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番外編・酔ったあの子の顔が見たい話
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-三時間後-
「うう~~~っ……なんでいっつも俺ばっかり~~~~!」
顔を真っ赤にした双樹くんがボロボロと涙を流してながら嘆いている。あれ……これは、酔ってる、よな……?酔ったら可愛くなるかなーとか想像してたけど、まさかの泣き上戸。これは予想外だった。
「お、落ち着いて双樹くん。とりあえず、目擦ったら腫れちゃうからやめなよ」
「お前もいっつもバカにしやがって!早く帰れよ!」
伸ばした手を叩き払われ、机に突っ伏してまたわんわん泣き始めてしまった。どうしよう、宥めるためにこんなに飲ませたんじゃないのに……。このまま帰る訳にもいかないし、とりあえず酔いを醒まして貰わないと。
「そんなに泣いちゃってどうしたの~」
「お前なんかに分かってたまるかあ……俺はいつだって期待に応えられないし、計画を考えても失敗するし……椿家の長男たる俺が……顔が立たない……」
「…………」
今度はめそめそ泣きながら椅子の上で丸くなってしまった。双樹くんはいつもベラベラ喋る癖に自分の事はあまり話さない。だから表情に出やすくても心の中ではどう思っていたのか知る由が無かった。いつもは見せない弱った姿。確かに裏表は無いと思ってるけど、もしかしてこれも本性なのかな。
「双樹くん」
「……なんだよ」
涙目の双樹くんがゆっくり顔を上げる。意図しない上目遣いがなんとも可愛らしい。
「俺は双樹くんの上手くいかないところも好きだよ。いつだって双樹くんが行動を起こすのは誰かの為でしょ?みんなはきっと行動を起こしてくれるだけで凄く感謝してるよ」
「でも……上手くいかなきゃ意味無いだろ……」
「うーん……双樹くんってすっごく責任感強いんだね。でもさ、失敗なんて死ななきゃいくらでもして良いんだよ。少なくとも俺の前では」
椅子を動かして双樹くんのすぐ隣に座った。そういえば、初めてセックスした時も泣いてたな。あの時は自分の置かれた状況が情けなくて泣いてたみたいだけど、頭の中がこんがらがってしまうと涙が出るタイプなのかもしれない。
「双樹くんはいつも我慢してばっかでしょ。俺にだけはわがまま言ってくれて良いから、ね?」
「……明日見」
ふらつきながら体を起こした双樹くんがじっとこっちを見てきた。すると、頭を俺の胸にこてんと預けてきた。突然の出来事で思わず体が固まる。え、え?これどういう状況?普段双樹くんから触れてくる事なんて無いからつい鼓動が早くなる。
「ど、どうしたの」
「……じゃあ、俺の事褒めろよ」
「え?」
「わがまま言えって言ったのはお前だろ」
小さい声で呟くと双樹くんは恥ずかしそうに唇を尖らせてそっぽを向いた。いや……可愛すぎる。普段なら絶対に甘えてくれないけど、酒のせいか随分と素直になっている。俺はそっと抱きしめて頭を撫でながら褒めることにした。
「双樹くんはいつも頑張ってて偉いね~」
「おいふざけるなっ、もっとちゃんと褒めろ!」
双樹くんはもう抱きしめてることに抵抗もしないで、むしろもっと撫でろと言わんばかりに頭を押し付けてくる。嬉しいのか酔ってるせいか分からないが、頬がほんのりと紅くなっている。満足するまで適当に褒めちぎっていると双樹くんはだんだん落ち着いてきたようだ。
「ねえ、キスして良い?」
「え……?うーん……ん」
双樹くんは何故か前髪をかき上げて顔をこっちに向けてきた。これはもしかして……?恐る恐る双樹くんの額にキスをすると、双樹くんは満足そうに目を細めた。目が合った瞬間、なんだか顔に熱が集まったような気がした。
「んふふ」
いつもはずっとムッとした表情が柔らかくなり、双樹くんは満足そうに笑った。
「っ……双樹くんってさ、結構俺のこと好きじゃない?」
「はー?なに言ってんだよ、ちょーしのるな」
「いやいや……そう言いながら俺に抱きついてんじゃんっ……!」
「おまえを枕代わりにしてるだけだ!なに顔まっかになってんだー?」
そりゃあずっと塩対応な子にこんなにベタベタされたら赤くもなるでしょ……!珍しくこんなに甘えてくれるなんてチャンスだ。いっぱい写真撮っちゃおうっと。
