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4-1.のんびりスローライフ?
133.騒動拡大中?
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一応木偶に意識を移して操作し、リルとミーシャを連れ狼族村を訪れた時には、畑の一画をたくさんの狼族獣人が囲んでいた。
……もう遅かった感じ?
「おーい、もしかして、ニンジン採り競争始まってるか?」
数人で何やら話し合っている狼族獣人たちに声を掛けると、ハッと顔を上げた彼らが一斉に跪いて頭を下げた。もう慣れたけど、リルへの崇拝の姿勢はいつまで経っても変わらないのな……。
「おお、リル様がお越しとは……!」
「うん、そういうのはいいから」
『マスター、この土掘っていい?』
崇拝されているリルが、どうでもよさそうであるのもいつも通りだ。
とりあえず、狼族獣人たちがうっかり頷いてしまう前に「そこはもう耕されてて、たぶん種をまく準備がされてる場所だからやめなさい」と止めておく。
神のように信仰してるからって、甘やかすのはよくないぞ……あ、でも、リルの言葉を狼族獣人たちは理解できないんだった。焦って止める必要はなかったな。
『そっかー、じゃああっちを掘るね!』
リルが尻尾をふりながら、近くの雑草が生い茂った場所に向かう。そんなに掘りたい気分だったのか。
俺は肩をすくめながら狼族獣人たちに視線を戻し、跪いて頭を下げる彼らの中から一人を選び出す。
リルがいるとなかなか会話が進まないことが多いけど、実は話しやすい性格の狼族獣人を見つけているのだ。
「ガルド、影兎たちの競争はどうなった?」
狼族獣人の青年ガルドに問いかけながら、たくさんのニンジンが植わっている場所を眺める。
影兎たちがそこに集っているのは見てわかったけど、競争している気配がないから不思議なのだ。それを狼族獣人たちが囲んでいる状況も。
「……もうすぐ開始予定です。今は、どの影兎が勝つか、賭けが行われていて──」
「は? 賭け?」
ガルドの思いがけない返答に、俺はポカンと口を開けた。ガルドも微妙な顔をしている。
呆れたような目が、仲間である狼族獣人たちを見渡した。
「娯楽の一種です。単調な日々が続いているので、刺激が欲しくなったのでしょう」
「それが賭け? まぁ、好きにしたらいいけど……何を賭けてるんだ?」
退屈なのは同感である。賭け事にワクワクする気持ちもわかるし。
俺が興味を示した途端、ガルドは『マジか、マスターさんもそっち側か……』と信じられないものを見るような目をした。そんなに意外か?
他の狼族獣人たちは俺が乗り気であることを察した途端、嬉々とした様子でルールを説明し始める。
彼ら曰く、今回の賭けは非常に単純なルールにしたそうだ。
どの影兎がニンジンをたくさん採れるか、一番から三番までを当てるだけ。
影兎たちはわかりやすいように、それぞれ数字が書かれたゼッケンを付けている。
……ゼッケンを誰が用意したかは聞かない。答えはわかりきってるし。どうせ、影兎たちに甘い女夢魔のサクだろ。
賭金となるのは、本物の貨幣。
胴元の利益は狼族村の運営費になるというから、なかなかきちんとしているものだ。ちょっと慣れを感じる。
「つまり、一番から三番になる影兎の数字を申告して、お金を賭ければいいってことだな」
「そうっす。順不同なんて甘いルールはないんで、ガチンコ勝負っす!」
狼族獣人の若い衆の一人が、グッと拳を握って気合十分に答える。
ガチンコ勝負って言葉、この状況に合ってるか? 微妙に違う気がするけど、まぁいっか。
「今はみんな賭ける対象を選んでいるところか?」
悩ましげな顔をしている狼族獣人をチラッと見て俺が呟くと、ガルドが小さく頷いた。
「そうですね。影兎たちのアピールを見て選んでます」
「……アピール?」
また予想外なことを言われた。
影兎たちを注視すると、確かに一体ずつジャンプしたり穴を掘ったり、アピールらしき行動をしている気がする。この行動をどう評価して選んでいるのか、俺にはよくわからないけど。
「マスターも賭けに参加するっすよねー?」
若い衆の狼族獣人が、木の板に『1・2・3』と書かれたものを渡してきた。それと一緒に木炭のようなものを渡されたから、番号の下に選んだ影兎の数字を書けばいいようだ。
俺は元々は影兎たちの競争を止めに来たんだけど……賭け事の誘惑に負けちゃった。
優勝賞品(?)の勇者との戦闘については、後で説得してやめてもらうか、くれぐれも正体が露見しないようにと念押しすればいいだろう。
影兎たちを眺めて、一際元気がよさそうに見える個体の数字を木の板に書く。
影兎の数が多いから当たる気はしないけど、楽しめればそれでいいんだよ。
「賭けるのは……金一枚で」
マーレ町との契約でお金をもらってるけど、使い道がほとんどないから貯まる一方なんだ。
ここで散財して賭けに負けたとしても、狼族獣人たちの生活に役立つならいい使い道と言えるはず。
「おお! 太っ腹! っ、いえ、マスターは痩せてますけどね!?」
驚いて称賛した狼族獣人がミーシャに睨まれて、すぐさまフォローを入れる。俺は意味がちゃんとわかってるから気にしなくていいんだけどな。
『肥えてるなんて、失礼な言い草だにゃー』
「いや、そんなことは言ってないぞ?」
むしろミーシャの発言に傷ついたんだけど!?
