きたかと言うなら――
「もふもふ教ばんざい?」
「モモ、タケミさんまで勧誘するんじゃねぇぞ」
「僕が誰かを勧誘したことなんて一度もないんだけど!」
ルトにすごく嫌がられた。
僕は僕のことを好きだって言ってくれる人を受け入れて、僕も好きだよーって返してるだけなんだよ! 無理やり好きになってなんて言わない!
僕がプンプンと怒ったふりをしてたら、タケミさんは「ほぉ」と納得した様子で頷いた。
今さらだけど、タケミさんってカッコいい人だね。ワイルドな大人って感じ。煙草とか吸ってそう。見た目は三十歳手前かな? 種族は人間だと思う。たぶん。
「もふもふ教ってあれか。よく話題になるやつ」
「そうっすね。タケミさんは巻き込まれないでくださいよ?」
「そういうのに熱上げるほど若くねぇから安心しろ」
「マジで安心しました」
ルト、本気で安堵してるでしょ。もふもふ教の熱狂ぶりを思い出すと、それと関係ない人がいるのにホッとする気持ちはわからないでもない。
「東エリアはもふもふ教担当だったし、なんかスゲーこと起きるんだろうとは思ってたけど、後で詳しく教えてくれよ」
「……掲示板で見てください。絶対報告上げてる人いるんで」
「なに、自分で言うのも嫌なのか。くくっ、好きで付き合ってるくせして、そういうとこお前ガキだよな」
「うっせぇよ……」
おお! ルトが完全に負けてる!
面白い関係性だなぁ、と思って観察してたら、タケミさんから視線を向けられた。
「自己紹介まだだったな。俺はタケミ。人間で剣士。盾も使う。そんで、一応、攻略の最前線で遊んでる」
「軽く言ってるけど、この人、サーバー内で一番レベル高くて、高難度のバトルフィールドまで進んでるから」
「今んとこ、北の霊峰の中層までだけどな」
ルトの補足に、タケミさんが笑う。
北の霊峰の中層ってすごいね! めっちゃ強い人なんだー。憧れちゃうなぁ。
キラキラとした目で見つめたら、なぜかタケミさんはちょっと困った顔になった。
「――ヤバ。ガキの純粋な眼差しがオジサンの心に刺さる……」
「オジサンって歳じゃないっすよね?」
「二十越えりゃ、未成年から見たらオジサンだろ」
「言ってて悲しくならないっすか?」
「現実はいつだって悲しいよな……」
そんなことを言いつつタケミさんは楽しそうに笑った。そして、「そんなことより」と話を本筋に戻す。
「――お前らが来てくれたのは嬉しいけど、まだなんも起こってねぇぞ」
「そうみたいっすね。この後、どうする予定ですか?」
「出たとこ勝負。なにが起こるかわからねぇから、どうしようもねぇだろ」
「無計画すぎる……」
呆れた顔をしたルトに、タケミさんが肩をすくめる。大人の余裕がある感じで、なにが起きても対応できるっていう自信が窺えた。
これ、僕が来なくても問題なかったかも?
「今はひたすら待ちの時間だし、お前らはレイドボスが出たっていう西に行っても――」
タケミさんの言葉が途切れた。これまでの緩い表情が嘘だったかのように、ピリッとした雰囲気で部屋の窓の方に視線を向けてる。
少し時間を置いて、僕たちもタケミさんが警戒を示したモノを察知した。なんか怖いものが近づいてくる気がする。
「なに……?」
「さぁな。けど、待ってた甲斐はあったみたいだ」
僕の呟きに応えたタケミさんが、腰元の剣に手を添え、好戦的にニヤリと笑った。ルトと同じくバトルジャンキーなの?
類は友を呼ぶってやつかー、と少しほのぼのとしてる間に、窓から見える外の状況が一変していた。
青空に黒いモヤの渦ができてる。その中心からなにかが――
〈〈第三の街領主城傍にモンスターが現れました。これより領主城及び街の侵略が開始します。完勝条件は『人や建物に損傷なく、モンスターを全滅させる』です〉〉
「ヒュウ。モンスターが生まれるところなんて初めて見たな。ありゃ、ダンジョンと同じ仕組みか?」
「知らないっす。つーか、ダンジョンも一番奥まで行ってんの、タケミさんっしょ。ああいう感じでダンジョンのモンスターできてんすか?」
「まだ知らねぇなら、自分で答え探しに行った方が楽しいぞ」
慌て始めた領主さんたちを尻目に、タケミさんは窓に向かって一直線に駆けた。
「――モンスター退治は俺らに任せて、領主様方は自分たちの安全確保をしてください!」
タケミさんにつられて、僕たちも駆ける。
犯人逮捕の前に、モンスター退治をしなきゃいけないみたいだね。がんばろーっと。
そこでは領主さんが部下の人たちとモンスター襲撃に関する情報を集めて、話し合いをしてた。東エリアの防衛が完了した情報が伝わってるみたいで、少しホッとした表情だ。
領主さんたちの護衛と犯人捕縛の協力のために集まってるプレイヤーは、壁際に控えて黙ってた。
さすがに、真剣に話し合ってる偉い人の中にズケズケと交じろうとするような人はいなかったらしい。そういうことも考えて人選したらしいから。ユウシャがここにいない、ってだけで、なんとなく人選の基準がわかるでしょ。
「よっす。東エリア早々の防衛完了おめ」
「ども。こっちはどんな感じっすか?」
壁際で佇んでた男の人が、少し目元を緩めてルトに声を掛ける。ルトと仲がいい人なのかな? ルトは普段より丁寧な感じの対応してる。
「見たまんま。これなら、俺も東エリア手伝えば良かったな」
「経験値と報酬は美味しかったですけど、いろいろとヤベーこと起きたんで、タケミさんが関わらなかったの、マジ良かったと思います」
「すげー本気の顔で言うじゃん。なにが起きた……?」
真剣な顔で言うルトに、タケミさんという人が戸惑った顔してる。
なにが起きたかと言うなら――
「もふもふ教ばんざい?」
「モモ、タケミさんまで勧誘するんじゃねぇぞ」
「僕が誰かを勧誘したことなんて一度もないんだけど!」
ルトにすごく嫌がられた。
僕は僕のことを好きだって言ってくれる人を受け入れて、僕も好きだよーって返してるだけなんだよ! 無理やり好きになってなんて言わない!
