ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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1-4.もふもふダンジョン公開!

37.これで解決!

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 朝が近づいた頃、男たちは目覚めそうになった瞬間に、操人形マリオネに『うぉりゃりゃりゃりゃー!』と連続パンチされて、再び意識を失った。

 ……怖っ!? 俺、そこまでしろって言ってないんだけど?

 念の為「それ、生きてるか……?」と聞いてみる。

『もちろん、生きてますよー』

 のほほんとした操人形マリオネの返事に、頬が僅かに引き攣る。
 命以外、何も考慮されてない気がするのは俺だけか?

 俺がまた眠らせたらいい、と指示を出した時に、操人形マリオネが嬉しそうだったのは、男たちを攻撃できるからだったのかも。
 見た目が人間にしか見えなくても、魔物だから戦いに飢えてるのかな。

 ソッとリルを見る。
 きょとんとしたつぶらな目に見つめ返された。

 うん、リルは戦闘狂じゃない。平気な顔でドラゴンを狩ってくることもあるけど。

『あ』

 しばらくのんびりしていた操人形マリオネが、不意に声を漏らして、小道の先を見る。
 何かが近づいてきてるような?

「村人か? 早いなぁ」

 辺りは明るくなってきている。
 結局、夜の間は盗賊に堕ちた冒険者二人しか来なかった。

 村人なら農作業などで早起きすることもあるだろうけど、それにしても今の時間に村の外に出るのは早すぎる気がする。

『そうですねー。おそらく、金庫が荒らされているのに気づいて、マーレの港街の警備隊に相談しに行くつもりかと。夜の間に盗まれたなら、犯人は港街に潜んでいる可能性が高いですから』
「なるほど。捕まえるなら、行動は早い方がいいもんな。冬支度の支援をお願いするためにも」

 操人形マリオネの解説に、俺はうんうん、と頷く。

 俺の背もたれになっていたリルが、あまり関心なさそうに『へぇ』とこぼした。
 なかなかダンジョンに来る人がいなくて、退屈そうだ。

『どんな感じかにゃー』

 ミーシャがやって来た。
 ひょい、と俺の横に顔を出して、ゴロゴロと喉を鳴らしながらすり寄ってくる。可愛い。

「お客さんが二人来たけど、すぐ帰ったよ」
『それはよいことにゃ?』
「んー、ビミョー」

 苦笑いしながらミーシャの頭を撫で、改めて操人形マリオネの視界に集中する。

 村の方からやって来た人影は男二人で、荷馬車に乗っているようだ。
 深刻そうな表情だったけど、操人形マリオネが小道沿いで手を振っているのに気づくと、怪訝そうな顔に変わった。

『どうもー、おはようございます』
[ああ、おはよう。あんたは冒険者のようだが、ここで何を?]

 操人形マリオネが声をかけると、男たちは荷馬車を止め、僅かに警戒した様子で問いかける。

『いやー、依頼でこっちに来てたんですけど、港街に帰り着く前に夜になっちゃったんですよ。そしたら、ここにダンジョンができてるのに気づいて。死に戻り地点が魔物を防ぐようになってたんで、ここで夜を明かした方が安全かな、と』
[ダンジョン!? ……その赤い門が、それか]
『ですねー』

 男たちもダンジョン門に気づいたようだ。
 しばらく何事かを二人で相談していたけど、男たちは操人形マリオネを信用することにしたらしい。そいつ、ダンジョンの魔物ですけどね。

[ダンジョンの問題は、冒険者のあんたから、港街のギルドに報告を頼んでいいか?]
『もちろんですよー。冒険者の義務ですから』

 頷いた操人形マリオネに、男たちも当然と言いたげに表情を変えない。
 新ダンジョンの報告は冒険者にとっても利点があることのようだしな。

[ちょっと違うことを聞きたいんだが……夜の間、ここを盗人らしき者が通らなかったか?]
[俺たちは向こうにある村の者なんだが、夜の間に村の金が盗まれてたんだよ]

 怒りの滲んだ声だった。
 操人形マリオネは一拍おいてから、スッと背後を指さす。

『ああいう男たちのことですか?』
[はっ?]

 ぎょっとした様子で、村人たちが指された方に視線を向けた。そして、ポカンと口を開く。

[……あいつらは、なんであんなとこで寝てんだ?]
『おそらくダンジョンに挑んで死に戻りしたんでしょう』
[……腹の上に布袋が置いてあるのはなんでだ?]
『夜に外で寝て体調を崩さないか気になって、野営道具を持ってないか探ったら、なんか見た目に合わない大金を持ってたんで……』

 村人たちの表情が険しくなった。
 睨むような眼差しで倒れている男たちに近づき、布袋の中身を確認する。

[……俺たちの金庫から盗まれた金と同額だ。ほら、村の土地の権利書まである]
[クッソ……コノヤロッ!]

 村人がアッキーを蹴った。そっちは革鎧がなくなってたから、結構ガッツリと攻撃が入った気がする。

 わりと俺の想定通りに状況が進んでいるのでは? 村に金が戻ってよかったなー。

 リルとミーシャの頭を撫で、癒やされながら俺はほのほのと微笑む。

[……こいつらの処遇は、俺たちに任せてくれるか?]
『いいですよー。冒険者には関係のないことなんで。あ、荷馬車に載せるの手伝います』
[ありがとな]

 操人形マリオネがアッキーたちを縄でぐるぐる巻きにした後、ひょいひょいと荷馬車に載せる。
 村人たちは操人形マリオネの見た目にそぐわない力持ち加減に驚いた顔をした後、[冒険者ってすげぇな]と感心した様子で呟いた。

 何度でも言うけど、そいつ魔物なので。見た目通りの力しか持たないと侮ると、痛い目を見るよ。まぁ、ダンジョンに牙を剥くような相手じゃなきゃ、そんなことは起きないけど。

[あんたのおかげで助かったよ。この礼はいずれ]
『いえー。俺は教えただけですから。それにしても、ここのダンジョンが知れ渡ると、村の方も賑わうかもしれませんね。大丈夫そうですかー?』
[死なないダンジョンなんだろ? それならありがたいもんさ]

 ハハッと笑って手を振り、村人たちは村に帰っていく。
 操人形マリオネは手を振り返しながら彼らを見送った。

『……ですってー』
「歓迎してもらえるならありがたいな」

 このダンジョンに最も近い人里は、先ほどの村人たちが暮らす村だ。港街も遠くないとはいえ、ダンジョン攻略を考える冒険者たちは、より近い村に滞在することを望む者が多いはず。

 おそらく冒険者たちで賑わう村には多額の金が落ちると同時に、治安の問題が発生するだろう。

 実際にどんな未来が待っているかはわからないけど、ご近所さんだし、できる限り良好な関係を築きたいなぁ。

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