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2-2.外との関わりを深めよう
54.異世界料理の調査完了
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様々な屋台を巡った結果、この世界の食事情への理解が深まった。
基本的な調味料は塩。そして、ハーブ類は結構豊富にある。ハーブを料理に入れるのは、食中毒を防ぐという理由もあるらしい。
そして、料理を甘くするという考えはあまり一般的ではない。そもそも甘味料のほとんどが希少で高価だからだ。
でも、甘いものが受け入れられていないわけではない。むしろ、大変好まれている。贅沢品として憧れを感じている人が多いらしい。
「うーん、ハーブでの味付けも美味いけど、こればっかりだと飽きそうだな」
適当な屋台で購入した魚の煮物――アクアパッツァに似た料理――を食べながら俺は呟いた。
『でしょー。ようやくダンジョンの料理の美味さが異常だって理解してもらえました?』
「したした。もうちょっと事前調査すべきだったって、反省したよ。でも、準備期間三日だったし、仕方ないよなー」
冒険者や商人たちが、ダンジョンに料理や調味料を求めてくる理由を痛切した。
誰だって美味い飯を食いたいもんな。人間の三大欲求の一つは食欲だぞ。死ぬまでにどんだけの飯を食うかって考えたら、その重要度の高さは必然だ。
死なないダンジョンなんだし、挑戦する価値は十二分にあるってもんだろう。
「まぁ、こうやって街を巡って、店で出す料理の方向性が定まったのはいいことだな」
『どういうのにするんです?』
「魚介類を使った和食だ。これまでダンジョンの宝箱からは魚介類の料理はあんまり出してなかったから、被って怪しまれることもないだろ」
うんうん、と頷きながら言う。
宝箱から出てきた料理の味付けを参考に、それで魚介類の料理を考案した、ということにすれば、狼族獣人たちとダンジョンの繋がりを悟られることはないはずだ。
『ワショクがどういうものかわかりませんけど、マスターが言うなら絶対美味いやつですね。楽しみです!』
周囲に人の姿がないからと、俺を『マスター』と呼ぶ操人形をジトッと見る。『大丈夫ですよー』とお気楽に言う操人形に嘆息することになったけど。
俺もうっかりダンジョンの話をしてしまったから気をつけなくては。誰がどこで聞いているか、俺の能力では察知できないし。
ダンジョンマスターが街中を散策してるなんて知られたら、冒険者に襲われかねない。偽りの体とはいえ、殺されるのはイヤだ。
「……外国との交易品は面白いものがたくさんあったな」
話題を変えながら、購入した笛を見下ろす。
青い宝石のようなものでできたオカリナのようなそれは、ドワーフの国と言われるドーン国から輸入されたものらしい。吹くと綺麗な音がする。
あいにくと俺は楽器演奏の素養がないので、まともな曲は吹けないんだけど、鳴らしているだけでなんとなくいい気分になれるのだ。
リルも気に入ってくれるんじゃないかな。
『そうですねぇ。魔導具もいろいろ並んでましたし』
「だな。戦闘で役立ちそうなものは、目が飛び出るほど高かったけど」
魔法金属を使った剣なんて、どんだけ魔物を倒したら手に入れられるのかわからないくらい高かった。
一方で、生活用の魔導具――着火や給水などの機能がある――は一般人でも買えそうなものも多くあった。技術のバランスが偏ってる気がする。
「――普通、魔物の脅威があったら、戦闘用の技術を高めるもんじゃないのか……?」
生活を便利にする道具は大切だ。でも、それ以上に命を守るための道具が重要だと思うんだけど。
俺が首を傾げていると、操人形が苦笑しながら口を開いた。
『戦闘用の道具は、戦争に使われかねないってことで、各国が協調して開発を制限してるらしいですよー』
「は?」
『昔に起きた戦争で、いろんな国が滅びかねないほどの被害が出たそうで……その予防策ですね』
「……そういう考え方もあるのか」
地球での戦いのいろいろを知っている身としては、『各国が武器の製造を制限する』という状態で世界の安定が保てるのは奇跡だと思う。
普通に考えて、どこかがこっそり開発を進めて、他国を武力で侵略しようとするもんだろ。この世界の人ってそういう裏切りとかの考えがないのか?
なんというか、この国の人がおおらかと言われて、その状態のまま国が安定している理由がわかった気がする。
この国というか、世界的におおらかで善性が高めなんだな。
まぁ、村の冬越し用の金を盗むような悪人もいるけど!
『なんかまずいことが起きれば、勇者がどうにかしてくれるって考えてますしね』
「人任せかよ。つーか、ここで出てくるのか、勇者……」
マーレは勇者を擁する神殿の権力外ではあるけど、勇者がいるから世界は平和という考えはそれなりに広まっているらしい。どういうことだよ。
『それだけ、歴史的に勇者が人類のために功績を積み上げてきたってことでしょうね』
ケッと吐き捨てる感じに言う操人形は、しっかりと魔物だった。
随分と人間らしくなったと思っていたけど、ダンジョンの仲間であることを再認識できてちょっと嬉しい。俺たちにとっては、勇者は敵になる可能性が高いもんな。
「ま、勇者に会うことなんてないはずだし、気にしないでおこう」
操人形を宥めるために言ってから思ったけど、これ、フラグになってないよな? そういうフラグはへし折る主義なので、フラグはご遠慮ください!
