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帝都活動編
第二百二十話 アリエルの目的
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「(まぁそうなると思ってたよ)」
床に額を押し当てているアッシュ達を見る。
「あのー。そろそろ顔を上げて下さいよ」
地面にいつまでも平伏しっぱなしのアッシュ達に声を掛けた。
もうこの場には既にミモザが人数分のお茶の用意を終えている。
「あ、あほかお前! んなことできるかよっ! 目の前の、あ、相手を誰だと思ってやがるんだッ!? 声を掛けられるまで顔なんて上げられるわけねぇだろッ!」
床に顔を突っ伏したまま答えるモーズ。
小刻みに震えているのは、このままいけば確実に極刑。
「やばいやばいやばいやばい……――」
小さく呟く。
恐れが、震えが収まらない。
皇族に対して圧倒的なまでの不敬を働いた。
まさかこれほどの人物だとは想像もしていなかった。
例えどんな人物だとしても、自分達はその人物から礼をしたいと呼ばれている。
紆余曲折あり最終的にニーナとヨハンにより助けられることになったとはいえ、面倒を見ている冒険者としての活動中、世話をしたこと自体は間違いない。
事実、つい先程、目の前の人物は自分たちに対して礼を述べたのだから。
それが、目の前で起きている事象は自分たちの想像の遥か上。
いや、想像なんてできるはずがない。
偶然仲間のアッシュが見つけてきた子どもが仲間になり、行動を共にすることである程度使えることも認めた。
だが、想像以上だったのはヨハンとニーナの尋常ならざるその実力。
それだけで十分に信じられない出来事なのだが、目の前の事実が更にそれを上回る。
厳密にはその繋がりのことであり、ヨハンとニーナの強さの理由にはソレだけで納得はいった。
同時にここに来た目的であるヨハンとニーナの特別な立ち位置についても直結しているので理解する。
つまり特別な位置というのは、帝位継承権第一位であり剣聖でもあるラウルの弟子なのだということに。
理解すると同時に脂汗が止まらなかった。焦りが込み上げてくる。
チラリと横を見ると、無言のロロも同様だった。
「(……俺もロロも大概馬鹿にしたぞ?)」
謝罪で済むはずがない。
だがそうはいっても今できることはこうしてひたすらに頭を下げ続けること。
むしろそれしかできない。
「(どうしてラウルさんは何もしゃべらないんだろう?)」
チラッとラウルを見るヨハン。ラウルはしばらく無言のまま。
明らかに怒気を放っているのは隣にいるカレンの方。
「三人共そろそろ顔を上げようか」
数分の間を空けてやっと声を掛けた。
「――――ッ!」
ビクッと身体を反応させると同時に、恐る恐る顔だけを上げるアッシュ達。
「まぁ状況は大体理解した。どうやらアリエルに嵌められたみたいだな」
「い、いえ……」
アリエルが、ギルド長が嵌めて来たということの意味がもう一つ理解できない。
「さ、先程は、大変な失礼をしました。申し訳ありません!」
それでも今は謝罪を口にするしかできない。
「それにそちらにおられます妹君、姫君に対しても大変な無礼を致しました!」
再び床に擦りつける程頭を下げる。
「まぁその辺りはそれぐらいにして、ここだけの話に留めておくさ。ここからは個人として、ヨハンとニーナの師として話ができないか?」
「で、ですが…………」
目だけでチラリとヨハンを見た。
「僕からもお願いできないですか?このままだと僕たちもなんだか気が引けますよ」
「本当だよ。早くご飯食べたいのあたしは」
ヨハンとニーナの弁。
「まぁあなた達も確かに言い過ぎだとは思うけど、知らないならしょうがないわよ。そんなの気にしてたらアリエルと付き合えないわよ?」
「まったく。随分な言われようだね」
「事実でしょ?」
「違いないね」
ミモザとアリエルの軽快なやりとりに呆気に取られる。
「それにこの人立場としては偉いけど、話すと普通の人だから気にしなくていいわよ」
ニコリと微笑んだ。
