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入学編
第七話 王都内の色々
しおりを挟む「それでは、冒険者学校入学式はこれにて終了となる。明日より本格的な授業を行うから今日のところは各々好きに過ごしなさい。まだ着いて日が浅い者は観光でもすれば良い。クラス分けは張り出しておくから各自見ておくように」
ほとんどの新入生が満身創痍の中、檀上に立った教師が説明する。
――――好きに過ごして良いということだったので入学式を終えたのでモニカ達と昼食を一緒に食べることになった。
「ねぇ、レインはこの街の出身だからどこかおいしいお店知らない?」
「それなら良い所があるぜ!」
自信満々に答えるレインに案内されたのは東地区にある食事処だった。
歩きながらレインに聞いた話では、王都は王宮を中心とした五つの地区に分かれている。王族・貴族が住んでいる中央区、王都に住居を構える住人達が中心の北地区、ギルドがあり冒険者が多く集う西地区、商業が盛んで飲食関係が多く建ち並ぶ東地区、正門があり一部商店が立ち並び衛兵が練武を行う広場のある南地区、大まかに分ければこんな感じなのだという。
そんな感じで食事をしながらもレインがヨハンとモニカに説明する。
ちなみに、王都に住んでいるからそれなりに安価で美味しいと素直に思えた。
「へぇー、王都はそんな風に分かれているんだね」
ヨハンは初めての王都の説明を嬉しそうに聞いていた。
「エレナは知っていたの?」
ほとんど興味を示していないエレナにモニカがたずねる。
「えぇ、わたくしもレインと同じで王都の出身ですからね」
「あっ、そうなの?じゃあ今度良い洋服屋さん教えてよ」
「あぁ……――そうね、わかったわ。今度調べておくわね」
「調べる?王都出身でそんなに可愛い服を着ているのに?」
エレナの言葉尻に疑問が浮かぶ。ヨハンはエレナの服装を見ながら不思議そうにたずねた。
「え、えぇ、わたくしは母が服を買っているからあまり洋服屋さんに詳しくないのよ」
慌てて何か取り繕うような感じでエレナが返答する。
「な、なぁそれよりもヨハン!今度ギルドに行ってみようぜ!冒険者学校の生徒になればギルドの依頼も受けられるようになるんだぜ!」
レインもどこか慌てた様子で会話に割り込んできた。
「そうなの?うん、行ってみたい!でも依頼ってどんなのがあるの?」
「そうだな、まだ学生の間なら最低ランクのEランクの依頼からしか受けられないから大したもんはねぇが、具体的に言うと足の悪いじいさんの買い出しから薬草になる野草の採集に指定の手順に沿った調合、変わったのでは子どもの面倒とかかな?一応弱い魔物の討伐があるが、まだ新入生には受けさせてもらえないな。学校から許可証を発行されてからになる」
ギルドの依頼内容はS・A・B・C・D・Eの6つにランク分けされている。S級になると飛竜の討伐や未開の土地の探索などが行えるらしい。A級だと要人の警護や衛兵の武術指南など。B級とC級とD級は依頼の種別に大差はないが、ギルドが設定している難易度に応じて受けられる内容が変わる。E級は初心者用に設定されているとのこと。
依頼は達成すればポイントが貯まり、ある程度になれば上位ランクになることができるが、依頼未達成や悪質な状況に陥れば降格や場合には資格取り消しもありえる。
パーティー依頼の未達成に関しては基本的にはリーダーのみの罰則となる。
他にも古代の遺物発見や不意に現れた高ランク魔物の討伐など多大な貢献にはポイント問わずでランク昇格や状況に応じて細かい設定がされている。
ただ、レインは「駆け出しにもなってない俺らにはまだ関係ない話だけどな」と付け足していた。
「そうなんだ、じゃあモニカは王都に来る前に魔物退治をしてるからすぐに許可証を発行されるんじゃないかな?」
「そうなのか?それはどういう魔物だったんだ?」
「え?牛のような顔をして手には斧を持っていたわね。でも大したことなかったわ」
「はぁっ!?そ、それっ、もしかしてミノタウロスじゃねぇか!?」
「さぁ、知らないわ。それに倒した証拠なんにも持って来なかったもの」
「…………。 そうか、もしミノタウロスだとしたらそいつはCランク討伐対象の魔物だぞ。それにミノタウロスのツノは高価なんだぞ?」
「そうなんだ。そういえば倒した後に行商の人がツノを切っていたわね」
「ははっ、もったいねぇ。それよりもミノタウロスを倒せる新入生ってなんだよ。それにそんなモニカに入学式で対抗していたエレナに…………」
ちらっとレインがヨハンに視線を送る。
「(俺を一瞬で倒したヨハンといい、一体どうなってんだ)」
「まぁ魔物討伐は正式に冒険者になってからでいいではありませんか。わたくしたちの当面の目標は冒険者学校の学生としてですわ」
「まぁ、そうだな。どんな授業なんだろうな?」
そうして期待に胸を膨らませながら入学式初日が過ぎていった。
次の日からは冒険者学校での授業が始まった。
だが、それはヨハンにとってはとても退屈なものだった。
「はい、では皆さんにはまず魔法の基礎知識の座学と実地訓練とした適性検査から始めます」
そう言って魔法の先生は座学で基本属性の話を延々としている。ヨハンにとっては母エリザからとっくに習っていた内容であったため、特に目新しい情報はなく、ひたすら座学の時間は体内で魔力を練る。
ただし、ヨハンの才能と環境が特殊であったためにそう感じるだけで、一般的な魔導士の資質がある子どもでも基本の確認と正しく知識を身に付ける必要があった。
適性検査でもヨハンはあまり目立たないよう控えめに魔法を使用していたが、周りのほとんどはまだ覚えたての魔法をたどたどしく使っている。
一部の生徒は自慢げに魔法を披露しているのだが、それはヨハンの本来使うものとは大きな差が見られた。
しかし、それが普通なのだった。
そういった子どもたちでも努力と才能次第では卒業の頃には単属性であれば王国の宮廷魔導士に配属されることや冒険者としても貴重な戦力として重宝する。
「それにしてもヨハン、あなたどの属性も器用にこなすわね。私は風と水は使えるけど、火と土はからっきし。剣なら自信あるんだけど」
「ほんとだよな、俺は火の魔法は得意だけど、他はいまいちだからな」
「そうですわね、私はレインほどではないにしても火と土が得意のようですわね」
「うんまぁお母さんから色々教えてもらっていたからね」
「それにしてもそれほど強くないとはいえ基本の4属性を同レベルで扱えるのはすげぇわ。魔法授業の先生もびっくりしてたじゃねえか。もしかしたら光と闇もいけるんじゃねぇか?」
「そう、みたいだね。でも光と闇はさすがに…………(これはやっぱり隠しておいた方がいいかな?)」
「それもそうか。まぁ俺たち四人とも同じクラスになれて良かったな」
数日たった後、いつものように四人で集まっていたところこれまでの魔法授業について振り返っていた。
母エリザの教えにもあったように全属性を使える魔法使いは稀有なようだとヨハンは再確認する。
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