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2-1.魔物ですから
46.鑑賞会の結末は……
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リーダーの大剣使いファイとスカウトの短剣使いカイトを先頭に、〈栄光のファイター〉は八階層を進んでいた。
二階層から出てすぐは、木々が密集した密林だ。枝葉が日の光を遮り、薄暗くて視界が悪いため、用心深く歩いている。
[ファイ、ここ、随分と獣のニオイがする気が……]
[同感だ。さっきまでの階層とまるで違う。かといって、蜂蜜の海のようなデタラメな環境でもないんだよな……やっぱりここのダンジョンマスターは変だな]
カイトの言葉に頷いたファイが、険しい表情で言った。
遺憾の意。変と言われる原因の大半は俺じゃないはずだからー! これを教えられないのが悔しい。こうやって誤解っていうのは広まっていくんだな。
ジトッとモニターを見据えていたら、男たちの様子が少し変わったのがわかった。
[ん? 野狼だ]
カイトの言葉で〈栄光のファイター〉が一気に戦闘態勢をとる。
『おっとー、ここで最初の魔物を発見! 現れたのは野狼三体! この階層のために配置された草原狼の下位種ですが、彼らは一体どう戦うのでしょうか!?』
インクの実況のすぐ後に、戦闘が始まった。
先制はファイ。そのカバーをカイトと魔法使いのモニスが行う。ヒーラーのラナドは回復魔法の準備をしながら、周囲の警戒をしているようだ。
予想していたより、ちゃんとした連携ができる冒険者たちだった。
たぶん、インクの紹介がふざけすぎてたんだと思う。
『ファイが野狼に大剣を振り下ろす! ――避けられたぁ! カイトとモニスが他の二体を牽制! ファイが再び大剣を振り下ろす! ――避けられたぁ!』
避けられすぎじゃね?
見直したところでこれはひどい……
呆然とモニターを眺める俺の傍では、リルとミーシャが『あはははー!』『にゃはは!』と笑っていた。
その笑い声を聞いていたら、なんだか俺も楽しくなってきたぞ。
緩む頬をそのままに、ポテトチップスをつまみ、コーラを飲む。ポテチとコーラ、最強の組み合わせだよな。
[素早さが予想以上です! 撤退しますか!?]
[こんな初っ端で逃げ帰れるかっ! モニス、足止めしろ!]
[っ、はい!]
モニスの提案を拒否したファイが、足止めを要求する。魔法使いができる魔物の足止めってなんだろう?
[――ウッディトラップ!]
『おっとぉ! ここで、モニスが木魔法を使ったぁ! これはダンジョン内で初使用の魔法ですね! 地面から生えたツルが野狼に絡みつくっ! 土があるフィールド限定で使用できる魔法のようです!』
インクが一人で掛け合い実況をしてる気がする。楽しそうでなにより。
それにしても、モニスって結構多芸なのかな? 正直、今の段階ではファイやカイトより役に立ってるぞ。
[よくやった! ――斬撃!]
『ファイがようやく野狼に一撃を入れたっ! しかもスキルで攻撃力をアップさせるという容赦ない剣撃! 野狼は拘束を逃れて、体勢を整えるっ!』
「いや、倒しきれなかったのかよ……」
スキルまで使った斬撃でも、拘束されてほぼ無抵抗の野狼を倒せないって……大剣の意味ある?
[俺が決める!]
『カイトが飛び出しましたっ! 手負いの野狼に迫り、短剣で乱れ突き! これは強力な攻撃です! ――憐れ、野狼、次の魔物生では生き残れることを祈ります……』
野狼が一体倒された。
インクは悲痛な表情を作ってるけど、野狼は死に戻りして一日経ったら再度配置されるよう設定してるから、あまり感傷的になる必要はないと思う。
[ウッディトラップ!]
『モニスが再び木魔法を使いました! 襲ってこようとしていた野狼を拘束! もう一体はカイトに迫るっ――ファイが一撃を入れたぁ!』
お、ようやく拘束されてない状態の野狼にも、ファイが攻撃を入れられたらしい。またしても、一撃で倒すことはできなかったようだけど。
[カイトは右から! 俺は左から行く!]
[了解!]