「聖母だ……」
「い、いや、天使さね……」
笑顔のミモザを見て改めていくらか考えさせられ、どうするのか数瞬判断を悩ませる。
「お、おい……」
「ああ」
そこでアッシュ達はお互い顔を見合わせ合うと無言で頷き合い、ゆっくりと立ち上がり。
「「「あ、ありがとうございますっ!」」」
ラウルに向けて深々と頭を下げた。
「お兄様たちはこう言われていますが、次はありませんから」
「――ぐぅっ!」
少し気が楽になったところなのだが、差しこまれるカレンの言葉で再び胃を締め付けられる。
「これ、カレン。そもそもカレンは俺に付いて来ただけだろう」
「間違いは正すものです」
「そうか」
そうした一騒動がありながらも、ようやく一同が席に着くことになった。
「そ、それで、どうしてラウル様がここにいらっしゃるのでしょうか?」
「あと、ヨハンとニーナはどうして俺達と一緒にいたんすか?」
「ああ。まぁそこは偶然だ。俺が城で用事をしている間お前達と一緒にいたようだな。ここに来たのは今後の予定の目処が立ったから伝えに来た」
「予定の目処?」
アッシュ達は顔を見合わせる。
「五日後、ヨハンとニーナを連れて帝都を出ることになったから先に面倒を見てもらった礼をしておこうと思ってな」
「「「えっ!?」」」
突然の話に驚愕した。
そうなると確実に困ることになる。
「で、ですが、あの、俺達、今日ギルド長から依頼を受けることになって、ヨハンとニーナにいてもらわないと……」
困惑しながら口を開いた。
二人がいないとB級に上がるどころかオーガによって間違いなく殺されていた。それだけならまだ良かったのだが、そうなるとアリエルから受けた護衛依頼がどうなってしまうのか。
皇族の護衛をするという大役。
現実問題として、ヨハンとニーナがいてくれた方が正直頼りになるというのは証明されたばかり。
「そうか。だがすまんがそれには応えてやれんな」
「そ、そうですよね……」
ガックリと肩を落とすのだが、これ以上食い下がることはできない。
「だが、ラウルとその護衛依頼は無関係ではないのだがな」
「えっ!?」
「それを説明するために来たというのもあるのでね。その辺りは私が説明してやろう」
それまで黙って話を聞いていたアリエルが口を開いた。
床に額を押し当てているアッシュ達を見る。
「あのー。そろそろ顔を上げて下さいよ」
地面にいつまでも平伏しっぱなしのアッシュ達に声を掛けた。
もうこの場には既にミモザが人数分のお茶の用意を終えている。
「あ、あほかお前! んなことできるかよっ! 目の前の、あ、相手を誰だと思ってやがるんだッ!? 声を掛けられるまで顔なんて上げられるわけねぇだろッ!」
床に顔を突っ伏したまま答えるモーズ。
小刻みに震えているのは、このままいけば確実に極刑。
「やばいやばいやばいやばい……――」
小さく呟く。
恐れが、震えが収まらない。
皇族に対して圧倒的なまでの不敬を働いた。
まさかこれほどの人物だとは想像もしていなかった。
例えどんな人物だとしても、自分達はその人物から礼をしたいと呼ばれている。
紆余曲折あり最終的にニーナとヨハンにより助けられることになったとはいえ、面倒を見ている冒険者としての活動中、世話をしたこと自体は間違いない。
事実、つい先程、目の前の人物は自分たちに対して礼を述べたのだから。
それが、目の前で起きている事象は自分たちの想像の遥か上。
いや、想像なんてできるはずがない。
偶然仲間のアッシュが見つけてきた子どもが仲間になり、行動を共にすることである程度使えることも認めた。
だが、想像以上だったのはヨハンとニーナの尋常ならざるその実力。
それだけで十分に信じられない出来事なのだが、目の前の事実が更にそれを上回る。
厳密にはその繋がりのことであり、ヨハンとニーナの強さの理由にはソレだけで納得はいった。
同時にここに来た目的であるヨハンとニーナの特別な立ち位置についても直結しているので理解する。
つまり特別な位置というのは、帝位継承権第一位であり剣聖でもあるラウルの弟子なのだということに。
理解すると同時に脂汗が止まらなかった。焦りが込み上げてくる。
