もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

340.もふもふ神ぱわーあっぷ

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 渾身の大技を成功させたヤナは大喜びの様子だ。

「モモさんたちがフォローしてくれたおかげで、初めて実戦で使えましたよ! ありがとうございます!」
「初めてなの!?」
「そうなんです。詠唱時間がすっごく長くて、しかも詠唱中に一歩も動いちゃいけないっていう制限もあって、なかなか……」

 ヤナがハハハと笑い声を上げながら、カリカリと頬を掻く。
 そういう制限があるなら、最初に言っておいてほしかったなーって思うけど、結果的に上手くいったんだからいっか。

 氷妖樹アイストレントの体力がもうすぐ半分になりそうだし、攻撃を畳み掛けるぞ。

「ヤナ、もう一発いけそう?」
「同じスキルは無理です。クールタイムが六時間なんで。でも、詠唱時間をもらえれば、違うスキルは発動できます!」
「オッケー。じゃあ、全力で守るから、やってみて」
「やっほーい、さすモモ! カッコいい! そこに痺れる憧れるー」

 ヒューヒュー、と口笛らしき音を発するヤナを目掛けて、僕は足元からすくい取った雪を投げた。

「——ゲフッ!?」
「遊んでないで準備しなさいっ」
「……了解です。モモさん、ママみたいですねー」
「ヤーナー?」
「ごめんやなー」

 意味不明な謝罪をしてきたヤナを、真顔で見つめる。背後でスラリンたちが真剣に戦ってるのがシュールだ。
 ヤナもすべったことに気づいたのか、真面目な雰囲気で姿勢を正し、直角に頭を下げた。

「——ご無礼の段、平にご容赦ください」
「ヤナには中間の謝罪ってないの?」

 いや、この謝罪もふざけてるのかもしれないな、と思いながらため息をつく。
 もう気にせず戦っちゃうぞ。

 バフやデバフを掛け直したり、クールタイムに気をつけながら火魔術を放ったりして、氷妖樹アイストレントの体力を削っていく。

 詠唱中のヤナに影響が出そうな氷柱や氷礫は、オギンが氷の盾を作って防いだ。枝による攻撃は、僕が火魔術で逐一焼いていく。

 スラリンは久々に流星スキルを使用したよ! すかさず僕がフラグ折りスキルで雪崩を止めるのは欠かせないけど、大ダメージを与えられたからやっぱりいいスキル。

 それでも倒しきれないなんて、氷妖樹アイストレントはどんだけ強いの? って感じだけど。

 何はともあれ、僕たちがヤナを守りながら必死に戦っていたら、ついにヤナ渾身の攻撃第二弾が放たれた。

「暗き闇の住人よ、光満ちた世界を侵略し、蹂躙せよ——【闇侵蝕ダークイロージェン】!」

 ヤナの足元にあった真っ白な雪が黒い液体に浸されたように漆黒に変わる。その漆黒は急速に範囲を広げ、氷妖樹アイストレントがいる場所まで届いた。

 スキルの効果よりちょっと気になったのが、呪文のカッコよさだ。魔術で詠唱する呪文の手抜き具合と差があり過ぎる気がする!

 そんなどうでもいいことを考えながら、僕は飛翔フライで飛んだ。
 ヤナのスキルで生じた黒いものに触れるのが嫌だったんだもん。仲間だから僕たちに影響はないとわかってたけど、それはそれ。

 ヒスイも飛んで回避したし、オギンは氷で台を作ってその上に逃れた。スラリンとユキマルはオギンにくわえられてる。

「グオオオオッ!?」

 苦しげな悲鳴が響いた。
 氷妖樹アイストレントが根っこから次第に黒く染まり、動きが鈍っていく。そして、次の瞬間には、パキッと幹に裂け目ができた。
 勢いよく体力バーが削られていく。でも、削り切るのは無理そうで——