『ファイとカイトが一体の野狼を同時に攻撃するようです! ――野狼、前方に跳んで回避! しかも、そこにはモニスとラナドの姿が! 驚き固まる二人に野狼が迫るっ』
結構緊迫の展開!
ここからどうする!? ――なんか、インクの実況のテンションにのせられてる気がする。自重しよう。
[くっそぉ! 後衛を狙うなんて、卑怯者っ]
[させないぞー!]
『ファイが魔物を卑怯と詰る! まぁ、それが魔物というものですからー……なんて解説している間に、カイトと共に野狼に追いつきました! 火事場の馬鹿力が発揮されたようです。そして、野狼にそれぞれ一撃を与えたぁ! ――野狼一体、脱・落……!』
インク、野狼に対しての憐れみがなくなってない? めっちゃ軽い感じで脱落って言ってたぞ。
『残るはあと一体! さて、栄光のファイターはどう戦うのでしょうか!?』
俺やリルたちも固唾をのんで見守る。
結構拮抗した戦いだから見応えがあった。
[ふっ、拘束した野狼なんて、もう俺たちの敵じゃねぇな!]
[よっしゃー、張り切って仕留めよう!]
ファイに続いてカイトが気合いを入れながら残りの野狼へと駆ける。
『もはや野狼の命運は決まってしまったのでしょうか……――あれ?』
不意にインクのテンションが落ちた。
俺たちも、モニターに目が釘付けになる。
今、モニスとラナドの姿が一瞬で消えたような……?
『あー……ここで影兎乱入のお知らせです……』
ズーン、と沈んだ口調でインクが言う。
なるほど、影兎たちが戦闘の気配を感じて、順番を待てずに飛び出したんだな……これ、もう結末がわかったも同然では?
俺がそう思った次の瞬間には、野狼に迫っていたファイとカイトの姿も消えた。死に戻りしたのだ。
『……突然ですが、実況を終了いたします。結果は影兎の完勝でした。ご視聴ありがとうございました』
インクがガックリと肩を落として宣言した。
せっかく楽しそうだったのになぁ。つくづく、インクは影兎と相性が悪い気がする。ある意味最高にいいのかもしれないけど。
「うん、まぁ、楽しい実況だったよ。ありがとう」
とりあえずインクを慰めてみた。
ぜひ次回もお願いしたい。なんだかんだ楽しかったし。
俺のそんな思いが伝わったのか、しょんぼりとしていたインクが少し嬉しそうに『どうもー』と応えた。
二階層から出てすぐは、木々が密集した密林だ。枝葉が日の光を遮り、薄暗くて視界が悪いため、用心深く歩いている。
[ファイ、ここ、随分と獣のニオイがする気が……]
[同感だ。さっきまでの階層とまるで違う。かといって、蜂蜜の海のようなデタラメな環境でもないんだよな……やっぱりここのダンジョンマスターは変だな]
カイトの言葉に頷いたファイが、険しい表情で言った。
遺憾の意。変と言われる原因の大半は俺じゃないはずだからー! これを教えられないのが悔しい。こうやって誤解っていうのは広まっていくんだな。
ジトッとモニターを見据えていたら、男たちの様子が少し変わったのがわかった。
[ん? 野狼だ]
カイトの言葉で〈栄光のファイター〉が一気に戦闘態勢をとる。
『おっとー、ここで最初の魔物を発見! 現れたのは野狼三体! この階層のために配置された草原狼の下位種ですが、彼らは一体どう戦うのでしょうか!?』
インクの実況のすぐ後に、戦闘が始まった。
先制はファイ。そのカバーをカイトと魔法使いのモニスが行う。ヒーラーのラナドは回復魔法の準備をしながら、周囲の警戒をしているようだ。
予想していたより、ちゃんとした連携ができる冒険者たちだった。
たぶん、インクの紹介がふざけすぎてたんだと思う。
『ファイが野狼に大剣を振り下ろす! ――避けられたぁ! カイトとモニスが他の二体を牽制! ファイが再び大剣を振り下ろす! ――避けられたぁ!』
避けられすぎじゃね?
見直したところでこれはひどい……
呆然とモニターを眺める俺の傍では、リルとミーシャが『あはははー!』『にゃはは!』と笑っていた。
その笑い声を聞いていたら、なんだか俺も楽しくなってきたぞ。
緩む頬をそのままに、ポテトチップスをつまみ、コーラを飲む。ポテチとコーラ、最強の組み合わせだよな。
[素早さが予想以上です! 撤退しますか!?]
