もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

355.バトル開始だー

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 船にいるプレイヤー全員がバトル準備を整えた後、待っていたアナウンスが聞こえてきた。

〈海上レイドイベント【航海を阻む巨大モンスター討伐】が開始しました。モンスター暴走鯱バイオレンシャチの討伐が成功するとイベントクリアになります。船の損傷の程度や個人活躍度により、レイドイベント後の報酬が決定します〉

 暴走鯱バイオレンシャチを囲むように五隻の船が海上で並ぶ。
 魔術などの遠距離攻撃が届くギリギリまで離れているのに、暴走鯱バイオレンシャチは圧迫感を覚えるほど大きかった。まさしく島だ。

「ほぇ……大きいねぇ」
「お前のドラゴンもデカいぞ」
「確かに。でも、ストルムより暴走鯱バイオレンシャチの方が大きいよ」

 船の上を飛んでいるストルムと暴走鯱バイオレンシャチを見比べて、密かに『怪獣対決だぁ』と思ってワクワクした。
 暴走鯱バイオレンシャチから見たら、僕なんて蟻くらいのサイズだろう。

「グォオオッ!」
「うわっ、鳴き声も大きい!」

 まるで雷鳴のようなビリビリと空気が震えるような鳴き声に、ビクッと体が震えちゃった。
 耳を押さえる暇もなかったから、頭がぐわーんってするよぉ。ちょっぴり泣きそうになっちゃう。

 ルトたちは顔を顰めながらも大して気にした素振りを見せない。いいなぁ。こういう時、聴覚がいい種族って損だよね。

 僕がぬぉーっと鳴き声にやられてる間に、暴走鯱バイオレンシャチは大きな尾びれで巨大な波を起こした。船が大きく揺れる。
 うわっ、転がっちゃいそう。甲板から落ちたらヤダー!

「まずはバフとデバフですよー」

 タマモが声を張り上げる。
 すると、揺れる船に耐えたプレイヤーたちが、一気に行動を開始した。
 バフやデバフを掛けたり、魔術などの攻撃を放ったりと、暴走鯱バイオレンシャチに数多の光や矢が乱れ飛ぶ。僕もがんばらなくちゃ。

「ユキマル、謎光線ミステリレイをお願い。スラリンたちはちょっと待っててね」

 指示を出して、ユキマルがスキルを放つのを見ながら、まずは歌唱スキルを使って、意気高揚と回復効果のアップを行う。
 続いて、種族固有スキルの天の祈りアンジュプレ天からの祝福アンジュブレスを使用。覚えてから使ってないスキルも使ってみよう。

「【天の断罪アンジュジャッジ】!」

 これは敵一体に罪ある者の烙印を押して、五分間防御力と光属性耐性を50%下げる効果がある種族固有スキルだ。

 スキル名を唱えた途端、簡易的な羽のような形をした光が暴走鯱バイオレンシャチへと放たれ、ちょうど正面にあった暴走鯱バイオレンシャチの額あたりにぶつかった。

 パァッと溢れた光が、暴走鯱バイオレンシャチの額に『天罰』という字を浮かび上がらせる。無事に発動できたようだ。

「きゃああ! これが噂の神スキル! 神々しい!」

 タマモが歓声を上げると、なぜか静まり返っていた船上が爆発的な盛り上がりを見せた。みんな「さすモモー!」「もふもふ神さまの威光が眩しいッ」などと言って楽しそうだ。
 僕を拝んでる人もいるから、ちょっと引いちゃう。

「防御力半減してるから、今の内にたくさん攻撃しちゃってよ」
「そうでしたね! みなさん、最大威力の攻撃を!」

 ハッとした表情で、タマモが指示を出す。
 いつの間にタマモが指揮官になったんだろう? 気になるけど、まぁ誰かが指揮した方が統制がとれていいもんねー、と納得する。
 そんなことより、僕も攻撃の準備をしよう。まずはストルムだな。

 プレイヤーたちが再び魔術や矢などの攻撃アイテムを放っているのを見てから、上空を見上げる。ストルムは僕の指示を待つように、悠然と空に浮かんでいた。

「ストルムー、まずは暴走鯱バイオレンシャチ竜息吹ドラゴンブレスやっちゃってー!」
『わかったー』

 のんびりとした返事から一拍置いて、ストルムが口を開くと、そこに光が集い始めた。その光は次第に大きくなり、まるで二つ目の太陽が生まれたかのように僕たちを煌々と照らす。

 ……なんか、めちゃくちゃ凄いことが起きる予感がしてるのは僕だけかな?
 ゾゾッと背筋が冷えて、反射的にフラグ可視化のスキルを使う——暴走鯱バイオレンシャチの近くで巨大なフラグがぴょんぴょんしてるー。えらいこっちゃ~。

『【竜息吹ドラゴンブレス】』

 竜巻のような風の渦をまとった光が暴走鯱バイオレンシャチに放たれた。

「グォオオオッ!?」

 暴走鯱バイオレンシャチの悲鳴のような鳴き声が響く。
 同時に、海がうねり、船が大きく揺れた。暴走鯱バイオレンシャチの近くで明滅するフラグに向かって、僕はすぐさま風の刃ウィンドスラッシュを放つ。

 ——船を転覆させそうになるほどの波が静まっていった。フラグ折り成功だ。

「……あ、れ……? 凄い波が来そうだったんですけど……?」

 タマモが不思議そうに呟く声が聞こえた。
 そういえば、フラグ折りが攻撃の副作用の雪崩や津波とかをキャンセルできるって、教えたことなかったかも? 今はバトルで忙しいから、覚えてたら後で説明しよーっと。

「ストルム、最高だよ! カッコいい!」
『当然だよ』

 ストルムはそう答えながらも嬉しそうに羽ばたいた。
 固まっていたプレイヤーたちがドッと歓声を上げる。まだ討伐が成功してないのに大興奮で攻撃を忘れてるよ。

「皆さん、攻撃を続けましょう!」

 いち早く正気に戻ったタマモの指示が飛び、再び全員の攻撃が再開する。

「やっぱ過剰戦力じゃね……?」

 ルトの小さな呟きがなぜか大きく聞こえた。
 正直僕も、ドラゴンの攻撃ハンパないなぁ、って思ってたから、全力で頷きたい。

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