僕がプンプンと怒ったふりをしてたら、タケミさんは「ほぉ」と納得した様子で頷いた。
今さらだけど、タケミさんってカッコいい人だね。ワイルドな大人って感じ。煙草とか吸ってそう。見た目は三十歳手前かな? 種族は人間だと思う。たぶん。
「もふもふ教ってあれか。よく話題になるやつ」
「そうっすね。タケミさんは巻き込まれないでくださいよ?」
「そういうのに熱上げるほど若くねぇから安心しろ」
「マジで安心しました」
ルト、本気で安堵してるでしょ。もふもふ教の熱狂ぶりを思い出すと、それと関係ない人がいるのにホッとする気持ちはわからないでもない。
「東エリアはもふもふ教担当だったし、なんかスゲーこと起きるんだろうとは思ってたけど、後で詳しく教えてくれよ」
「……掲示板で見てください。絶対報告上げてる人いるんで」
「なに、自分で言うのも嫌なのか。くくっ、好きで付き合ってるくせして、そういうとこお前ガキだよな」
「うっせぇよ……」
おお! ルトが完全に負けてる!
面白い関係性だなぁ、と思って観察してたら、タケミさんから視線を向けられた。
「自己紹介まだだったな。俺はタケミ。人間で剣士。盾も使う。そんで、一応、攻略の最前線で遊んでる」
「軽く言ってるけど、この人、サーバー内で一番レベル高くて、高難度のバトルフィールドまで進んでるから」
「今んとこ、北の霊峰の中層までだけどな」
ルトの補足に、タケミさんが笑う。
北の霊峰の中層ってすごいね! めっちゃ強い人なんだー。憧れちゃうなぁ。
キラキラとした目で見つめたら、なぜかタケミさんはちょっと困った顔になった。
「――ヤバ。ガキの純粋な眼差しがオジサンの心に刺さる……」
「オジサンって歳じゃないっすよね?」
「二十越えりゃ、未成年から見たらオジサンだろ」
「言ってて悲しくならないっすか?」
「現実はいつだって悲しいよな……」
そんなことを言いつつタケミさんは楽しそうに笑った。そして、「そんなことより」と話を本筋に戻す。
「――お前らが来てくれたのは嬉しいけど、まだなんも起こってねぇぞ」
「そうみたいっすね。この後、どうする予定ですか?」
「出たとこ勝負。なにが起こるかわからねぇから、どうしようもねぇだろ」
「無計画すぎる……」
呆れた顔をしたルトに、タケミさんが肩をすくめる。大人の余裕がある感じで、なにが起きても対応できるっていう自信が窺えた。
これ、僕が来なくても問題なかったかも?
「今はひたすら待ちの時間だし、お前らはレイドボスが出たっていう西に行っても――」
タケミさんの言葉が途切れた。これまでの緩い表情が嘘だったかのように、ピリッとした雰囲気で部屋の窓の方に視線を向けてる。
少し時間を置いて、僕たちもタケミさんが警戒を示したモノを察知した。なんか怖いものが近づいてくる気がする。
「なに……?」
「さぁな。けど、待ってた甲斐はあったみたいだ」
僕の呟きに応えたタケミさんが、腰元の剣に手を添え、好戦的にニヤリと笑った。ルトと同じくバトルジャンキーなの?
類は友を呼ぶってやつかー、と少しほのぼのとしてる間に、窓から見える外の状況が一変していた。
青空に黒いモヤの渦ができてる。その中心からなにかが――
〈〈第三の街領主城傍にモンスターが現れました。これより領主城及び街の侵略が開始します。完勝条件は『人や建物に損傷なく、モンスターを全滅させる』です〉〉
「ヒュウ。モンスターが生まれるところなんて初めて見たな。ありゃ、ダンジョンと同じ仕組みか?」
「知らないっす。つーか、ダンジョンも一番奥まで行ってんの、タケミさんっしょ。ああいう感じでダンジョンのモンスターできてんすか?」
「まだ知らねぇなら、自分で答え探しに行った方が楽しいぞ」
慌て始めた領主さんたちを尻目に、タケミさんは窓に向かって一直線に駆けた。
「――モンスター退治は俺らに任せて、領主様方は自分たちの安全確保をしてください!」
タケミさんにつられて、僕たちも駆ける。
犯人逮捕の前に、モンスター退治をしなきゃいけないみたいだね。がんばろーっと。
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