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3-3.外との関わり
120.勇者御一行を観察中②
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勇者たちは危なげなくダン街に到着した。ここで休憩をとってから3A階に向かうらしい。
『初めて3A階をちゃんと攻略する人間が来たのかなー?』
リルがちょっぴりワクワクした感じで言った。たぶん、本当に攻略されたら不機嫌になると思う。
俺は苦笑しながらも、確かに楽しみだな、と頷いた。
正直、3A階は攻略不可能なフィールドになってるんじゃないかと考えてたから、勇者がどこまでやれるのか気になる。
まぁ、今は休憩中だけど。
三人はダン街内の屋台に立ち寄り、楽しそうに話している。
それを眺める屋台担当の狼族獣人は、少し顔を引き攣らせていた。狼族獣人には勇者の情報を伝えているから、俺の味方側である立場でどう対応するべきか迷っているようだ。
[アレックス、これは何かしら?]
[うん? 白身フライのタルタルソースがけじゃないかな。美味しそうだ。俺はこれにしよう]
リーエンが指した料理を見て、アレックスが嬉々とした表情になり頼んだ。狼族獣人は[へ、へい……少々お待ちを]と答える。
[タルタルソースって何?]
[細かくした卵やピクルスを入れたマヨネーズのソースだよ]
[マヨネーズ……?]
アレックスが説明をしても、リーエンは首を傾げるばかりだ。
色から連想したのか[チーズのようなものかしら]と呟いているリーエンを見て、俺は苦笑した。マヨネーズの存在を知らなきゃ、味を想像できないよなぁ。
というか、もうアレックスが日本で生きてたことがあるのは確定じゃないか? 見た目は西洋人だけど、転生したなら容姿や名前が日本人っぽくないのもおかしくないし。
「勇者ってなんなんだろうなぁ……」
改めて疑問に思い、俺はポツリと呟いた。
勇者が転移や転生をしてこの世界に来るなら、ダンジョンマスターに近い存在な気がする。
なんのために二種類に分けて喚んでるんだかわからないけど。喚ぶ神が違うから自然とそうなるのか?
『勇者は私たちの敵ですよー』
『てき~、てき~』
サクの言葉に追従するように、影兎たちが歌うように『敵』という言葉を繰り返す。
魔物にとって、勇者がどういう性格であろうと敵であることに変わりないようだ。
ダンジョンに敵対しないなら、俺は敵と言い切るつもりはないんだけどなぁ。
俺は苦笑しながら、『あんさつする~?』と問いかけてくる影兎の頭を撫でて宥めた。面倒くさいことになる気しかしないからやめなさい。
[すっごく美味しいなぁ。やっぱりマヨネーズは最強の調味料だ]
狼族獣人から渡された白身フライを食べながら、アレックスが真剣な表情で呟く。
アレックスと同じものを食べていたリーエンとドロンは『美味しいけど、そんな真剣に言うほど?』と少し引いてる気がする。
俺はアレックス派だ。マヨネーズは最強の調味料の一つ!
[久しぶりにこの味を食べられたよ……]
アレックスが遠い目をする。ブツブツと[この世界の食事情、もうちょっとどうにかならないかな。さすがに塩やハーブ類での味付けばかりじゃ飽きる……]と呟いてるから、相当食事に対する鬱憤が溜まっているようだ。
俺もダンジョン能力で調味料が簡単に手に入ってなかったら、アレックスのように不満をこぼしていた気がする。
生きる上で、何を食べられるかというのは重要だ。美味しいものを食べたい、とは誰しもが思うことだろう。
アレックスに共感して、俺はうんうん、と頷きながら、サクが用意してくれていた焼き鳥を頬張った。タレ美味い。醤油最高。ビールに合うー。
『なんかこの人、マスターに似てる気がするにゃー』
『えー、全然違うよ。マスターの方が百倍カッコよくて優しいもん!』
ミーシャの言葉にリルがすぐさま否定を返す。
それを聞きながら、俺は顔がゆるゆると緩むのを感じた。
そっかぁ、俺カッコいいのか、優しいのかー……リル、可愛いな!