基本的な調味料は塩。そして、ハーブ類は結構豊富にある。ハーブを料理に入れるのは、食中毒を防ぐという理由もあるらしい。
そして、料理を甘くするという考えはあまり一般的ではない。そもそも甘味料のほとんどが希少で高価だからだ。
でも、甘いものが受け入れられていないわけではない。むしろ、大変好まれている。贅沢品として憧れを感じている人が多いらしい。
「うーん、ハーブでの味付けも美味いけど、こればっかりだと飽きそうだな」
適当な屋台で購入した魚の煮物――アクアパッツァに似た料理――を食べながら俺は呟いた。
『でしょー。ようやくダンジョンの料理の美味さが異常だって理解してもらえました?』
「したした。もうちょっと事前調査すべきだったって、反省したよ。でも、準備期間三日だったし、仕方ないよなー」
冒険者や商人たちが、ダンジョンに料理や調味料を求めてくる理由を痛切した。
誰だって美味い飯を食いたいもんな。人間の三大欲求の一つは食欲だぞ。死ぬまでにどんだけの飯を食うかって考えたら、その重要度の高さは必然だ。
死なないダンジョンなんだし、挑戦する価値は十二分にあるってもんだろう。
「まぁ、こうやって街を巡って、店で出す料理の方向性が定まったのはいいことだな」
『どういうのにするんです?』
「魚介類を使った和食だ。これまでダンジョンの宝箱からは魚介類の料理はあんまり出してなかったから、被って怪しまれることもないだろ」
うんうん、と頷きながら言う。
宝箱から出てきた料理の味付けを参考に、それで魚介類の料理を考案した、ということにすれば、狼族獣人たちとダンジョンの繋がりを悟られることはないはずだ。
『ワショクがどういうものかわかりませんけど、マスターが言うなら絶対美味いやつですね。楽しみです!』
周囲に人の姿がないからと、俺を『マスター』と呼ぶ操人形をジトッと見る。『大丈夫ですよー』とお気楽に言う操人形に嘆息することになったけど。
俺もうっかりダンジョンの話をしてしまったから気をつけなくては。誰がどこで聞いているか、俺の能力では察知できないし。
ダンジョンマスターが街中を散策してるなんて知られたら、冒険者に襲われかねない。偽りの体とはいえ、殺されるのはイヤだ。
「……外国との交易品は面白いものがたくさんあったな」
話題を変えながら、購入した笛を見下ろす。
青い宝石のようなものでできたオカリナのようなそれは、ドワーフの国と言われるドーン国から輸入されたものらしい。吹くと綺麗な音がする。
あいにくと俺は楽器演奏の素養がないので、まともな曲は吹けないんだけど、鳴らしているだけでなんとなくいい気分になれるのだ。
リルも気に入ってくれるんじゃないかな。
『そうですねぇ。魔導具もいろいろ並んでましたし』
「だな。戦闘で役立ちそうなものは、目が飛び出るほど高かったけど」
魔法金属を使った剣なんて、どんだけ魔物を倒したら手に入れられるのかわからないくらい高かった。
一方で、生活用の魔導具――着火や給水などの機能がある――は一般人でも買えそうなものも多くあった。技術のバランスが偏ってる気がする。
「――普通、魔物の脅威があったら、戦闘用の技術を高めるもんじゃないのか……?」
生活を便利にする道具は大切だ。でも、それ以上に命を守るための道具が重要だと思うんだけど。
俺が首を傾げていると、操人形が苦笑しながら口を開いた。
『戦闘用の道具は、戦争に使われかねないってことで、各国が協調して開発を制限してるらしいですよー』
「は?」
『昔に起きた戦争で、いろんな国が滅びかねないほどの被害が出たそうで……その予防策ですね』
「……そういう考え方もあるのか」
地球での戦いのいろいろを知っている身としては、『各国が武器の製造を制限する』という状態で世界の安定が保てるのは奇跡だと思う。
普通に考えて、どこかがこっそり開発を進めて、他国を武力で侵略しようとするもんだろ。この世界の人ってそういう裏切りとかの考えがないのか?
なんというか、この国の人がおおらかと言われて、その状態のまま国が安定している理由がわかった気がする。
この国というか、世界的におおらかで善性が高めなんだな。
まぁ、村の冬越し用の金を盗むような悪人もいるけど!
『なんかまずいことが起きれば、勇者がどうにかしてくれるって考えてますしね』
「人任せかよ。つーか、ここで出てくるのか、勇者……」
マーレは勇者を擁する神殿の権力外ではあるけど、勇者がいるから世界は平和という考えはそれなりに広まっているらしい。どういうことだよ。
『それだけ、歴史的に勇者が人類のために功績を積み上げてきたってことでしょうね』
ケッと吐き捨てる感じに言う操人形は、しっかりと魔物だった。
随分と人間らしくなったと思っていたけど、ダンジョンの仲間であることを再認識できてちょっと嬉しい。俺たちにとっては、勇者は敵になる可能性が高いもんな。
「ま、勇者に会うことなんてないはずだし、気にしないでおこう」
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