S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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入学編

プロローグ

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ここは魔物が棲んでいる世界。日々人と魔物との生存を賭けた戦いが繰り広げられる中、小さな村に1人の男の子が生まれた。男の子の名前は『ヨハン』という。

ヨハンの両親は村で狩猟を生業としている。

ヨハンが物心ついた頃、初めて両親の狩猟に同行した。その時ヨハンの目には衝撃的な映像が目に飛び込んできた。

父は火の魔法を放ち、剣を用いて巨大なイノシシを狩ったのだ。その際に負った擦り傷は母によって手早く治療される。


この世界には魔法が存在している。

多くの人間は魔力を有しており、魔法の使用は可能だが、その属性や威力には生来の才能に大きく左右される。
しかし、魔法の才能がなくとも特別な魔道具により足りない部分の補填は可能である。

魔法は大きくわけて4つの属性の「火・風・水・土」に分類されていた。
この4つの属性以外には他に3つの「光・闇・無」は存在するが、使用できる人がかなり限られており、かつ研究途中であるため、不明な点も多いとされる。

ヨハンが物心ついた時の狩りでこれら魔法を目にしたことで憧れを持ち、自分でも扱えないかと家にあった魔法書を読み耽り、日夜魔法の鍛錬に明け暮れるのであった。



――――ヨハンが8歳になった年。

「ねぇねぇお母さん、僕もう森のイノシシなら楽勝で狩れるよ!」

洗い場に立っている母に嬉々として声を掛ける。

「ヨハン?何を言っているの?そんなわけないじゃない。大人の狩人でさえ魔法が無ければ手を焼くイノシシに対して」
「でも……本当だよ?見てみる?」

ヨハンの言葉に疑問抱きながらも母のエリザは促されるままに庭に出た。
そうしてヨハンは母から距離を取りだす。

「ヨハン?そんなに離れてどうしたの?」
「いいから見てて!お母さん」

母は疑問符を浮かべながら見ていると、数秒後にはヨハンの手から猛々しい炎の塊が宙に浮いていた。

「ヨハン!どうしたのそれ!?それも魔法維持なんて高等技術どこで学んだの!?」

母は息子の突然の行いに驚きを隠せない。

「うーん、なんとなくかな?火に止まって欲しいと思っていたらできたの」

ヨハンは簡単そうにそう言うが、母エリザが驚くのも無理はなかった。

ヨハンが行った魔法の炎を宙に漂わせる魔法維持はただ単純に魔法を放つだけでは行えず、魔法の理論を理解してそれに応じて魔力をコントロールする必要がある。才能のある王宮の宮廷魔導士に任命される魔法使いや一部の上級冒険者なら可能ではあるが、それ以外ではそういった繊細な魔法のコントロールはかなりの訓練を要する。

魔法自体に汎用性が高く、様々な研究が行われている。
冒険者学校も存在し、研究の成果を通じて冒険者学校ではそういった魔法のコントロールを教えていたりするが、研究途上であり、感覚的な要素も強い為、これも十分に確立していない。ましてや小さな村の10にも満たない子どもがなんとなくできるものではない。

「ヨハン、あなたとんでもないことをしているのよ。今夜お父さんとお話ししましょう」
「そうなの?うん、わかった。」

夜になり、父も含めた夕食後に話は行われた。
父の名はアトム。

「で、少しばかり母さんから話は聞いたが、ヨハンお前もう魔法を使えるんだってな?」
「うん、そうだよ?」

ヨハンは笑顔で答える。

「あのなヨハン、幼い頃から魔法を使える子どもはいるが、それはこのシルーカ大陸のなかでも多くはない。ましてやお前が使った魔法維持なんてとんでもない。お前はどうやってそれを覚えたんだ?」
「お母さんにも言ったけど、なんとなくだよ?炎に止まって欲しいと思ったらそこにとまるんだ」

息子があっけらかんと答えるので父アトムはエリザと顔を見合わせた。エリザは苦笑いをしている。

「…………そうか。では魔法自体はどこで学んだ?最初にお前を狩りに連れて行って以来、特に魔法について聞いて来なかったお前が」
「それはね、魔法が使いたくて一人で練習していたんだ。特に難しいと思うことがなかったから聞きには行かなかったけど。あとはお父さんとお母さんが使う魔法を見て覚えているかな?」

アトムは顎に手を当て考え込む。

「……なぁエリザ、もしかしたらこいつには魔法の才能があるかもしれないな。さすがは俺達の子だな」
「もしかしたらどころじゃないわよ!絶対この子には才能があるわ!」

エリザは手を合わせて喜ぶ。

「そうだな。こうなれば王国の冒険者学校への入学も検討しないといけないな」
「そうよ!絶対に行くべきよ!!ヨハン、冒険者学校に入学なさい!」
「まぁまぁそんなに焦る必要はない。あそこの入学は12歳からだろう。それまでに魔法の基礎をお前から教えてやるんだ。俺からは基礎体力と剣術を少しばかり指南する。それに王国にいく道中魔物にも遭遇するかもしれないだろう。魔物への知識と対処方法を知っておいた方がいいだろう」

こういう風に言うのも、父アトムと母エリザは若い頃共に冒険者として生計を立てていた。それが冒険者として出会い、恋愛に発展した冒険者の中ではよくある話である。このイリナ村に定住するまではそれなりに活躍して名の通ったパーティーに所属していたという程度に聞いていた。

冒険者学校への入学となれば村から出ることになる。
村の外に出れば魔物との遭遇のリスクが格段に上がり、実力が伴わないとすぐに死を迎えるだろう。

アトムとエリザは冒険者時代の知識をヨハンが12歳になるまでの間に可能な限り教えていくことを決めた。

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