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9章 もふうさフィーバー
341.霊峰頂上
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ヤナが「お名残惜しいですが、タイムリミットが来てしまいました。どうぞ涙はしまってください。またすぐに会いに来ますからー」などといろいろ言ってから、ログアウトをするために転移で街に戻った。
僕たち、泣く気配は一切なかったんだけどな?
スラリンたちが『にぎやかな骸骨だったねー』と話しているのを聞きながら、ちょっぴり納得できない気分を味わう。
「……まぁ、いいや。それより、頂上を目指そっか」
僕とヒスイは飛んで、スラリンとユキマルはオギンに乗って、霊峰を登っていく。
頂上はもうすぐだと思うんだけどなぁ。
しばらく進むと、雲の中に入っちゃったみたいで視界が悪くなった。モンスターと戦いにくいよー。
「この雲、なんか変じゃない?」
「きゅぃ(変って?)」
「イグニスさんに乗って、霊峰の頂上近くに来た時には、こんな雲なかったんだけど」
「キュオ(言われてみれば、そうね。この辺りは雲ができにくいはずだったわ)」
霊峰出身のオギンも不思議そうに首を傾げた。やっぱり変なんだ。何かが起きてるのかな?
とりあえず、鑑定してみようと思って、雲を注視する。
——————
【時空雲】
時空系魔力が集まり、雲のように見えている
時空門が開いている時だけに生じる現象
——————
ほえ? 時空雲? 時空門? その言葉はよくわからないけど、時空系魔力が集まってるのかぁ。
そういえば、モンちゃんが霊峰頂上付近にある仙桃ミルクの滝の向こう側には、時空系魔力が濃い洞窟があるって言ってたな。
もしかして、そこから時空系魔力が漏れ出て、雲になってるってこと?
「この雲が濃い方に向かえば、仙桃ミルクの滝——天兎の生息地が近いかも!」
テンションが上がってきたぞー。
ルンルン、と鼻歌を歌いながら、より白さが濃い方へと進む。頂上まで来ると襲ってくるようなモンスターがいないみたいで、ひたすら探し回ることができた。
「ぴぅ(これ、仙桃ミルクじゃない?)」
「お、発見したね! たくさんの仙桃ミルクだー」
ユキマルが石で囲まれた池のようになっている仙桃ミルクを見つけた。白いモヤに目を凝らすと、岩壁を流れ落ちる仙桃ミルクがぼんやりと見える。あれが仙桃ミルクの滝だ。
「——とりあえず、仙桃ミルク採集~♪」
仙桃ミルクは天兎の好物で、僕も大好き。たくさん採って、帰ってから美味しいお菓子を作るんだー。
大量に用意していた瓶にひたすら仙桃ミルクを詰めていく。百個あれば、しばらくは大丈夫そうかな。
「キュオ(甘いにおいね……)」
オギンはちょっと嫌そう。甘すぎるとクドく感じることがあるもんね。
キリがいいところで採集をやめて、天兎探しに移る。どこにいるかな~?
「オギンは天兎がいるところ知ってる?」
「キュオ(さあ? 彼らは好きな時に現れて、好きな時にいなくなるから)」
なるほど、天兎は自由獣なんだね。僕と一緒!
共通点を見つけてちょっぴり嬉しいけど、会えないのは悲しいなぁ。
「天兎~どこにいるの~。かくれんぼ中かな~。もうい~か~い♪」
歌うようにリズムをつけて言いながら、仙桃ミルクの滝周辺を探し回る。
ここは岩場だけど、たまに茂みや木があるから、その陰を覗き込んでみた——いない。
「にゃ(あそこの洞窟は行ってみないにゃ?)」
ヒスイが仙桃ミルクの滝を指す。
洞窟かー。そうだね、ストルムの好物を作ってあげたいから、時空系アイテムを採集しに行こうか。
「……行きたいけど、どうやって行けばいいの?」
滝に近づこうとしたところで、ふと気づく。
洞窟があるって聞いたけど、そこまでの通路がない。飛んでいくしかないかな? でも、それだとヒスイ以外がついてこれないよ。
「あ、飛翔アイテムを使えばいっか」
ふと思い出して、アイテムボックスからニンジンケーキを取り出す。
僕の食べかけニンジンを使ったケーキで、食べると飛翔スキルを使えるようになるんだよー。短時間だけどね。
オギンとスラリン、ユキマルに渡して食べてもらい、羽が現れたのを見てから、仙桃ミルクの滝へと飛んで突撃した。
「ひゃっほーい、仙桃ミルク浴びちゃうぞー! ……って、あれ? 濡れずに通れた……」
仙桃ミルクでベチョベチョになる覚悟で突き進んだのに、何も触れることなく洞窟に辿り着いた。汚れたら、生活魔術【洗浄】でどうにかしようと思ってたのに……どういうこと?
