もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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6章 どたばた大騒動?

231.僕たちがんばってるよ

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 襲ってきたモンスターは、どれも飛行できるタイプのようだ。幸いなことに、遠距離攻撃のスキルは持っていないみたいで、人や建物を守るのはさほど難しくない。……攻撃を加えるのは難しいみたいだけど。

「うわー、全然当たらない!」

 リリが魔術を放った後に悲鳴を上げてる。モンスターの回避が上手すぎて、攻撃できてないんだから当然だ。
 ルトもちょっと苛立った顔をしてる。ちょこまかと逃げられると、嫌になっちゃうよね。

 僕はスイスイと飛びながら、一体ずつ着実に倒してる。ピアを召喚して、人や建物に被害が出ないよう守ってもらってるから、安心して攻撃に集中できるんだ。

「ピアちゃん、可愛くて強いとか最高すぎる……!」

 さっきまでタケミさんと一緒に壁際で控えてたプレイヤーの一人が、感動で震えてた。もしかしてもふもふ教の人? でも、東にはいなかった人だしなぁ……?

「ピア、この調子で分裂して敵の攻撃を弾いてね!」
「もふ~」

 状況を理解してるんだかわからない、のほほんとした返事だ。でも、ちゃんと分裂して、モンスターたちを包囲する位置につき、向かってくる敵を弾き飛ばしてる。えらい!

「ナイス! モモのテイムモンス、強いな」
「でしょー」

 横を跳んでるタケミさんに褒められて胸を張った。ピアは可愛くて強い子なのです。

「――って、タケミさん、飛べるの?」

 ふとその事実に気づいて、タケミさんを見つめた。
 タケミさんは宙を蹴ってモンスターに肉薄すると、剣の一薙ぎで倒してる。強い。

「これ、装備の効果だよ。モモみたいに長時間跳んでられねぇんだ」

 肩をすくめると、タケミさんは一旦地上に下り立つ。僕も行こう。なんか、ルトが呼んでるし。

「モモ! 飛べるアイテムくれ」
「ニンジンジュースだね? どーぞ」

 予想してた言葉だったから、すぐさまアイテムバッグから取り出して渡す。ルト以外のみんなもどうぞ。
 次々に配ってる間に、ルトとリリがアイテムの説明をしてくれた。ちょっとの間飛べるアイテムだから、今の状況で役に立ってくれるはず。

「……これ、店で売ってくれよ」
「タケミさんが言うなら、売ろうかなー」

 今まで隠してたけど、今回のレイドイベントで僕の食べかけアイテムはお披露目しちゃったし、そろそろ売ろうと思ってたんだ。数量限定で売ればさほど騒動にはならないはず。

「楽しみにしてる」

 タケミさんは笑ってそう言うと、再びモンスターの元へ跳んでいった。飛べるアイテムとの相乗効果があるのか、先ほどまでよりも動きが機敏だ。

「装備とか、レベルとか、いろいろとすごいんだろうけど、それ以上に元々の身体能力が高そう」
「タケミさん、リアルではスタントマンしてるらしいぞ」
「ほんとに!? 納得ー」

 ルトと話してから、僕も再度モンスターに向かう。
 みんな飛べるようになったから、モンスター討伐スピードが上がってる。それなのに、敵の数が減ってないような?

「タケミさーん、やっぱりあの渦をどうにかしなくちゃ、際限なくモンスターが湧いてくるみたいです!」
「そう言ってもなー。あの渦の消し方はさすがに俺もわからねぇぞ。ダンジョンでの情報的に、光属性のスキルが効く可能性はあるが」

 誰かの報告に、タケミさんが渋い表情で答える。
 敵の数が減ってないのは、あの渦のせいかぁ。効くのは光属性のスキル――って、それ、ユキマルがいけるんじゃない? 狂化モンスターを相手にした時みたいに……

 ルトも僕と同じことを考えたのか、視線がぶつかった。その隣でリリも期待に満ちた表情をしてる。

「おい、モモ、やってみるか?」
「神殿でもらう聖水とか持ってたら、それで対処できるのかもしれないけど、今は手持ちにないし、モモが頼りだよ!」
「やってみて損はないよね」

 二人に背中を押され、すぐさまユキマルを召喚する。

「ぴぅ(バトル?)」
「うん。あれに浄化スキル使ってみてくれる?」

 渦を指して示したら、ユキマルがちょっと怯えた様子を見せた。

「ぴ……ぅ、ぴ!(う……ん。モモが言うなら、がんばるよ!)」
「僕が一緒に行くから安心してね」

 勇気を振り絞った様子のユキマルを抱きしめる。
 ユキマルの浄化スキルは体当たり的に対象に触れないと効果がないので、空の渦まで運ぶか投げるかしないといけないのだ。怯えてるユキマルを投げるなんてことはしないよ。

「ぴぅ(モモと一緒なら大丈夫!)」
「よーし、じゃあ、ひとっ飛びするよー」

 僕たちがなにをするか把握したのか、みんながモンスターを遠ざけてくれる。渦までの道が開かれた。一気に行っちゃおう。

「頼んだぞ、モモ!」
「がんばるのはユキマルだよー」
「ユキマル、がんばってー」

 タケミさんの声に応えたら、たくさんの人からユキマルへの応援が飛んだ。ユキマルも気合いが入って、怯えた感じが一切なくなったみたい。よかったー。

 ユキマルを抱え直して空を飛ぶ。スラリンみたいな大きさになっちゃったら、一緒に飛べなくなっちゃうなぁ。ユキマルはずっとこのサイズでいてほしい。

 時折現れるモンスターは、即座に他のプレイヤーが遠ざけ退治してくれる。でも、モンスターが生まれる渦に向かってるから、どうしても何度も遭遇しちゃって、思いの外到着まで時間がかかっちゃった。

「もうすぐだよ、ユキマル」
「ぴぅ(準備はオッケーだよ)」

 浄化のスキルを発動したユキマルに微笑み、さらに加速して進んだ。渦に飛び込む勢いで行っちゃおう。もし渦が消えなくても、飛び込んだらどうなるか気になるし。

「――クハハハハッ、為すすべもなくモンスターにやられる気分はどうだ! 愛する街や人が無惨に壊される光景は、お前の目にどう映ってる!」

 どこかから知らない人の声が聞こえた。
 でも、その言葉が的外れすぎて、思わず首を傾げちゃう。声の主の相手をするより、渦の対処を優先するねー。

「貴様は、まさか、亡きエトワノール様の……!?」

 これは領主様の声だ。もしかして、犯人逮捕のイベント始まっちゃってない? すぐそっちに参加するから、ちょっとだけ待っててよ。

「今さら俺の企みに気づいたところでもう遅い! 創生の渦から生まれるモンスターが、お前の大切なものすべてを破壊し尽くす光景を、己の無力さと共に味わうが――……あ?」

 憎々しげに叫んでいた男の声が途切れる。
 唖然としたような呟きがこぼれた頃には、僕とユキマルは渦に衝突するようにぶつかっていたから、その様子を見ることはできなかった。

「ユキマルの浄化を食らえー」
「ぴぅ!」

 白い光を放ったユキマルによって、おどろおどろしい雰囲気で空を占めていた渦が、あっさりと霧散していく。
 効果あったね!
 ふはは、僕たちの勝利ー! これ、完勝ってことでいいよね?

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