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3-2.ダンジョンは止まらない
97.優秀な冒険者たち
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操人形が遺跡攻略パーティとしてやって来ると報告があった日には、ダンジョン内の主要メンバーがモニター前に集まっていた。
飲み物とお菓子を用意して、準備万全である。
『どんな冒険者が来るのかなー?』
ワクワクした感じで言うリルは、いずれその冒険者たちが俺の脅威になるとは微塵も考えていなさそうだ。どんな冒険者だって倒せるという自信が窺える。
俺の相棒が可愛くて最強で頼りになる。
『イサムとは違って、ちゃんと攻略してるところを見たいにゃー』
本日午前中にイサムで遊ぶのを終えたけど、ちょっとマンネリ化してきたようで、ミーシャは刺激を求めて目をキラキラとさせている。
今回の冒険者たちは、イサムみたいに笑える感じの攻略はしてくれないと思うけど、冒険者の実力を測るという意味では、いい状況だろう。
「お、ダン街前に集合したみたいだぞ」
操人形の視界をモニターに映し出しているのだが、そこに屈強な体格の冒険者たちが映って、俺はみんなに注目を促した。
冒険者ギルドが指名依頼を出した冒険者は十二人という多さで、すでに操人形を除く全員が集まっていたようだ。
『遅れてすみませんー』
[いや、時間通りだから問題ない。でも、アンタはここで一泊しなかったんだな?]
遺跡攻略パーティのリーダーであるラッカルが不思議そうに尋ねる。
操人形以外はみんなダン街で一泊し集まっているのだから、疑問に思うのは当然だ。
だが、操人形は魔物であるので、ダン街に入ることはできない。だから、夜が明ける前に一階層の攻略を始め、合流するしかなかったのだ。
『昨日は外で用事があったんですよー』
[……そうか。間に合ったんだから、別にいいんだけど……]
ラッカルは訝しげに操人形を眺め、首を傾げている。
まさか、魔物だとバレているわけじゃないよな? 実力のある冒険者には察知される可能性があると思っていたけど、これまでそんな報告がなかったから油断してた。
俺は少し緊張しながら操人形たちの会話を見守る。
もしダンジョンの魔物が外の街を偵察してるなんてことがバレたら、マーレ町との関係が悪くなるかもしれない。
[そんな小さなことは気にせず、さっさと行こうよ。遺跡に着くまでも時間がかかるし、祈りの間は結構奥まったところにあるんでしょ?]
女性の冒険者――操人形から報告があった事前情報によると、魔法使いであるルイリ――が、どうでもよさそうな感じでラッカルにそう言った。
[……そうだな。先を急ぐか。だが、くれぐれも不審な行動はしないように]
『もちろんですよー。俺は依頼を受けてきてるんですから、できる限り役に立てるようがんばります』
ラッカルが操人形を見据えて注意する。
操人形は軽く受け流しているけど、聞いている俺はドキドキしてしかたなかった。
操人形って普段からこんなプレッシャーを感じながら偵察してくれてんのかな? 今度報告に来た時は、たくさん酒を出してねぎらってやろう。
[ラッキーボーイは大した実力はないんだから、お守りになってくれてたら十分だろ――お前らも、足引っ張んないようにちゃんとついて来いよ]
剣を腰に提げた男ダダンが、所在なさげに立っている他の冒険者たちを軽く睨んで言った。
随分な言い様な気がするけど、そうなるのも仕方ない。なんせ、この十二人パーティの内、遺跡を攻略するに足る実力者はラッカルとルイリ、ダダンだけらしいのだ。
その他のメンバーは、お守り代わりの操人形と、アイテム入手要員の八人である。
祈りの間では一日に一人一つしかアイテムを入手できないので、冒険者ギルドはラッカルたち三人に他の冒険者の護衛を依頼して、できる限りたくさんのアイテムを入手しようと計画したらしい。
よく考えるよなぁ。
八人を護衛するなんて依頼を受けられるラッカルたちも凄い。
[出発する。はぐれないように気をつけてくれ]
ラッカルが号令を出し、十二人という些か人数が多いパーティが行動を開始した。
『このラッカルという男が一番警戒が必要そうですね』
「そうだな。何事もなく進むといいんだけど……」
インクの言葉を聞いて、少し不安が増した気がする。
本当に、上手くやってくれよ、操人形。
◇◆◇
ラッカル率いる遺跡攻略パーティは、影兎に襲われることなく遺跡前まで辿り着いた。
これは俺が影兎にこのパーティを攻撃しないよう指示していたから当然のことだ。
でも、実際に攻略している冒険者たちにとっては、運がよかったという状況に思えるようで――
[ヒュー、二三人は欠けるだろうと想定してたのに、まさか脱落者0人か。ラッキーボーイ、お前、髪でも入れたお守り作ってみたらどうだ? めっちゃ売れるんじゃね?]
