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婚姻
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麗らかな春の日、部屋の中では男三人が机を挟んで向かい合っていた。
「双樹くんは俺が必ず幸せにします」
「そんな、頭を上げてください!ぜひうちの息子をよろしくお願いします!」
結婚の話がトントン拍子で進んでいく様子を見ながら、俺は唖然としていた。父上はこの話を完全に受け入れているようだ。え、何で?
「あ、あの、父上?」
「よくやったぞ双樹!これで明日見家とのパイプが太くなる。いつの間にハートを射止めたんだ?ん?」
「ちょっと待ってください!俺はこいつと結婚するなんて認めません!」
「当事者が結婚反対してんのウケる」
「笑うな明日見!」
隣に座っている明日見は呑気にケラケラ笑っている。元はと言えば全部こいつのせいだ。愛する双子の妹に縁談を持ちかけておいて、実は俺と結婚するための罠だったのだ。しかも罠に嵌められて、まんまと俺は破談させようと妹の代わりにお見合いをし、そのままホテルに連行されてあんな……これ以上思い出すのはやめよう。父上はこの結婚を喜んでいるし、全てこの憎たらしい男の掌の上で転がされてしまっている。
「そんなに嫌なら双葉ちゃんと結婚してもいいよ。双樹くんと家族になれるなら」
「は?お前なんかを双葉と結婚させる訳ないだろ」
「じゃあ俺たちで幸せになろうね♡」
「クソ……」
明日見が手を握ってきたので振り払った。双葉を人質に取りやがって、相変わらずいけ好かない奴だ。こんなの結婚するしか選択肢がないじゃないか……。
「明日見家の方に連絡を取ってくる。その間二人で仲良くしていてくれ」
「ありがとうございますお義父さん」
「ンフッ……!お義父さんなんてそんなっフフ……」
「父上……」
締まりのない笑顔で父上は出て行った。おい、完全に明日見に絆されてるじゃないか。部屋を出て明日見と二人きりになる。俺はイライラしていたが、いい加減けじめをつけなくてはならないと思い口を開いた。
「……なあ明日見、お前と結婚することで俺は……椿家は幸せになるのか?」
「……え?」
「お前も分かっているだろう。椿家の会社は明日見グループの中でも特に経営が厳しいんだ」
他のグループ会社が急成長を遂げ、安定しているのに対し、椿家の経営する会社は年々業績は右肩下がりだ。言ってしまえば明日見グループにとってはお荷物であり、いつ切られてもおかしくない。俺はそんな企業の社長を受け継ぐことになる。もし上手くいかないままなら椿家は幸せになんてなれないだろう。
「俺の一番の幸せは双葉が幸せであること、そして椿家が幸せであることだ。お前が俺だけを幸せにすると言ったって俺は幸せにはならないぞ」
半ば明日見に当たるように心情をぶちまけてしまった。だって明日見は切り捨てる側の人間なんだから、俺たちの気持ちなんて分からないだろ?
「……もちろん俺は双樹くんが一番好きだけど、椿家の人たちも好きなんだよ。他の家に比べてみんな笑顔で話しやすいっていうか……良い人が集まってる」
「ここに来たことがあったのか?」
「父さんについて行って何回かね。俺は双樹くんに会いたくて来てたけど」
「っはあ!?お前……」
「あれ、もしかして照れてる?可愛いね」
からかってくる明日見をど突いて黙らせる。それでも明日見は笑顔を崩さなかった。
「とにかくね、俺は椿家みんなを助ける手伝いをしたいと思ってるんだよ」
「手伝い?」
「グループ全体を見てるから、会社ごとに何が駄目なのかなんとなーく分かるんだよね。俺が社長秘書としてアドバイスするっていうのはどう?」
「は、社長秘書ってそれは」
「俺が椿家に婿入りするってこと!」
「はあーーーー!?」
「双樹くんは俺が必ず幸せにします」
「そんな、頭を上げてください!ぜひうちの息子をよろしくお願いします!」
結婚の話がトントン拍子で進んでいく様子を見ながら、俺は唖然としていた。父上はこの話を完全に受け入れているようだ。え、何で?
「あ、あの、父上?」
「よくやったぞ双樹!これで明日見家とのパイプが太くなる。いつの間にハートを射止めたんだ?ん?」
「ちょっと待ってください!俺はこいつと結婚するなんて認めません!」
「当事者が結婚反対してんのウケる」
「笑うな明日見!」
隣に座っている明日見は呑気にケラケラ笑っている。元はと言えば全部こいつのせいだ。愛する双子の妹に縁談を持ちかけておいて、実は俺と結婚するための罠だったのだ。しかも罠に嵌められて、まんまと俺は破談させようと妹の代わりにお見合いをし、そのままホテルに連行されてあんな……これ以上思い出すのはやめよう。父上はこの結婚を喜んでいるし、全てこの憎たらしい男の掌の上で転がされてしまっている。
「そんなに嫌なら双葉ちゃんと結婚してもいいよ。双樹くんと家族になれるなら」
「は?お前なんかを双葉と結婚させる訳ないだろ」
「じゃあ俺たちで幸せになろうね♡」
「クソ……」
明日見が手を握ってきたので振り払った。双葉を人質に取りやがって、相変わらずいけ好かない奴だ。こんなの結婚するしか選択肢がないじゃないか……。
「明日見家の方に連絡を取ってくる。その間二人で仲良くしていてくれ」
「ありがとうございますお義父さん」
「ンフッ……!お義父さんなんてそんなっフフ……」
「父上……」
締まりのない笑顔で父上は出て行った。おい、完全に明日見に絆されてるじゃないか。部屋を出て明日見と二人きりになる。俺はイライラしていたが、いい加減けじめをつけなくてはならないと思い口を開いた。
「……なあ明日見、お前と結婚することで俺は……椿家は幸せになるのか?」
「……え?」
「お前も分かっているだろう。椿家の会社は明日見グループの中でも特に経営が厳しいんだ」
他のグループ会社が急成長を遂げ、安定しているのに対し、椿家の経営する会社は年々業績は右肩下がりだ。言ってしまえば明日見グループにとってはお荷物であり、いつ切られてもおかしくない。俺はそんな企業の社長を受け継ぐことになる。もし上手くいかないままなら椿家は幸せになんてなれないだろう。
「俺の一番の幸せは双葉が幸せであること、そして椿家が幸せであることだ。お前が俺だけを幸せにすると言ったって俺は幸せにはならないぞ」
半ば明日見に当たるように心情をぶちまけてしまった。だって明日見は切り捨てる側の人間なんだから、俺たちの気持ちなんて分からないだろ?
「……もちろん俺は双樹くんが一番好きだけど、椿家の人たちも好きなんだよ。他の家に比べてみんな笑顔で話しやすいっていうか……良い人が集まってる」
「ここに来たことがあったのか?」
「父さんについて行って何回かね。俺は双樹くんに会いたくて来てたけど」
「っはあ!?お前……」
「あれ、もしかして照れてる?可愛いね」
からかってくる明日見をど突いて黙らせる。それでも明日見は笑顔を崩さなかった。
「とにかくね、俺は椿家みんなを助ける手伝いをしたいと思ってるんだよ」
「手伝い?」
「グループ全体を見てるから、会社ごとに何が駄目なのかなんとなーく分かるんだよね。俺が社長秘書としてアドバイスするっていうのはどう?」
「は、社長秘書ってそれは」
「俺が椿家に婿入りするってこと!」
「はあーーーー!?」
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