ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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1-1.もふもふダンジョンの作り方〈公開前1日目〉

11.〈リルくん〉ダンジョン作ります!

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 時間はマスターリュウセイリルを五階層に残して最奥に戻った頃に遡る。

 僕は初めて本格的にするダンジョン作成を前に、気合いを入れていた。
 マスターに任せてもらったんだから、凄いと言ってもらえるものを作りたい!

『よーし、僕のダンジョンメイキング、はっじまるよー♪』

 僕は歌うように宣言し、すぐさま能力を発動した。

 ダンジョン作成能力って、神狼フェンリル本来の能力とは使う感覚が違ってて、結構面白い。

 マスターは〈タブレット端末〉というのを使って作業してるようだけど、僕は脳内で全てをこなせる。〈脳のスペック〉の違いで、僕は作業用媒体を必要としないんだ。

 ちなみに〈脳のスペック〉という言葉の意味はよくわからない。マスターなら理解できるんだろうけど、聞いたらなんとなく不機嫌にさせちゃう気がするから内緒ー。

『ダンジョンといえばトラップだよねー』

 魔物や宝物を用意するのは大切だけど、侵入者に攻略されるのを阻むには、トラップを仕込むのがいいと思うんだ。

 僕はどんな魔物でも迷路でも、時間を掛ければ突破できる気がするけど、細かいトラップとか、そもそも進むのが困難なフィールドは、好んで突破したいとは思わないから。めんどくさいの嫌だもん。

 それに加えて、怖いと思ってもらえれば完璧!

『怖いトラップといえばー』

 実はどんなものを作るかは最初から決めてた。マスターの知識を探ったところで、これだって思うのがあったんだよね。

 マスターが怖がってるトラップみたい。僕はいまいち効果を理解できないんだけど。

 でも、僕はマスターの感覚を信じるよ。

『——ハニートラップ、略してハニトラ!』

 なんでわざわざ略すんだろ? よくわかんないけど、マスターの世界では〈ハニトラ〉と略す言い方がよくされるらしい。

『ハニハニ、ハニトラ、甘い罠~♪』

 即興で歌を作りながら、サクッとDPを支払って、三階層を変える。
 空間を広くして、円柱状の塔をいくつも用意した。

 その後、蜂蜜の調達に取り掛かる。

 食材として蜂蜜を交換できるのはわかってたけど、量に対して支払うDP数が大きすぎたから却下。
 ちょっとの蜂蜜じゃ、大したトラップにはならないもんね。

 階層を埋め尽くすくらいの蜂蜜がほしいから、熊蜂ベアビーの魔物召喚陣を設置した。

 熊蜂ベアビーは子熊に蜂の羽と針をつけたような見た目。もふもふしてて、案外可愛い。

 次々に生まれた熊蜂ベアビーは、塔に巣を作る。そして、しばらくするとその巣から蜂蜜が滴り落ちていった。

 熊蜂ベアビーの数が増え、巣が巨大になるにつれて、蜂蜜は滝のように溢れ、床を流れていく。

 普通はこんな超スピードで作られないんだけど、それはDPで補助したよ。蜂蜜生成速度をアップさせたんだ。

『ハニハニ、ハニトラ、蜜の海~♪』

 溢れた蜂蜜が塔の外まで流れていく。
 どんどんと塔の一階、二階の高さを超えて蜂蜜が満ち、フィールド全体が蜂蜜の海のようになった。
 塔が蜂蜜の海にある島のように見える。

『蜂蜜生成、一旦停止~』

 指示を出した後、熊蜂ベアビーには戦闘訓練をさせる。そのために、槍や剣を与えた。

 マスターの知識には〈ジエイタイ自衛隊〉というものがあった。マスターの世界では、普通の人は戦う能力を持ってなくても、訓練次第で誰かを守るために戦えるようになるんだって。

 それなら、戦闘能力が高くないと言われる熊蜂ベアビーだって、訓練で強くなれる可能性があるってことでしょ?

 大いにがんばってもらわなきゃ!
 熊蜂ベアビーも僕からの期待を感じて、やる気十分みたいだ。素振りや対戦をして、経験を積んでる。

『いいね、いいねー。その調子でがんばれー』

 熊蜂ベアビーが訓練してる間に、ダンジョンにさらに工夫を加える。

 宝箱を置くのは、蜂蜜の海の底。
 かろうじて上から姿が見えるから、宝箱がほしい人間はがんばって潜るはず。水の中を泳ぐより大変だけどねー。

 さらに、次の階層に繋がる転移魔法陣を蜂蜜に沈んだ塔の下部に設置した。
 蜂蜜を潜って、塔を一個ずつ探さないと見つけられないんだよ。

『んー、蜂蜜が凍ったり、焦げて固まったりしたら困るなぁ』

 魔法を使える侵入者なら、そんなことをしてもおかしくない。
 固体化した蜂蜜は、切って取り除かれちゃうかも。

『蜂蜜は随時増産させるから、少しくらい被害が出ても大丈夫だろうけど……』

 フィールド内で魔法を使えないように設定をするのは、DP消費量が多すぎる。
 魔法攻撃に対処できる魔物が必要かな。

魔盾兵マギシルジャーにしよう』

 この魔物は、魔法を反射する能力【マギシールド】を使えるんだ。見た目は甲冑を着た小人っぽい感じ。
 あまり機動力がないけど、熊蜂ベアビーに騎乗させれば大丈夫なはず。

 十体召喚して、熊蜂ベアビーと訓練させることにした。
 減ることがあったら、随時補充すればいい。

『うん、いい感じ!』

 進行を妨げる仕組みは完成したので、あとは攻撃手段を充実させないと。
 飛べる魔物がいいね。蜂蜜の海は魔物でも移動しにくい。

『鳥かなー。コウモリかなー。……どっちも用意しちゃえ!』

 DPはまだ余裕があるので、あっさりと決めた。

 追加で、塔に植物系の魔物も配置する。この魔物は蔦を伸ばして、蜂蜜の中で動きにくい侵入者を拘束してくれるはず。空中の敵も蜂蜜の海に叩き落とすことができそう。

 三階層が随分と充実してきた。
 一旦マスターに見せて、感想を聞いてみよう!
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