S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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水面下の陰謀編

第七十 話 対決のその先

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「これであなたに勝ち目はないわ!」
「さぁ……どうかな?」
「強がっていられるのも今の内よ!」

ニーナはモニカに向かって一直線に走り出した。
その動きはこれまでの比ではなかった。

ニーナの使用したのは間違いなく闘気で、その身体能力を遥かに底上げしている。
身体能力を飛躍的に上げるその闘気を入学間もないニーナは使用した。

先程までより速く強く仕掛けないとこの人は倒せない。
想像していたより遥かに強かったけど、こうなっては仕方ない。

「(お父さん、約束を破ってごめんなさい)」

心の中で呟くように父に謝罪を送り、モニカを見るのだが思わず目を見開いた。

ニーナが向かった先には同じく闘気を使用したモニカがいる。


「嘘!?そんなっ!」

目の前の光景が信じられない。

「ニーナちゃん、ごめんね。けど、本当に驚いたわ。闘気まで使えたなんて」

踏み込んだ勢いを抑えることができず、眼前には鋭く振り下ろされる木剣があった。
鈍い音と共に視界が暗くなる。

モニカはニーナに決定的な一撃を加えてそこで決着となった。



「――――うっ!」
「あっ、起きたみたいね。大丈夫?どこか痛いところはない?」

鍛錬場の場外でニーナを寝かせ、治癒魔法をかけたあとはニーナが起きるまでモニカ達は待っていた。

「あ、たし…………そっか……うん、覚えているわ」

ニーナは目を開け、頭を押さえながら身体を起こし状況を確認する。
覚えている。確かに。

自身の敗北を素直に受け入れ、身体を起こしながらモニカに顔を向けた。

「モニカさん、あたし…………生意気なこと言って、この結果ですもんね…………」

ニーナは悔しさから俯く。

「ごめんなさい!」

再び顔を上げてモニカの顔をしっかりと見て謝罪を口にした。

「ううん、それはもういいわよ。それにあなたが最初に言った『冒険者は実力が全て』ってこれは間違ってもいないと思うしね」
「…………モニカさん」
「でもね、それが全てってわけではないと思うの。私もその辺は最近やっとわかったばっかりだけどね」
「……はい」

ニーナは再び俯き、モニカから言葉を掛けられてもまともに顔を見られないでいる。

「あっ、でも――」

両肩を掴まれ、驚きモニカの顔を見た。
その顔は笑顔で思わず見惚れてしまう程綺麗だった。

「やっぱり強さを伴っていないといけない場面もいっぱいあるわ。それはニーナちゃんの言う通りだと思うの。私も危ない目にいっぱい遭ったことあるしね」
「モニカさんでもですか?」
「ええ。そういう意味でも強くなりたいし、ニーナちゃんが来たことでまだまだ負けられないって思ったし、私もうかうかしていられないって気になっちゃったわよ」

微笑まれるモニカの笑顔に惹き込まれる。

「モニカさん!」

思わずモニカの懐に飛び込んでしまった。
モニカはニーナの頭を優しく撫でる。

「だから、ね。ニーナちゃんもヨハンを頼って来たのがきっかけかもしれないけれど、これを機会に学校生活で色んなことを学べばいいと思うの。こんなに偉そうに言っちゃってるけど、私もニーナちゃんと似たようなものだったしね」

全て伝わったわけではないとは思うのだろうけど、その想いの一端は確かにニーナに伝わったのだろうというのはニーナの様子から見て取れた。

「(って言っても負けてたらこんなに偉そうなこと言えなかったわね)」

ニーナを胸に抱きながら思わず苦笑いしてしまうのだが、それはモニカがニーナに対して敬われるだけの強さを示した結果。

「それにしても驚いたわよ?まさか闘気を使えるだなんて」

頭を撫でながらニーナに声を掛けると、ニーナは疑問符を浮かべてモニカを見上げた。

「へっ? とうきってなんですか??」

キョトンとした顔でモニカを見るのだが、モニカも思わず目を丸くさせる。

「えっ!?闘気を知らないのに使っていたの?」
「うーん?」

顎に指を当て、首を傾げるニーナには覚えがない。

「えっと……あの最後に使っていた黄色い光のことなんだけど?」

一体どういうことかと、ニーナにわかるように問い掛ける。

「ああ、あれですか?あれとうきっていうんですね」
「知らないで使ったの!?」
「はい、前にお父さんが使っていたのを真似しただけです。一度お父さん見せたんですけど、その時はお父さんがいない時は使うなって言われたんです」
「へ……へぇ。それはなんでなのかな?」

父がいないからここに来たというのは聞いているのだが、どういう家庭環境なのだろうかと疑問に思い問い掛けた。

「さあ?詳しくは覚えてないですけど、なんかそのうちちゃんと教えてやるからって言ってましたよ?だからあれで合っているかわかりませんけど」
「ううん、大体は合っていると思うわ」
「あれ強くなれるんですけど、なんだかモヤモヤして気持ち悪いんですよね」

たははと笑うニーナ。
モニカはそれまで黙ってその場で見ていたヨハン達を苦笑いしながら見るのだが、ヨハン達も苦笑いしている。

「(凄いね。僕も使えたけど、僕の場合は父さんに教えてもらった上に使えたのは一年前。でもこの子はもっと前から使えたんだろうな)」
「(おいおい、この子自身もそうだけど、たぶんこの子のお父ちゃんもきっと色々ぶっ飛んでるんだろうな)」
「(稀にみる天才というものかしら?)」

見よう見真似の独学で辿り着ける辺りにニーナの才能の片鱗を窺えた。


「あの、モニカさん!」
「えっ?なに?」

視線を落としニーナを見ると、ニーナは真剣な眼差しでモニカを見ている。
そして、意を決したように口を開いた。

「モニカさん――いえ!モニカお姉ちゃん!」
「へっ?お、お姉ちゃん!?」

突然お姉ちゃんと言われ、どうしたらいいのかわからず困惑してしまう。

「ヨハンお兄ちゃんのようにモニカお姉ちゃんもあたしのお姉ちゃんになってくれませんか!?」
「えっ!?」

いきなりの話に仰天した
まじまじと見られる目からは本気で言っているのだということが伝わって来る。

「えええぇえぇえぇぇぇええーーーーーっ!?」



あとでわかったことなのだが、良くも悪くもニーナは素直な子なだけだった。
ニーナは強さに自信があったからこそ、歳の近いモニカに完膚なきまでに敗れたことでモニカに対する態度が変わっただけ。

モニカはニーナにヨハンと一緒で突然の妹宣言をされたことでどう対応していいかわからず返事ができずにいた。

――――しかし。

「(ヨハンと二人で姉と兄、うふふっ、悪くないかも?)」

上を向いて不気味な笑みを浮かべるモニカをエレナとレインは見ている。

「(……あれ絶対に喜んでいますわね)」
「(あーあ、感情が漏れ出てるじゃないかよ)」

エレナとレインにはその表情から見事に読み取られていたのであった。

「(どうしたのだろうモニカなんか笑っているけど?)」

ヨハンだけが首を捻りながらモニカを見ている。

ニーナとの和解?を終えた頃、王都は建国祭の準備で大いに賑わっていた。

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