ちょっとお腹を辺りを触ってみる。太ってはないと思う……って、これ、木偶の体だったな。確認した意味ないじゃん。
……ダンジョンで過ごしていると美味しいものばっかりだから、たくさん食べすぎているかも。ちょっと気をつけた方がいいかな。
……もう遅かった感じ?
「おーい、もしかして、ニンジン採り競争始まってるか?」
数人で何やら話し合っている狼族獣人たちに声を掛けると、ハッと顔を上げた彼らが一斉に跪いて頭を下げた。もう慣れたけど、リルへの崇拝の姿勢はいつまで経っても変わらないのな……。
「おお、リル様がお越しとは……!」
「うん、そういうのはいいから」
『マスター、この土掘っていい?』
崇拝されているリルが、どうでもよさそうであるのもいつも通りだ。
とりあえず、狼族獣人たちがうっかり頷いてしまう前に「そこはもう耕されてて、たぶん種をまく準備がされてる場所だからやめなさい」と止めておく。
神のように信仰してるからって、甘やかすのはよくないぞ……あ、でも、リルの言葉を狼族獣人たちは理解できないんだった。焦って止める必要はなかったな。
『そっかー、じゃああっちを掘るね!』
リルが尻尾をふりながら、近くの雑草が生い茂った場所に向かう。そんなに掘りたい気分だったのか。
俺は肩をすくめながら狼族獣人たちに視線を戻し、跪いて頭を下げる彼らの中から一人を選び出す。
リルがいるとなかなか会話が進まないことが多いけど、実は話しやすい性格の狼族獣人を見つけているのだ。
「ガルド、影兎たちの競争はどうなった?」
狼族獣人の青年ガルドに問いかけながら、たくさんのニンジンが植わっている場所を眺める。
影兎たちがそこに集っているのは見てわかったけど、競争している気配がないから不思議なのだ。それを狼族獣人たちが囲んでいる状況も。
「……もうすぐ開始予定です。今は、どの影兎が勝つか、賭けが行われていて──」
「は? 賭け?」
ガルドの思いがけない返答に、俺はポカンと口を開けた。ガルドも微妙な顔をしている。
呆れたような目が、仲間である狼族獣人たちを見渡した。
「娯楽の一種です。単調な日々が続いているので、刺激が欲しくなったのでしょう」
「それが賭け? まぁ、好きにしたらいいけど……何を賭けてるんだ?」
退屈なのは同感である。賭け事にワクワクする気持ちもわかるし。
俺が興味を示した途端、ガルドは『マジか、マスターさんもそっち側か……』と信じられないものを見るような目をした。そんなに意外か?
他の狼族獣人たちは俺が乗り気であることを察した途端、嬉々とした様子でルールを説明し始める。
彼ら曰く、今回の賭けは非常に単純なルールにしたそうだ。
どの影兎がニンジンをたくさん採れるか、一番から三番までを当てるだけ。
影兎たちはわかりやすいように、それぞれ数字が書かれたゼッケンを付けている。
……ゼッケンを誰が用意したかは聞かない。答えはわかりきってるし。どうせ、影兎たちに甘い女夢魔のサクだろ。
賭金となるのは、本物の貨幣。
胴元の利益は狼族村の運営費になるというから、なかなかきちんとしているものだ。ちょっと慣れを感じる。
「つまり、一番から三番になる影兎の数字を申告して、お金を賭ければいいってことだな」
「そうっす。順不同なんて甘いルールはないんで、ガチンコ勝負っす!」
狼族獣人の若い衆の一人が、グッと拳を握って気合十分に答える。
ガチンコ勝負って言葉、この状況に合ってるか? 微妙に違う気がするけど、まぁいっか。
「今はみんな賭ける対象を選んでいるところか?」
悩ましげな顔をしている狼族獣人をチラッと見て俺が呟くと、ガルドが小さく頷いた。
「そうですね。影兎たちのアピールを見て選んでます」
「……アピール?」
また予想外なことを言われた。
影兎たちを注視すると、確かに一体ずつジャンプしたり穴を掘ったり、アピールらしき行動をしている気がする。この行動をどう評価して選んでいるのか、俺にはよくわからないけど。
「マスターも賭けに参加するっすよねー?」
若い衆の狼族獣人が、木の板に『1・2・3』と書かれたものを渡してきた。それと一緒に木炭のようなものを渡されたから、番号の下に選んだ影兎の数字を書けばいいようだ。
俺は元々は影兎たちの競争を止めに来たんだけど……賭け事の誘惑に負けちゃった。
優勝賞品(?)の勇者との戦闘については、後で説得してやめてもらうか、くれぐれも正体が露見しないようにと念押しすればいいだろう。
影兎たちを眺めて、一際元気がよさそうに見える個体の数字を木の板に書く。
影兎の数が多いから当たる気はしないけど、楽しめればそれでいいんだよ。
「賭けるのは……金一枚で」
マーレ町との契約でお金をもらってるけど、使い道がほとんどないから貯まる一方なんだ。
ここで散財して賭けに負けたとしても、狼族獣人たちの生活に役立つならいい使い道と言えるはず。
「おお! 太っ腹! っ、いえ、マスターは痩せてますけどね!?」
驚いて称賛した狼族獣人がミーシャに睨まれて、すぐさまフォローを入れる。俺は意味がちゃんとわかってるから気にしなくていいんだけどな。
『肥えてるなんて、失礼な言い草だにゃー』
「いや、そんなことは言ってないぞ?」
むしろミーシャの発言に傷ついたんだけど!?
ちょっとお腹を辺りを触ってみる。太ってはないと思う……って、これ、木偶の体だったな。確認した意味ないじゃん。
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