それから色んな所にキスをして、たくさん褒めて、満足するまで好きなことをした。流石に酔った状態で最後までやるのは我慢して、可愛いところを写真に収めた。正直めちゃくちゃ満足した……しばらく間を置いて、警戒が解けた頃にまたやりたいな。
◇
「……え?」
目が覚めるとベッドの上に居た。何故か全裸で、隣には同じく全裸の明日見が寝ている。これはどういうことだ?昨晩は明日見にワインを飲まされて、つまみも用意されてて、気分が良くなってきたところまでは覚えていて、どういう経緯でこの状態になっているのか全く覚えていない。まさかと思ったが腰は……痛くない。ならば恐らくそのまま寝たのだろうと心を落ち着かせる。しばらく状況を整理していると、隣がもぞもぞと動き出した。
「……んー……あ、双樹くん起きた?おはよ」
「あっ!明日見、どういう事だこの状況!説明しろ!」
咄嗟に前を隠して明日見を睨みつける。どうせこいつには全部見られてるから別に隠す意味は無いのだが。明日見は少し何かを考えた後、意地の悪い笑みを浮かべた。
「あー……昨日は楽しかったね、あんなに激しく求めてくれるなんて!」
「っ、はあ!?」
「ちゃーんと写真にも撮ってるよ、見せないけど」
「そ、んな訳……」
まさか、またこいつにしてやられたというのか!?いや、体は痛くないしそんなはず……ああもう、訳が分からない。
「帰る!全く、やっぱり変なことする目的で呼んだんだな!」
「えーもう帰るの?ゆっくりしていこうよ」
「服もこんなに散らかしやがって……」
散乱した服を取り上げてすぐに着替えることにした。いつも鏡を見て身支度をするので身だしなみには気を遣っているつもりだ。明日見には「いつも同じファッションでつまんないよ!」と前に言われたが、服装に面白さとかいらないだろとしか思わなかった。
「ん?……は!?」
鏡の前に立つと、身体には夥しい数の痕が付いていた。ギリギリ服を着れば見えない場所ではあるものの、昨晩何をされたのかそれを見た瞬間に理解した。
「明日見ーーーーッ!!」
明日見に好き勝手された事実にカッとなり、また朝っぱらから大声を出す羽目になってしまったのだった。
「うう~~~っ……なんでいっつも俺ばっかり~~~~!」
顔を真っ赤にした双樹くんがボロボロと涙を流してながら嘆いている。あれ……これは、酔ってる、よな……?酔ったら可愛くなるかなーとか想像してたけど、まさかの泣き上戸。これは予想外だった。
「お、落ち着いて双樹くん。とりあえず、目擦ったら腫れちゃうからやめなよ」
「お前もいっつもバカにしやがって!早く帰れよ!」
伸ばした手を叩き払われ、机に突っ伏してまたわんわん泣き始めてしまった。どうしよう、宥めるためにこんなに飲ませたんじゃないのに……。このまま帰る訳にもいかないし、とりあえず酔いを醒まして貰わないと。
「そんなに泣いちゃってどうしたの~」
「お前なんかに分かってたまるかあ……俺はいつだって期待に応えられないし、計画を考えても失敗するし……椿家の長男たる俺が……顔が立たない……」
「…………」
今度はめそめそ泣きながら椅子の上で丸くなってしまった。双樹くんはいつもベラベラ喋る癖に自分の事はあまり話さない。だから表情に出やすくても心の中ではどう思っていたのか知る由が無かった。いつもは見せない弱った姿。確かに裏表は無いと思ってるけど、もしかしてこれも本性なのかな。
「双樹くん」
「……なんだよ」
涙目の双樹くんがゆっくり顔を上げる。意図しない上目遣いがなんとも可愛らしい。
「俺は双樹くんの上手くいかないところも好きだよ。いつだって双樹くんが行動を起こすのは誰かの為でしょ?みんなはきっと行動を起こしてくれるだけで凄く感謝してるよ」
「でも……上手くいかなきゃ意味無いだろ……」
「うーん……双樹くんってすっごく責任感強いんだね。でもさ、失敗なんて死ななきゃいくらでもして良いんだよ。少なくとも俺の前では」
椅子を動かして双樹くんのすぐ隣に座った。そういえば、初めてセックスした時も泣いてたな。あの時は自分の置かれた状況が情けなくて泣いてたみたいだけど、頭の中がこんがらがってしまうと涙が出るタイプなのかもしれない。