あふれる愛情のままに、リルをワシワシと撫でる。リルは『わーい! もっと撫でて』と嬉しそうだった。
唐突に可愛がられても、それを疑問に思うことなく甘受して喜ぶリルがさらに愛しい。
[食事情は今回の調査が上手く行けば、改善されると思うよ? うちの国とマーレ町の交易を拡大させる可能性があるらしいもの]
[そうだな。そのためにも、しっかり有益性を示せるような結果を報告しないと……]
リーエンの言葉に、アレックスが力強く頷き、目を輝かせる。
……完全に、勇者が味方って言ってもいい気がしてきたぞ? ダンジョンの踏破なんて全然考えてなさそうだし、むしろこのダンジョンのためになるのでは? 勇者が味方ってすごいありがたいじゃん。
[さすがに美味い飯だけじゃ交易拡大を進める理由にはなんねーぞ]
ドロンが呆れた感じでツッコミを入れたから、俺が考えるほど単純に事が進むわけではなさそうだけど。ちょっと期待するくらいはいいだろう。
[……わかってる]
目を逸らしたアレックスは美味いご飯の魅力に囚われていた自覚があるようで、気まずそうだった。その様子をリーエンが微笑ましげに見つめている。
[アレックスがこんなに何かに夢中になっているところを初めて見たわ]
[……美味しいご飯には、誰だって夢中になるものだろう?]
[お前の程度がすげーっつってんだよ。そんなに美食家だったのかよ]
ドロンが肩をすくめてそう言った後、ふと何かを思い出すように斜め上を見る。
[——そういや、このダンジョンのマスターも、美食家だって噂だったな]
[とても仲良くなれそうな気がする]
アレックスが真剣な表情で頷くと、ドロンは呆れた顔で軽いパンチをアレックスの腹に食らわせた。
[勇者がダンジョンマスターと仲良くするなんて前代未聞だぜ。やめとけ。お偉方がパニックになってとんでもねーことになるぞ]
[……まぁ、神殿の教義に反してるからな]
苦い表情で呟くアレックスを見て、俺も正直『話せたら仲良くなれそうだなぁ』と思ったけど、リルやミーシャたちが微妙に嫌そうな顔をしていたから口を噤んだ。
立場って難しいな。
『初めて3A階をちゃんと攻略する人間が来たのかなー?』
リルがちょっぴりワクワクした感じで言った。たぶん、本当に攻略されたら不機嫌になると思う。
俺は苦笑しながらも、確かに楽しみだな、と頷いた。
正直、3A階は攻略不可能なフィールドになってるんじゃないかと考えてたから、勇者がどこまでやれるのか気になる。
まぁ、今は休憩中だけど。
三人はダン街内の屋台に立ち寄り、楽しそうに話している。
それを眺める屋台担当の狼族獣人は、少し顔を引き攣らせていた。狼族獣人には勇者の情報を伝えているから、俺の味方側である立場でどう対応するべきか迷っているようだ。
[アレックス、これは何かしら?]
[うん? 白身フライのタルタルソースがけじゃないかな。美味しそうだ。俺はこれにしよう]
リーエンが指した料理を見て、アレックスが嬉々とした表情になり頼んだ。狼族獣人は[へ、へい……少々お待ちを]と答える。
[タルタルソースって何?]
[細かくした卵やピクルスを入れたマヨネーズのソースだよ]
[マヨネーズ……?]
アレックスが説明をしても、リーエンは首を傾げるばかりだ。
色から連想したのか[チーズのようなものかしら]と呟いているリーエンを見て、俺は苦笑した。マヨネーズの存在を知らなきゃ、味を想像できないよなぁ。
というか、もうアレックスが日本で生きてたことがあるのは確定じゃないか? 見た目は西洋人だけど、転生したなら容姿や名前が日本人っぽくないのもおかしくないし。
「勇者ってなんなんだろうなぁ……」
改めて疑問に思い、俺はポツリと呟いた。
勇者が転移や転生をしてこの世界に来るなら、ダンジョンマスターに近い存在な気がする。
なんのために二種類に分けて喚んでるんだかわからないけど。喚ぶ神が違うから自然とそうなるのか?