チラリと横を見ると、無言のロロも同様だった。
「(……俺もロロも大概馬鹿にしたぞ?)」
謝罪で済むはずがない。
だがそうはいっても今できることはこうしてひたすらに頭を下げ続けること。
むしろそれしかできない。
「(どうしてラウルさんは何もしゃべらないんだろう?)」
チラッとラウルを見るヨハン。ラウルはしばらく無言のまま。
明らかに怒気を放っているのは隣にいるカレンの方。
「三人共そろそろ顔を上げようか」
数分の間を空けてやっと声を掛けた。
「――――ッ!」
ビクッと身体を反応させると同時に、恐る恐る顔だけを上げるアッシュ達。
「まぁ状況は大体理解した。どうやらアリエルに嵌められたみたいだな」
「い、いえ……」
アリエルが、ギルド長が嵌めて来たということの意味がもう一つ理解できない。
「さ、先程は、大変な失礼をしました。申し訳ありません!」
それでも今は謝罪を口にするしかできない。
「それにそちらにおられます妹君、姫君に対しても大変な無礼を致しました!」
再び床に擦りつける程頭を下げる。
「まぁその辺りはそれぐらいにして、ここだけの話に留めておくさ。ここからは個人として、ヨハンとニーナの師として話ができないか?」
「で、ですが…………」
目だけでチラリとヨハンを見た。
「僕からもお願いできないですか?このままだと僕たちもなんだか気が引けますよ」
「本当だよ。早くご飯食べたいのあたしは」
ヨハンとニーナの弁。
「まぁあなた達も確かに言い過ぎだとは思うけど、知らないならしょうがないわよ。そんなの気にしてたらアリエルと付き合えないわよ?」
「まったく。随分な言われようだね」
「事実でしょ?」
「違いないね」
ミモザとアリエルの軽快なやりとりに呆気に取られる。
「それにこの人立場としては偉いけど、話すと普通の人だから気にしなくていいわよ」
ニコリと微笑んだ。
「聖母だ……」
「い、いや、天使さね……」
笑顔のミモザを見て改めていくらか考えさせられ、どうするのか数瞬判断を悩ませる。
「お、おい……」
「ああ」
そこでアッシュ達はお互い顔を見合わせ合うと無言で頷き合い、ゆっくりと立ち上がり。
「「「あ、ありがとうございますっ!」」」
ラウルに向けて深々と頭を下げた。
「お兄様たちはこう言われていますが、次はありませんから」
「――ぐぅっ!」
少し気が楽になったところなのだが、差しこまれるカレンの言葉で再び胃を締め付けられる。
「これ、カレン。そもそもカレンは俺に付いて来ただけだろう」
「間違いは正すものです」
「そうか」
そうした一騒動がありながらも、ようやく一同が席に着くことになった。
「そ、それで、どうしてラウル様がここにいらっしゃるのでしょうか?」
「あと、ヨハンとニーナはどうして俺達と一緒にいたんすか?」
「ああ。まぁそこは偶然だ。俺が城で用事をしている間お前達と一緒にいたようだな。ここに来たのは今後の予定の目処が立ったから伝えに来た」
「予定の目処?」
アッシュ達は顔を見合わせる。
「五日後、ヨハンとニーナを連れて帝都を出ることになったから先に面倒を見てもらった礼をしておこうと思ってな」
「「「えっ!?」」」
突然の話に驚愕した。
そうなると確実に困ることになる。
「で、ですが、あの、俺達、今日ギルド長から依頼を受けることになって、ヨハンとニーナにいてもらわないと……」
困惑しながら口を開いた。
二人がいないとB級に上がるどころかオーガによって間違いなく殺されていた。それだけならまだ良かったのだが、そうなるとアリエルから受けた護衛依頼がどうなってしまうのか。
皇族の護衛をするという大役。
現実問題として、ヨハンとニーナがいてくれた方が正直頼りになるというのは証明されたばかり。
「そうか。だがすまんがそれには応えてやれんな」
「そ、そうですよね……」
ガックリと肩を落とすのだが、これ以上食い下がることはできない。
「だが、ラウルとその護衛依頼は無関係ではないのだがな」
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