「にゃ(あの滝、幻にゃ)」
「え、そうなの!? 滝があるって聞いてたんだけどなぁ?」
「にゃ(幻の滝はあったにゃ)」
「なるほど?」
ないけどあった、って意味がわからないけど、まぁいいや。
それより、洞窟で採集がんばろう。松明を使って明るくしたら、洞窟内のそこかしこに草っぽいものや、苔っぽいものなどが光って見えた。
白く霞んでないから見やすい。洞窟内は時空系魔力が外より濃そうなのに、時空雲が生じてないって不思議だなぁ。
首を傾げながらも、採集を開始する。
空間草に時空草、時空花、時空苔——初めて見たアイテムもあるけど、どれも時空系魔力を含んでて、アイテム作製に使えそう。ストルムが好きな時空団子もたくさん作れるぞー。
この洞窟内には警戒するべきモンスターがいないみたいで、しばらく採集しながら奥へと進んでいくと——
「……あれ、何?」
行き止まりになっているところに門扉があった。うっすらと扉が開いてる。そこから淡い光が差し込んでいた。
——————
【時空門】
時空を隔てる門
繋がっている先がどこかは、行ってみないとわからない
——————
これが時空門か。ちょっと開いてるから、時空雲が生じてたんだね。
どこかに通じてるみたいだけど、行ってみて大丈夫?
うずうずと好奇心が疼く。
危険はあるかもしれないけど、見つけたからには行ってみないと損だよね!
転移ピンをここに設定して、いつでもここに戻れるように準備した。
「むふふ……冒険に出発するよー!」
どんな場所が待ってるのかな♪
僕たち、泣く気配は一切なかったんだけどな?
スラリンたちが『にぎやかな骸骨だったねー』と話しているのを聞きながら、ちょっぴり納得できない気分を味わう。
「……まぁ、いいや。それより、頂上を目指そっか」
僕とヒスイは飛んで、スラリンとユキマルはオギンに乗って、霊峰を登っていく。
頂上はもうすぐだと思うんだけどなぁ。
しばらく進むと、雲の中に入っちゃったみたいで視界が悪くなった。モンスターと戦いにくいよー。
「この雲、なんか変じゃない?」
「きゅぃ(変って?)」
「イグニスさんに乗って、霊峰の頂上近くに来た時には、こんな雲なかったんだけど」
「キュオ(言われてみれば、そうね。この辺りは雲ができにくいはずだったわ)」
霊峰出身のオギンも不思議そうに首を傾げた。やっぱり変なんだ。何かが起きてるのかな?
とりあえず、鑑定してみようと思って、雲を注視する。
——————
【時空雲】
時空系魔力が集まり、雲のように見えている
時空門が開いている時だけに生じる現象
——————
ほえ? 時空雲? 時空門? その言葉はよくわからないけど、時空系魔力が集まってるのかぁ。
そういえば、モンちゃんが霊峰頂上付近にある仙桃ミルクの滝の向こう側には、時空系魔力が濃い洞窟があるって言ってたな。
もしかして、そこから時空系魔力が漏れ出て、雲になってるってこと?
