S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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学年末試験 二学年編

第 四百二十話 二回戦準備

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魔導武闘場の観戦席。教師陣たちは一回戦の評価をそれぞれ手元の評価用紙に書き込んでいる。

「やはりエルフの二人は戦力としては相当ですな」
「ええ。それに、エレナさま――っと、エレナとマリンの戦略性は抜きんでたものがありますね」
「まぁ彼女たちは有事の際に最前線を担う必要がありますので」

その為の英才教育を幼い頃より受けて来ていた。学内の授業で学ぶのは協調性と一般的な視点。

「そういう意味ではここ最近のマリンは何か心境の変化でもあったのでしょうか?」

入学当時とは大きく違う印象。明確に何が違うとは判断できないのだが、どこかこれまでのマリンとは明らかに違っている。

「その辺りはよく判断して公正にお願いしますね」

スッと姿を見せるのは眼鏡をかけた細身の男、マックス・スカーレット公爵。

「これは公爵様」

立ち上がる教師達にマックス公爵は笑顔で手を差し出し、座る様に指示した。

「気を遣わず」
「ですが」
「いやいや、今日ここに来ているのは視察という名目ですが立場を強引に使って娘の様子を見に来ただけですので」

元々見に来る気はなかったマックス・スカーレット公爵。しかし王国と学校での共同運用がなされるその新技術の試運転。そのため王国へは前日に参加者が報告されていたのだが、提出された選抜試験の名簿に目を通すと娘のマリンの名前があったことに大いに驚く。

(シェバンニ先生が私に気を遣うとは思えませんしね)

学生時代から知るシェバンニの性格上、忖度を行うとはとても思えない。さらに、逆の意味での選抜の理由、貶めるなどということはもっと考えられない。

(であればそれなりの理由があるはずです)

その理由が気になるのは親心。
どうしても見に来ずにはいられなかった。

「おや?」
「どうも」

視界の先にカレンがいる。ペコリと軽く頭を下げるカレンにマックス公爵は笑顔で隣に座った。

「カレン様もおいででしたか」
「ええ。お世話になっています」
「そういえば教師をなさっていらしたのでしたね」

マックス公爵とカレンが顔を合わせたのは来都の際の一度きり。それも挨拶程度。

「娘さんがいらっしゃるのですね」
「ええ。恥ずかしながら、このような選抜に選ばれていることが不思議で不思議で。ですので気になって仕方なく見に来てしまった次第ですよ。ご一緒させていただいても?」
「もちろんです公爵様」
「お互い気苦労が絶えませんね」
「おっしゃるとおり」

そうして視線を向ける魔導武闘場には学生達が控室から出て集まり始めていた。

「さて、ではこれより二回戦を始めますが、その前に」

シェバンニが杖を上方に掲げると再び起こる地響き。

「けっ、次は何だってんだ」

ゴンザが不満を漏らす中、地面からはぼこッと木の根が生えて来る。
次にはすぐさま背丈を大きくさせる木々の数々。ものの数十秒でその場は大森林と化した。

「やった。私向きだわ!」

周囲の景色に目を送るナナシー。目の前は深い森。

「違うわよ。あなたとサイバル、だわ」
「あっ、そっか」

森の中は自然を愛するエルフの主戦場。

「でしたら作戦が変わるわね」
「えっ? ちょっとちょっと、私は自由にさせてもらうわよ?」
「それはもちろん構いませんわ。ですがレイン。ちょっと相談に乗りなさい」
「え? 俺?」

レインは二回戦のリーダーになったとはいえ、二人に何か特別指示するつもりはなかった。
二位である現状、ここは堅実に倒されないように気を付けつつ、誰かを倒せる余裕があればそれでポイントを稼ぐつもりだった。

「どうするつもりなんだよ?」
「それは状況を見ながら考えますわ」

マリンが考える現状、エレナのチームに点差を付けられていることもさることながら、一回戦の思考が似た傾向を示していたと仮定したとしても大きくポイントを稼いでいる理由。

(まずは情報集めをしませんと)

チーム4を倒したのは自分達。そうなればチーム2が大きく稼ぐことができたのはカニエス達チーム3からしかありえない。

「まずカニエス達を探しますわよ」
「ん? あいつらをボコるのか?」
「はぁ? 相変わらずバカですわねレインは」
「な、ん、だ、と?」
「いいからレインは付いて来なさい。わたくしを護ることぐらいできるでしょ?」
「ったく、なんなんだよ」

意図が全くわからない。
そうこう話している内に高々と光の玉が上空に上がり、大きく弾ける。開戦の合図。

「じゃあ私はいくわ。何かあったら合図を送るから」
「ええ。こちらも。ですが、少なくとも3ポイントは稼ぎなさい」
「もっと稼いできてあげるわよ」

ニッと笑うナナシーは跳躍して枝の上に乗り、軽やかに跳んでいった。





「俺は行くぜ」
「うん。気を付けて」
「けっ!」

地面に唾を吐きながらゴンザは森の中に姿を消していく。

「ヨハンくん、でもどうするの?」
「とにかく、まずは誰かを倒さないことにはね」

しかしとはいってもここはもう深い森の中。誰かを探そうにも一回戦よりも見とおしが悪く遮蔽物が多い。

「ナナシーとサイバルは一番警戒しないといけないね」

地形の相性が最悪。ナナシーが屋敷で語っていたエルフのことを思い出していた。

『木や草があれば私達は一番能力を発揮できるからね』
『ふぅん。例えばどんな?』
『詳しく説明するには難しい話になるけど、周囲の草木の力を借りられるのよ』
『なるほどね。ならまた今度見せてよ』
『もちろんよ』

要は火があれば火力を増すことができる火魔法、水があれば魔力消費を抑えつつ流用できる水魔法と同じような感じで土地の属性を味方にできるのだと。

「でもモニカさんやエレナさんだって一筋縄じゃいかないよね?」
「そうだね」

だからこそ誰に遭遇しても即時対応する適応力が必要になる。
そうして学年末試験の二回戦が幕を開けた。

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