[こんな初っ端で逃げ帰れるかっ! モニス、足止めしろ!]
[っ、はい!]
モニスの提案を拒否したファイが、足止めを要求する。魔法使いができる魔物の足止めってなんだろう?
[――ウッディトラップ!]
『おっとぉ! ここで、モニスが木魔法を使ったぁ! これはダンジョン内で初使用の魔法ですね! 地面から生えたツルが野狼に絡みつくっ! 土があるフィールド限定で使用できる魔法のようです!』
インクが一人で掛け合い実況をしてる気がする。楽しそうでなにより。
それにしても、モニスって結構多芸なのかな? 正直、今の段階ではファイやカイトより役に立ってるぞ。
[よくやった! ――斬撃!]
『ファイがようやく野狼に一撃を入れたっ! しかもスキルで攻撃力をアップさせるという容赦ない剣撃! 野狼は拘束を逃れて、体勢を整えるっ!』
「いや、倒しきれなかったのかよ……」
スキルまで使った斬撃でも、拘束されてほぼ無抵抗の野狼を倒せないって……大剣の意味ある?
[俺が決める!]
『カイトが飛び出しましたっ! 手負いの野狼に迫り、短剣で乱れ突き! これは強力な攻撃です! ――憐れ、野狼、次の魔物生では生き残れることを祈ります……』
野狼が一体倒された。
インクは悲痛な表情を作ってるけど、野狼は死に戻りして一日経ったら再度配置されるよう設定してるから、あまり感傷的になる必要はないと思う。
[ウッディトラップ!]
『モニスが再び木魔法を使いました! 襲ってこようとしていた野狼を拘束! もう一体はカイトに迫るっ――ファイが一撃を入れたぁ!』
お、ようやく拘束されてない状態の野狼にも、ファイが攻撃を入れられたらしい。またしても、一撃で倒すことはできなかったようだけど。
[カイトは右から! 俺は左から行く!]
[了解!]
『ファイとカイトが一体の野狼を同時に攻撃するようです! ――野狼、前方に跳んで回避! しかも、そこにはモニスとラナドの姿が! 驚き固まる二人に野狼が迫るっ』
結構緊迫の展開!
ここからどうする!? ――なんか、インクの実況のテンションにのせられてる気がする。自重しよう。
[くっそぉ! 後衛を狙うなんて、卑怯者っ]
[させないぞー!]
『ファイが魔物を卑怯と詰る! まぁ、それが魔物というものですからー……なんて解説している間に、カイトと共に野狼に追いつきました! 火事場の馬鹿力が発揮されたようです。そして、野狼にそれぞれ一撃を与えたぁ! ――野狼一体、脱・落……!』
インク、野狼に対しての憐れみがなくなってない? めっちゃ軽い感じで脱落って言ってたぞ。
『残るはあと一体! さて、栄光のファイターはどう戦うのでしょうか!?』
俺やリルたちも固唾をのんで見守る。
結構拮抗した戦いだから見応えがあった。
[ふっ、拘束した野狼なんて、もう俺たちの敵じゃねぇな!]
[よっしゃー、張り切って仕留めよう!]
ファイに続いてカイトが気合いを入れながら残りの野狼へと駆ける。
『もはや野狼の命運は決まってしまったのでしょうか……――あれ?』
不意にインクのテンションが落ちた。
俺たちも、モニターに目が釘付けになる。
今、モニスとラナドの姿が一瞬で消えたような……?
『あー……ここで影兎乱入のお知らせです……』
ズーン、と沈んだ口調でインクが言う。
なるほど、影兎たちが戦闘の気配を感じて、順番を待てずに飛び出したんだな……これ、もう結末がわかったも同然では?
俺がそう思った次の瞬間には、野狼に迫っていたファイとカイトの姿も消えた。死に戻りしたのだ。
『……突然ですが、実況を終了いたします。結果は影兎の完勝でした。ご視聴ありがとうございました』
インクがガックリと肩を落として宣言した。
せっかく楽しそうだったのになぁ。つくづく、インクは影兎と相性が悪い気がする。ある意味最高にいいのかもしれないけど。
「うん、まぁ、楽しい実況だったよ。ありがとう」
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