「双樹くんはいつも我慢してばっかでしょ。俺にだけはわがまま言ってくれて良いから、ね?」
「……明日見」
ふらつきながら体を起こした双樹くんがじっとこっちを見てきた。すると、頭を俺の胸にこてんと預けてきた。突然の出来事で思わず体が固まる。え、え?これどういう状況?普段双樹くんから触れてくる事なんて無いからつい鼓動が早くなる。
「ど、どうしたの」
「……じゃあ、俺の事褒めろよ」
「え?」
「わがまま言えって言ったのはお前だろ」
小さい声で呟くと双樹くんは恥ずかしそうに唇を尖らせてそっぽを向いた。いや……可愛すぎる。普段なら絶対に甘えてくれないけど、酒のせいか随分と素直になっている。俺はそっと抱きしめて頭を撫でながら褒めることにした。
「双樹くんはいつも頑張ってて偉いね~」
「おいふざけるなっ、もっとちゃんと褒めろ!」
双樹くんはもう抱きしめてることに抵抗もしないで、むしろもっと撫でろと言わんばかりに頭を押し付けてくる。嬉しいのか酔ってるせいか分からないが、頬がほんのりと紅くなっている。満足するまで適当に褒めちぎっていると双樹くんはだんだん落ち着いてきたようだ。
「ねえ、キスして良い?」
「え……?うーん……ん」
双樹くんは何故か前髪をかき上げて顔をこっちに向けてきた。これはもしかして……?恐る恐る双樹くんの額にキスをすると、双樹くんは満足そうに目を細めた。目が合った瞬間、なんだか顔に熱が集まったような気がした。
「んふふ」
いつもはずっとムッとした表情が柔らかくなり、双樹くんは満足そうに笑った。
「っ……双樹くんってさ、結構俺のこと好きじゃない?」
「はー?なに言ってんだよ、ちょーしのるな」
「いやいや……そう言いながら俺に抱きついてんじゃんっ……!」
「おまえを枕代わりにしてるだけだ!なに顔まっかになってんだー?」
そりゃあずっと塩対応な子にこんなにベタベタされたら赤くもなるでしょ……!珍しくこんなに甘えてくれるなんてチャンスだ。いっぱい写真撮っちゃおうっと。
それから色んな所にキスをして、たくさん褒めて、満足するまで好きなことをした。流石に酔った状態で最後までやるのは我慢して、可愛いところを写真に収めた。正直めちゃくちゃ満足した……しばらく間を置いて、警戒が解けた頃にまたやりたいな。
◇
「……え?」
目が覚めるとベッドの上に居た。何故か全裸で、隣には同じく全裸の明日見が寝ている。これはどういうことだ?昨晩は明日見にワインを飲まされて、つまみも用意されてて、気分が良くなってきたところまでは覚えていて、どういう経緯でこの状態になっているのか全く覚えていない。まさかと思ったが腰は……痛くない。ならば恐らくそのまま寝たのだろうと心を落ち着かせる。しばらく状況を整理していると、隣がもぞもぞと動き出した。
「……んー……あ、双樹くん起きた?おはよ」
「あっ!明日見、どういう事だこの状況!説明しろ!」
咄嗟に前を隠して明日見を睨みつける。どうせこいつには全部見られてるから別に隠す意味は無いのだが。明日見は少し何かを考えた後、意地の悪い笑みを浮かべた。
「あー……昨日は楽しかったね、あんなに激しく求めてくれるなんて!」
「っ、はあ!?」
「ちゃーんと写真にも撮ってるよ、見せないけど」
「そ、んな訳……」
まさか、またこいつにしてやられたというのか!?いや、体は痛くないしそんなはず……ああもう、訳が分からない。
「帰る!全く、やっぱり変なことする目的で呼んだんだな!」
「えーもう帰るの?ゆっくりしていこうよ」
「服もこんなに散らかしやがって……」
散乱した服を取り上げてすぐに着替えることにした。いつも鏡を見て身支度をするので身だしなみには気を遣っているつもりだ。明日見には「いつも同じファッションでつまんないよ!」と前に言われたが、服装に面白さとかいらないだろとしか思わなかった。
「ん?……は!?」
鏡の前に立つと、身体には夥しい数の痕が付いていた。ギリギリ服を着れば見えない場所ではあるものの、昨晩何をされたのかそれを見た瞬間に理解した。
「明日見ーーーーッ!!」
明日見に好き勝手された事実にカッとなり、また朝っぱらから大声を出す羽目になってしまったのだった。
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