口笛を吹き、笑ったダダンが、からかうような口調で操人形に言った。
守られる側の冒険者たちの中には、真剣な顔で頷き、期待に満ちた目を操人形に向けている者もいる。それだけ、不可視攻撃を避けられたのは凄いことらしい。
操人形は『そんなことしませんよー。俺がハゲちゃうじゃないですか』と冗談で返して、ダダンを笑わせていた。
ルイリは[意外とハゲも似合うかもよ?]と面白そうに笑っている。
そのやり取りを聞いて、操人形を不審に思っている様子だったラッカルも失笑した。
「影兎の行動、ちょっと抑えてもらうべきかな?」
『不可視攻撃のせいでダンジョンに来る冒険者の数が減ってるわけじゃないんだし、気にしなくていいと思うにゃー』
ミーシャが手を舐めてお手入れしながら答える。早くも、この攻略風景を眺めるのに飽きてきたらしい。
その気持ちはわからないでもない。ラッカルとルイリ、ダダンの三人は俺の想定以上に優秀な冒険者で、危なげのない攻略をしていたから。
ラッカルは魔法と剣を使うらしく、ルイリと共に他の冒険者たちを守りながらサクサクと魔物を倒していた。
ダダンは大剣を担いで魔物へと駆け、一撃で葬り去るというパワープレイが凄かった。
最初は驚きながらその光景を観察したけど、同じことが繰り返されれば、注目しているのも無駄に思えてくる。
「そうか。影兎に指示を出すかは、今後の状況次第だな。それより今は遺跡内の攻略がどうなるかが気になるけど……」
『このまま危うげなく祈りの間に辿り着いちゃう気がしますね』
インクの予想を聞いて、俺は無言でサクと目を合わせた。
そうなるだろうと俺も思うけど、そうなったらなったでちょっと悔しい気がする。
飲み物とお菓子を用意して、準備万全である。
『どんな冒険者が来るのかなー?』
ワクワクした感じで言うリルは、いずれその冒険者たちが俺の脅威になるとは微塵も考えていなさそうだ。どんな冒険者だって倒せるという自信が窺える。
俺の相棒が可愛くて最強で頼りになる。
『イサムとは違って、ちゃんと攻略してるところを見たいにゃー』
本日午前中にイサムで遊ぶのを終えたけど、ちょっとマンネリ化してきたようで、ミーシャは刺激を求めて目をキラキラとさせている。
今回の冒険者たちは、イサムみたいに笑える感じの攻略はしてくれないと思うけど、冒険者の実力を測るという意味では、いい状況だろう。
「お、ダン街前に集合したみたいだぞ」
操人形の視界をモニターに映し出しているのだが、そこに屈強な体格の冒険者たちが映って、俺はみんなに注目を促した。
冒険者ギルドが指名依頼を出した冒険者は十二人という多さで、すでに操人形を除く全員が集まっていたようだ。
『遅れてすみませんー』
[いや、時間通りだから問題ない。でも、アンタはここで一泊しなかったんだな?]
遺跡攻略パーティのリーダーであるラッカルが不思議そうに尋ねる。
操人形以外はみんなダン街で一泊し集まっているのだから、疑問に思うのは当然だ。
だが、操人形は魔物であるので、ダン街に入ることはできない。だから、夜が明ける前に一階層の攻略を始め、合流するしかなかったのだ。
『昨日は外で用事があったんですよー』
[……そうか。間に合ったんだから、別にいいんだけど……]
ラッカルは訝しげに操人形を眺め、首を傾げている。
まさか、魔物だとバレているわけじゃないよな? 実力のある冒険者には察知される可能性があると思っていたけど、これまでそんな報告がなかったから油断してた。
俺は少し緊張しながら操人形たちの会話を見守る。
もしダンジョンの魔物が外の街を偵察してるなんてことがバレたら、マーレ町との関係が悪くなるかもしれない。
[そんな小さなことは気にせず、さっさと行こうよ。遺跡に着くまでも時間がかかるし、祈りの間は結構奥まったところにあるんでしょ?]
