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3-2.ダンジョンは止まらない
105.インクの願い
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くたびれた様子の操人形がピエモに向けて出発した。
ダンジョン内を通ればピエモにはすぐ着けるけど、今回は冒険者ギルドやラッカルに怪しまれないよう、外を地道に進むことになってる。
依頼者として仕立て上げた狼族獣人も一緒だ。
「ピエモに着くまで時間がかかるだろうし、リルはエンドと交代で山の様子を見て、麓の方に行きそうな魔物がいたら積極的に狩ってくれ」
操人形には山にエンドを常駐させる案を保留にされた。その理由は、『俺の管理できる範囲を超えてる気がします』とのこと。
操人形だけではドラゴンなどの強い魔物がやって来た時に対応できないので、エンドに協力を要請できるのはありがたいようだけど。
当面はリルとエンドがこのダンジョンから山へ出張してもらうことになる。
うちの魔物たち、出張が多いな? 影兎たちも4階から各階に出張してるしなぁ。
こうもごちゃごちゃとした感じになってるのは、大体は行き当たりばったりなノリでダンジョンを作ってる俺のせい。
『わかったー。ミーシャ、僕が山に行ってる時はいつも通りマスターの護衛を頼んだよ』
『任せてにゃ』
ミーシャが胸を張る。猫のそんな仕草が可愛くないわけがないよな!
ということで、猫好きを自負する俺はあっさりと欲に負けて、ミーシャをこれでもかと撫でた。途中でリルが拗ねた感じで見てくるから、リルもわしゃわしゃと撫でる。
俺の魔物たちが可愛くて幸せだ。
「操人形が怪しまれてる問題は、一応解決できたってことでいいよな?」
ふと俺が呟くと、アイスコーヒーを持ってきてくれたサクが『おそらく?』と首を傾げながら言った。
根本的な解決はできてないもんな。操人形が遠方に行っている間に、ラッカルや冒険者ギルドが疑惑を忘れてくれたらいいんだけど。
そんなことを考えながらアイスコーヒーを飲んでいると、疲れた様子のインクがのそのそとした歩みで現れた。
『マスター、影兎たちの遊び場を増やしませんか……?』
「突然なんだ?」
『こうも毎日遊び相手をさせられていたら、俺、それ以外のことなんもできませんよ! 影兎たちには俺以外での遊びを覚えさせるべきです! とにかく、一日中相手をさせられるのは勘弁してください!』
インクが握り拳を作って力を入れて主張する。
そもそもインクの仕事って今のところ影兎の遊び相手くらいしかないんだけど、それ以外の何をするつもりなんだか。昼寝とか言うなら、要望は完全に拒否するぞ?
「うーん、影兎たちはインクで遊ぶのが楽しそうだからなぁ」
『俺はそれ以外のことでも役に立てます!』
「例えば?」
『た、例えば……』
俺が間髪入れずに問い返すと、インクの目が泳ぎ口ごもった。考えてなかったんかい。プレゼン下手すぎだろ。
呆れながらインクを眺めていると、リルとミーシャの会話が聞こえてきた。
『僕、ラッカルたちを懲らしめたいなー。影兎が襲わなかったからとはいえ、祈りの間まで軽々と攻略されたのは悔しいよ』
『わかるにゃー。でも、イサムみたいに簡単にトラップに引っ掛かってくれるタイプじゃないと思うにゃ。ミーシャたちが直接戦うのは、きっとマスターが嫌がるだろうしにゃー……』
『トラップ、ダメかぁ』
深刻そうな雰囲気で何を言っているのやら。
俺もラッカルたちに軽々と攻略されたのは悔しいけど、冒険者の実力を測るいい機会になったから別にいいや、ってことで片付けたんだ。
でも、リルたちはそうはいかなかったみたいだな。
小さなストレスでも溜まったままだとよくないだろうし、どうにか発散できるといいけど——と俺が考えていた時、インクがパッと表情を輝かせて口を開いた。
『俺が役立てることは、やっぱり男夢魔として冒険者を退けることですよ!』
悩んでいたわりに、普通の答えに辿り着いたな。
少し呆れながら、俺はその意見を吟味する。
インクには4階の屋敷を担当してもらってるけど、そこに辿り着いてる冒険者はいない。
だからこそ、暇なインクで影兎たちが遊んでいるのだ。
インクに冒険者と戦う機会を与えるなら、配置換えを検討しないといけないんだけど……空いてるとこない気がするぞ?