「【火炎絨毯イクスプロージョン】!」

 僕が覚えてる火魔術の中で最高レベルのスキルを放ち、氷妖樹アイストレントを根っこから燃やした。

 体力バーが点滅し……消える。
 続いて、氷妖樹アイストレントの姿もパッと光が散るように空気に溶けた。

〈北の霊峰上層エリアボス1【氷妖樹アイストレント】を倒しました。報酬としてスキル【氷魔術レベル1——氷弾アイスバレット】とアイテム【氷の枝】十個を入手しました〉
〈種族レベルが34になり、種族固有スキル【天の断罪アンジュジャッジ】を習得しました。火魔術がレベル6になり、【火炎嵐フレイムストーム】を習得しました〉
〈スラリンのレベルが33になりました。ユキマルのレベルが33になりました。ヒスイのレベルが31になりました〉

——————
スキル【氷弾アイスバレット
 レベル1の氷魔術
 氷属性の魔力でできた弾丸で敵一体を攻撃する

【氷の枝】レア度☆☆☆☆
 溶けない氷で覆われた枝
 様々なアイテムを作製する際の素材として利用できる

スキル【天の断罪アンジュジャッジ
 敵一体に罪ある者の烙印を押す
 烙印を押された敵は、その後五分間、防御力と光属性の攻撃に対する耐性が50%下がる

スキル【火炎嵐フレイムストーム
 嵐のような炎の猛威で範囲内の敵全体にダメージを与える
 30%の確率で火傷の追加ダメージを与える
——————

 アナウンスがいっぱい来た! なんか、驚くようなことを立て続けに言われた気がするぞ……?

「氷魔術ゲットしたんだけど!?」

 まずは最初の驚きポイント。
 固まる僕を見下ろして、ヤナが首を傾げた。

「掲示板に情報が出てましたよね?」
「え、そうなの?」
「そうなんです。まぁ……そういうのを知らないのも、モモさんらしいですね!」

 アハハ、と笑うヤナは知っていただけあって、驚いた様子がない。でも、氷妖樹アイストレントを倒せて凄く嬉しそうではある。
 ちょっと驚かせたいなぁ……

「種族固有スキルもゲットできたよ」
「あ、レベル34になったんですね! おめでとうふ!」

 なぜか豆腐を渡された。ギャグのために持ち歩いてるの?
 お祝いの品として遠慮なく受け取ります。湯豆腐食べたい。温かいものが欲しい。

「どもども。覚えたスキルは、天の断罪アンジュジャッジっていうんだー」
「ほうほう……強そうな響きですね! ちなみに、俺が使ったスキルの闇霊の行進ダークフェアリー・マーチも種族固有スキルなんですよ」
「めっちゃ強力なスキルだったもんね」

 希少種族の種族固有スキルは普通に覚えられるスキルより威力とか、効果範囲とかが凄くなってる傾向がある。
 ヤナが使ったスキルが、種族固有のものなのは納得だ。

「でしょー? それで、モモさんが覚えたスキルの効果は?」

 期待に満ちた目を向けられる。
 その思いに応えられるかなー? ちょっぴり自信がないけど、胸を張って教えましょう。

「敵一体に罪ある者の烙印を押して、五分間防御力を50%下げるんだよ」

 ヤナがポカーンとした雰囲気で固まった。
 攻撃タイプのスキルじゃないから、しょぼいって思った? でも、天兎アンジュラパの種族固有スキルで攻撃タイプはこれまで出てきたことないんだよねぇ。
 天兎アンジュラパって、サポートタイプの種族だと思う。

「………………えげつなっ!」
「え、そんなに?」

 たっぷり溜めて、ヤナが叫ぶ。二歩分くらい飛び退いてる。
 続けて、「俺に罪ある者の烙印は押さないでくださいね。もふもふ教から処されちゃいますから!」と祈るようなポーズで言い募ってきた。
 プレイヤーには効果ないスキルだと思うよ?

「きゅぃ(モモ、強くなった?)」
「強くなったよー」

 スラリンに答えたら、全員から『おめでとう!』と祝福をもらった。オギン以外もレベルアップしたし、僕も「おめでとー」とお祝いする。

 目標も達成できたし、言う事なしの素晴らしい成果だね。この調子であとは天兎アンジュラパに会いに行こう!

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