女性の冒険者――操人形から報告があった事前情報によると、魔法使いであるルイリ――が、どうでもよさそうな感じでラッカルにそう言った。
[……そうだな。先を急ぐか。だが、くれぐれも不審な行動はしないように]
『もちろんですよー。俺は依頼を受けてきてるんですから、できる限り役に立てるようがんばります』
ラッカルが操人形を見据えて注意する。
操人形は軽く受け流しているけど、聞いている俺はドキドキしてしかたなかった。
操人形って普段からこんなプレッシャーを感じながら偵察してくれてんのかな? 今度報告に来た時は、たくさん酒を出してねぎらってやろう。
[ラッキーボーイは大した実力はないんだから、お守りになってくれてたら十分だろ――お前らも、足引っ張んないようにちゃんとついて来いよ]
剣を腰に提げた男ダダンが、所在なさげに立っている他の冒険者たちを軽く睨んで言った。
随分な言い様な気がするけど、そうなるのも仕方ない。なんせ、この十二人パーティの内、遺跡を攻略するに足る実力者はラッカルとルイリ、ダダンだけらしいのだ。
その他のメンバーは、お守り代わりの操人形と、アイテム入手要員の八人である。
祈りの間では一日に一人一つしかアイテムを入手できないので、冒険者ギルドはラッカルたち三人に他の冒険者の護衛を依頼して、できる限りたくさんのアイテムを入手しようと計画したらしい。
よく考えるよなぁ。
八人を護衛するなんて依頼を受けられるラッカルたちも凄い。
[出発する。はぐれないように気をつけてくれ]
ラッカルが号令を出し、十二人という些か人数が多いパーティが行動を開始した。
『このラッカルという男が一番警戒が必要そうですね』
「そうだな。何事もなく進むといいんだけど……」
インクの言葉を聞いて、少し不安が増した気がする。
本当に、上手くやってくれよ、操人形。
◇◆◇
ラッカル率いる遺跡攻略パーティは、影兎に襲われることなく遺跡前まで辿り着いた。
これは俺が影兎にこのパーティを攻撃しないよう指示していたから当然のことだ。
でも、実際に攻略している冒険者たちにとっては、運がよかったという状況に思えるようで――
[ヒュー、二三人は欠けるだろうと想定してたのに、まさか脱落者0人か。ラッキーボーイ、お前、髪でも入れたお守り作ってみたらどうだ? めっちゃ売れるんじゃね?]
口笛を吹き、笑ったダダンが、からかうような口調で操人形に言った。
守られる側の冒険者たちの中には、真剣な顔で頷き、期待に満ちた目を操人形に向けている者もいる。それだけ、不可視攻撃を避けられたのは凄いことらしい。
操人形は『そんなことしませんよー。俺がハゲちゃうじゃないですか』と冗談で返して、ダダンを笑わせていた。
ルイリは[意外とハゲも似合うかもよ?]と面白そうに笑っている。
そのやり取りを聞いて、操人形を不審に思っている様子だったラッカルも失笑した。
「影兎の行動、ちょっと抑えてもらうべきかな?」
『不可視攻撃のせいでダンジョンに来る冒険者の数が減ってるわけじゃないんだし、気にしなくていいと思うにゃー』
ミーシャが手を舐めてお手入れしながら答える。早くも、この攻略風景を眺めるのに飽きてきたらしい。
その気持ちはわからないでもない。ラッカルとルイリ、ダダンの三人は俺の想定以上に優秀な冒険者で、危なげのない攻略をしていたから。
ラッカルは魔法と剣を使うらしく、ルイリと共に他の冒険者たちを守りながらサクサクと魔物を倒していた。
ダダンは大剣を担いで魔物へと駆け、一撃で葬り去るというパワープレイが凄かった。
最初は驚きながらその光景を観察したけど、同じことが繰り返されれば、注目しているのも無駄に思えてくる。
「そうか。影兎に指示を出すかは、今後の状況次第だな。それより今は遺跡内の攻略がどうなるかが気になるけど……」
『このまま危うげなく祈りの間に辿り着いちゃう気がしますね』
インクの予想を聞いて、俺は無言でサクと目を合わせた。
そうなるだろうと俺も思うけど、そうなったらなったでちょっと悔しい気がする。
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