『勇者は私たちの敵ですよー』
『てき~、てき~』
サクの言葉に追従するように、影兎たちが歌うように『敵』という言葉を繰り返す。
魔物にとって、勇者がどういう性格であろうと敵であることに変わりないようだ。
ダンジョンに敵対しないなら、俺は敵と言い切るつもりはないんだけどなぁ。
俺は苦笑しながら、『あんさつする~?』と問いかけてくる影兎の頭を撫でて宥めた。面倒くさいことになる気しかしないからやめなさい。
[すっごく美味しいなぁ。やっぱりマヨネーズは最強の調味料だ]
狼族獣人から渡された白身フライを食べながら、アレックスが真剣な表情で呟く。
アレックスと同じものを食べていたリーエンとドロンは『美味しいけど、そんな真剣に言うほど?』と少し引いてる気がする。
俺はアレックス派だ。マヨネーズは最強の調味料の一つ!
[久しぶりにこの味を食べられたよ……]
アレックスが遠い目をする。ブツブツと[この世界の食事情、もうちょっとどうにかならないかな。さすがに塩やハーブ類での味付けばかりじゃ飽きる……]と呟いてるから、相当食事に対する鬱憤が溜まっているようだ。
俺もダンジョン能力で調味料が簡単に手に入ってなかったら、アレックスのように不満をこぼしていた気がする。
生きる上で、何を食べられるかというのは重要だ。美味しいものを食べたい、とは誰しもが思うことだろう。
アレックスに共感して、俺はうんうん、と頷きながら、サクが用意してくれていた焼き鳥を頬張った。タレ美味い。醤油最高。ビールに合うー。
『なんかこの人、マスターに似てる気がするにゃー』
『えー、全然違うよ。マスターの方が百倍カッコよくて優しいもん!』
ミーシャの言葉にリルがすぐさま否定を返す。
それを聞きながら、俺は顔がゆるゆると緩むのを感じた。
そっかぁ、俺カッコいいのか、優しいのかー……リル、可愛いな!
あふれる愛情のままに、リルをワシワシと撫でる。リルは『わーい! もっと撫でて』と嬉しそうだった。
唐突に可愛がられても、それを疑問に思うことなく甘受して喜ぶリルがさらに愛しい。
[食事情は今回の調査が上手く行けば、改善されると思うよ? うちの国とマーレ町の交易を拡大させる可能性があるらしいもの]
[そうだな。そのためにも、しっかり有益性を示せるような結果を報告しないと……]
リーエンの言葉に、アレックスが力強く頷き、目を輝かせる。
……完全に、勇者が味方って言ってもいい気がしてきたぞ? ダンジョンの踏破なんて全然考えてなさそうだし、むしろこのダンジョンのためになるのでは? 勇者が味方ってすごいありがたいじゃん。
[さすがに美味い飯だけじゃ交易拡大を進める理由にはなんねーぞ]
ドロンが呆れた感じでツッコミを入れたから、俺が考えるほど単純に事が進むわけではなさそうだけど。ちょっと期待するくらいはいいだろう。
[……わかってる]
目を逸らしたアレックスは美味いご飯の魅力に囚われていた自覚があるようで、気まずそうだった。その様子をリーエンが微笑ましげに見つめている。
[アレックスがこんなに何かに夢中になっているところを初めて見たわ]
[……美味しいご飯には、誰だって夢中になるものだろう?]
[お前の程度がすげーっつってんだよ。そんなに美食家だったのかよ]
ドロンが肩をすくめてそう言った後、ふと何かを思い出すように斜め上を見る。
[——そういや、このダンジョンのマスターも、美食家だって噂だったな]
[とても仲良くなれそうな気がする]
アレックスが真剣な表情で頷くと、ドロンは呆れた顔で軽いパンチをアレックスの腹に食らわせた。
[勇者がダンジョンマスターと仲良くするなんて前代未聞だぜ。やめとけ。お偉方がパニックになってとんでもねーことになるぞ]
[……まぁ、神殿の教義に反してるからな]
苦い表情で呟くアレックスを見て、俺も正直『話せたら仲良くなれそうだなぁ』と思ったけど、リルやミーシャたちが微妙に嫌そうな顔をしていたから口を噤んだ。
立場って難しいな。
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