「……とりあえず、各階の状況を見てみるか。手が足りないところがあったら、インクに対応させる」
『ほんとですか!? 見ましょう、見ましょう。きっと俺の力が必要な場所があるはずですよ!』
ルンルンとした感じでインクが言うけど、インク以外のみんなが『そんなのあるかな?』という顔をしている。そのことに気づいてないのはインクだけだ。
まぁ、探してみればあるかもしれないし。
今はインクの期待を否定せず、各階を見てみるか。
ついでに、問題が生じてないか調べよう。よりよいダンジョンにするために、様々な視点で見直して改善するのは欠かせないからな。
ダンジョン内を通ればピエモにはすぐ着けるけど、今回は冒険者ギルドやラッカルに怪しまれないよう、外を地道に進むことになってる。
依頼者として仕立て上げた狼族獣人も一緒だ。
「ピエモに着くまで時間がかかるだろうし、リルはエンドと交代で山の様子を見て、麓の方に行きそうな魔物がいたら積極的に狩ってくれ」
操人形には山にエンドを常駐させる案を保留にされた。その理由は、『俺の管理できる範囲を超えてる気がします』とのこと。
操人形だけではドラゴンなどの強い魔物がやって来た時に対応できないので、エンドに協力を要請できるのはありがたいようだけど。
当面はリルとエンドがこのダンジョンから山へ出張してもらうことになる。
うちの魔物たち、出張が多いな? 影兎たちも4階から各階に出張してるしなぁ。
こうもごちゃごちゃとした感じになってるのは、大体は行き当たりばったりなノリでダンジョンを作ってる俺のせい。
『わかったー。ミーシャ、僕が山に行ってる時はいつも通りマスターの護衛を頼んだよ』
『任せてにゃ』
ミーシャが胸を張る。猫のそんな仕草が可愛くないわけがないよな!
ということで、猫好きを自負する俺はあっさりと欲に負けて、ミーシャをこれでもかと撫でた。途中でリルが拗ねた感じで見てくるから、リルもわしゃわしゃと撫でる。
俺の魔物たちが可愛くて幸せだ。
「操人形が怪しまれてる問題は、一応解決できたってことでいいよな?」
ふと俺が呟くと、アイスコーヒーを持ってきてくれたサクが『おそらく?』と首を傾げながら言った。
根本的な解決はできてないもんな。操人形が遠方に行っている間に、ラッカルや冒険者ギルドが疑惑を忘れてくれたらいいんだけど。
そんなことを考えながらアイスコーヒーを飲んでいると、疲れた様子のインクがのそのそとした歩みで現れた。
『マスター、影兎たちの遊び場を増やしませんか……?』
「突然なんだ?」
『こうも毎日遊び相手をさせられていたら、俺、それ以外のことなんもできませんよ! 影兎たちには俺以外での遊びを覚えさせるべきです! とにかく、一日中相手をさせられるのは勘弁してください!』
インクが握り拳を作って力を入れて主張する。
そもそもインクの仕事って今のところ影兎の遊び相手くらいしかないんだけど、それ以外の何をするつもりなんだか。昼寝とか言うなら、要望は完全に拒否するぞ?
「うーん、影兎たちはインクで遊ぶのが楽しそうだからなぁ」
『俺はそれ以外のことでも役に立てます!』
「例えば?」
『た、例えば……』
俺が間髪入れずに問い返すと、インクの目が泳ぎ口ごもった。考えてなかったんかい。プレゼン下手すぎだろ。
呆れながらインクを眺めていると、リルとミーシャの会話が聞こえてきた。
『僕、ラッカルたちを懲らしめたいなー。影兎が襲わなかったからとはいえ、祈りの間まで軽々と攻略されたのは悔しいよ』
『わかるにゃー。でも、イサムみたいに簡単にトラップに引っ掛かってくれるタイプじゃないと思うにゃ。ミーシャたちが直接戦うのは、きっとマスターが嫌がるだろうしにゃー……』
『トラップ、ダメかぁ』
深刻そうな雰囲気で何を言っているのやら。
俺もラッカルたちに軽々と攻略されたのは悔しいけど、冒険者の実力を測るいい機会になったから別にいいや、ってことで片付けたんだ。
でも、リルたちはそうはいかなかったみたいだな。
小さなストレスでも溜まったままだとよくないだろうし、どうにか発散できるといいけど——と俺が考えていた時、インクがパッと表情を輝かせて口を開いた。
『俺が役立てることは、やっぱり男夢魔として冒険者を退けることですよ!』
悩んでいたわりに、普通の答えに辿り着いたな。
少し呆れながら、俺はその意見を吟味する。
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だからこそ、暇なインクで影兎たちが遊んでいるのだ。
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「……とりあえず、各階の状況を見てみるか。手が足りないところがあったら、インクに対応させる」
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ルンルンとした感じでインクが言うけど、インク以外のみんなが『そんなのあるかな?』という顔をしている。そのことに気づいてないのはインクだけだ。
まぁ、探してみればあるかもしれないし。
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