S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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水面下の陰謀編

第八十七話 笛の経緯

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呼び出しに応じて訪れたのは王宮の隣に建てられた大きな石造りの建物。
通常は騎士団の詰所に使用されているらしい建物なのだが、今回用事があるのはその地下に当たる部分。

衛兵に案内されるまま地下への階段を下りていく。

絢爛豪華な、煌びやかな王宮内とは明らかに一線を画するのはそこが罪人たちを投獄している場所なので豪華な装飾などの一切を必要としない。

「間もなく着きますので」

そうして程なくして地下最深部に着く。

「待っていたぞ」

檻の前で声を掛けてきたのはジャン。
隣にはモノクルを付け、白衣を着ている赤髪で背の小さな若い女性が立っていた。
女性とは初対面なので誰なのかは気にはなったのだが、それ以上に目を奪われたのは檻の中にいる人物。

「――ほぅ」

目の前の檻から声が聞こえて来る。
それまでに通って来た檻に入れられている罪人たちは、ヨハン達の姿を見ると訝しげにしている姿があったのだが、目の前にいる人物はヨハン達を見ると不敵に笑った。

「これはこれは、再び会えたことを嬉しく思います。まさか王女様自らがここに来て頂けるとは思ってもみませんでしたよ」

地下の最深部に当たるその場所は、それまでの見てきた檻とは違い、重犯罪者が入れられる堅牢な檻。

「わたくしもあなたの顔をもう一度見るとは思ってもいませんでしたわ。ですが、わたくしの方は全く嬉しくありませんがね」

邪険に言い放つエレナだが、しっかりとオルフォードの顔を見ている。

「釣れない返事ですな。 ふむ。まぁいいでしょう。それで?どういった用件でわざわざこんな辛気臭い場所まで来られたのですかな?」

「それについてだが、お前はこれをどこで手に入れたのかもう一度話してもらおうと思ってな」

ジャンがオルフォードの前に立ち、懐から取り出した物をオルフォードに見せたのだが、ヨハンとエレナとレインにはそれに見覚えがあった。

「あっ、それって……」
「あれって、もしかしてアレのこと?」
「うん。そういえばモニカとニーナは見てなかったね。あの笛を吹いてサイクロプスを呼び出したんだ」
「……そうなんだ」

ジャンが懐から取り出したのはサイクロプスを召喚したあの笛だった。

「はぁ。それについては前に話しましたが?まだ何か聞きたいことでもあるのですかね?」
「心配するな。これが最後だ」

「――あの?」

ジャンとオルフォードが話している中にヨハンが言葉を差し込む。

「ん?」

「その笛、魔道具研究所で解析するって聞いていたんですけど、もう解析は終わったんですか?」

ジャンが持っているということは、その可能性があった。
ヨハンもその笛がどういうものなのか気にはなっていたのだ。

「それについてはわっしが答えるわい」

白衣を着た女性が前に出て来る。
身長にすれば同じぐらいなので目線が丁度合った。

「えっと、あなたは?」
「彼女は魔道具研究所の所長ですわ」

エレナが女性の紹介をするのと同時に小さく耳打ちして来ると。

「少し変わった方ですけれどもね」

微妙に困り顔で笑顔を作っている。
女性はヨハンの方に近付き、手を差し出して来たので軽く握手をするとニヤリと笑い掛けられた。

「あっ、はじめまして。僕はヨハンといいます」
「うむ。はじめましてじゃなヨハンくん。わっしはここで魔道具の研究をしているメッサーナ・ナインゴランじゃ。そなたの噂は存分に聞いておるぞ」

そう話す姿は言葉と違って幼く見え、途端にグイッと引っ張られる。

「それにしても思っていたよりも童顔じゃのぉ。噂が噂なだけにもっとイカツイ奴を想像しておったのじゃが――――」

メッサーナが片手をモノクルにやり、前後左右に顔を移動させてまじまじと見るのと同時に、顔や身体をペチペチとあちこち触られるのでどう対応していいものかわからずに困惑した。

「あ、あの――」

何をしているのだろうかと問い掛けようとした直後、ガンッと鈍い音がその場で反響する。

「――ッツゥゥゥゥゥ!」
「何をしているんだお前は!」

ジャンがメッサーナに拳骨を落として、メッサーナは頭を押さえてその場に蹲った。

「――ッツゥゥ、ってて。 フンッ、何も叩かなくとも良いではないか。相変わらず物事を力づくで解決しようとしてからに」
「お前が遊んでおるからだろ」
「いやいや、つい若者を見ると嬉しくなっての」
「四十を過ぎたオバハンが何を――」

とジャンが口にした途端にメッサーナはギンッときつく睨んだところでジャンがたじろぐ。

「い、いや、なんでもない」
「うむ」

ゴホンと軽く咳払いをして、何事もなかったかのように装うのだが、それだけでもう十分だった。
エレナが苦笑いするなか、レインは考える。

「(……なるほど、妖怪の一種か)」

外見年齢に比例しない実年齢に対する見解を抱く。

「えっと、つまりナインゴランさんが――」
「メッサーナでよい」
「あっ……じゃあ。 あの、メッサーナさんがその笛の解析をしていたってことなんですよね?」

このままでは話が進まない。
とにかく話を元の軌道に戻して声を掛けると、メッサーナは笑顔になった。

「その通りじゃ。わっしがこれを解析した結果、その笛には特殊な力が備わっておっての」

「特殊な力……ですか?」

「ああ。それもかなり特殊な力じゃな。その笛はの、魔素を取り込んで蓄える事ができるのじゃ」

「魔素を……蓄える?」

「ああ。 で、だ。 その蓄えた魔素を使って魔物を召喚するというものじゃな」

「そんなことができるのですか!?」

驚きを隠せないのだが、隣に立つジャンは難しい顔をしている。

「にわかには信じられん話だがどうやらそうらしい。こやつの解析結果に及ぶ見解に関してだが、断言するものには間違いはないらしいのでな」

ジャンがヨハンの疑問に対して答えているのだが、メッサーナはその小ぶりな胸を堂々と張ってえへんとした態度を取っていた。

「となると、問題はその笛の入手経路に関してですわね?それだけ危険な魔道具をおいそれと手に入れれるものでもないのですから」

エレナが牢の中に視線を向ける。

「その通りです。エレナ様」

他の面々もエレナの視線を追う様にして牢の中、オルフォードを見た。

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