「この雲が濃い方に向かえば、仙桃ミルクの滝——天兎の生息地が近いかも!」
テンションが上がってきたぞー。
ルンルン、と鼻歌を歌いながら、より白さが濃い方へと進む。頂上まで来ると襲ってくるようなモンスターがいないみたいで、ひたすら探し回ることができた。
「ぴぅ(これ、仙桃ミルクじゃない?)」
「お、発見したね! たくさんの仙桃ミルクだー」
ユキマルが石で囲まれた池のようになっている仙桃ミルクを見つけた。白いモヤに目を凝らすと、岩壁を流れ落ちる仙桃ミルクがぼんやりと見える。あれが仙桃ミルクの滝だ。
「——とりあえず、仙桃ミルク採集~♪」
仙桃ミルクは天兎の好物で、僕も大好き。たくさん採って、帰ってから美味しいお菓子を作るんだー。
大量に用意していた瓶にひたすら仙桃ミルクを詰めていく。百個あれば、しばらくは大丈夫そうかな。
「キュオ(甘いにおいね……)」
オギンはちょっと嫌そう。甘すぎるとクドく感じることがあるもんね。
キリがいいところで採集をやめて、天兎探しに移る。どこにいるかな~?
「オギンは天兎がいるところ知ってる?」
「キュオ(さあ? 彼らは好きな時に現れて、好きな時にいなくなるから)」
なるほど、天兎は自由獣なんだね。僕と一緒!
共通点を見つけてちょっぴり嬉しいけど、会えないのは悲しいなぁ。
「天兎~どこにいるの~。かくれんぼ中かな~。もうい~か~い♪」
歌うようにリズムをつけて言いながら、仙桃ミルクの滝周辺を探し回る。
ここは岩場だけど、たまに茂みや木があるから、その陰を覗き込んでみた——いない。
「にゃ(あそこの洞窟は行ってみないにゃ?)」
ヒスイが仙桃ミルクの滝を指す。
洞窟かー。そうだね、ストルムの好物を作ってあげたいから、時空系アイテムを採集しに行こうか。
「……行きたいけど、どうやって行けばいいの?」
滝に近づこうとしたところで、ふと気づく。
洞窟があるって聞いたけど、そこまでの通路がない。飛んでいくしかないかな? でも、それだとヒスイ以外がついてこれないよ。
「あ、飛翔アイテムを使えばいっか」
ふと思い出して、アイテムボックスからニンジンケーキを取り出す。
僕の食べかけニンジンを使ったケーキで、食べると飛翔スキルを使えるようになるんだよー。短時間だけどね。
オギンとスラリン、ユキマルに渡して食べてもらい、羽が現れたのを見てから、仙桃ミルクの滝へと飛んで突撃した。
「ひゃっほーい、仙桃ミルク浴びちゃうぞー! ……って、あれ? 濡れずに通れた……」
仙桃ミルクでベチョベチョになる覚悟で突き進んだのに、何も触れることなく洞窟に辿り着いた。汚れたら、生活魔術【洗浄】でどうにかしようと思ってたのに……どういうこと?
「にゃ(あの滝、幻にゃ)」
「え、そうなの!? 滝があるって聞いてたんだけどなぁ?」
「にゃ(幻の滝はあったにゃ)」
「なるほど?」
ないけどあった、って意味がわからないけど、まぁいいや。
それより、洞窟で採集がんばろう。松明を使って明るくしたら、洞窟内のそこかしこに草っぽいものや、苔っぽいものなどが光って見えた。
白く霞んでないから見やすい。洞窟内は時空系魔力が外より濃そうなのに、時空雲が生じてないって不思議だなぁ。
首を傾げながらも、採集を開始する。
空間草に時空草、時空花、時空苔——初めて見たアイテムもあるけど、どれも時空系魔力を含んでて、アイテム作製に使えそう。ストルムが好きな時空団子もたくさん作れるぞー。
この洞窟内には警戒するべきモンスターがいないみたいで、しばらく採集しながら奥へと進んでいくと——
「……あれ、何?」
行き止まりになっているところに門扉があった。うっすらと扉が開いてる。そこから淡い光が差し込んでいた。
——————
【時空門】
時空を隔てる門
繋がっている先がどこかは、行ってみないとわからない
——————
これが時空門か。ちょっと開いてるから、時空雲が生じてたんだね。
どこかに通じてるみたいだけど、行ってみて大丈夫?
うずうずと好奇心が疼く。
危険はあるかもしれないけど、見つけたからには行ってみないと損だよね!
転移ピンをここに設定して、いつでもここに戻れるように準備した。
「むふふ……冒険に出発するよー!」
どんな場所が待ってるのかな♪
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