私と母のサバイバル

だましだまし

文字の大きさ
16 / 17

16 過去

しおりを挟む
大神官様の質問は両陛下も聞きたいことだったのだろう

息を潜めつつ物凄く耳を立てているのが分かった。

私もお母様が何を思い暮らしていたのか知らない。
いつもニコニコと優しいがお父様が来ると部屋に閉じこもっていた。


「んー…とねぇ」
パーティで拐われた後、お母様は逃げようと画策していたらしい。
当時、あの別宅は厳重に見張りがいたらしい。
唯一手薄なのが森の方面だったので抜けられないかと魔物について調べたりしたのもこの時だそうだ。

「使用人たちはすごく優しかったけど侯爵様に逆らえないっていつも言ってたわ」

そして侯爵と晩御飯を共にするといつも必ず物凄い眠気に襲われていたらしい。
おかしいなと思っていると妊娠が発覚。
お父様はお母様を薬で眠らせ手籠めにしていたらしい。

「それから一緒に食事を取らなくなったの。あと侯爵が来るたびに鍵の着いてる倉庫に閉じこもっていたら誰かが部屋にしっかりした内鍵を付けてくれたのよ」

そして、私が産まれたから大不作はたったの一年と少々で終わったらしい。

「もーね~可愛くて可愛くて…悲しい気持ちとか吹き飛んじゃったのよね~」
やがて、子供を置いて逃げないと判断され庭までは出てよくなったそうだ。
万が一逃げだすと私がどうなるか…と脅されたりはしていたらしいが。

私達はお互いが人質だった。


「一族郎党全て残らず斬首にいたしますわ」
怒りに満ちた声でそう言ったのは王妃様だった。
「女性を何だと…寝てる間に関係を持ち孕ませるなど…!いえ、斬首では生温いですわね。拷問にかけ死ぬまで責め苦を負わせますわ!」
「それならばまず男娼として働かせるのはいかがでしょう?」
思わず王妃様に乗っかってしまった。
「これこれシェリー…一応父親…」
「そうね、客が付かないかしら」
私の返事に珍しくお母様が呆れたような顔をした。

「我が国としては助かりましたが…ロレアル国そのものを恨んでもおかしくない扱いに思えます。男娼はともかく拷問はかけましょう」
国王様、お父様の行動にかなり引いているご様子。

「お嬢様の話を聞いてまさかと思いましたがそんなに酷かったとは…よく悲観や怒りに囚われませんでしたね…」
大神官様、唖然としていらっしゃる。

「んー、使用人たちは優しかったしシェリーが可愛かったし…まーそのうち何とかなるかなって♪実際何とかなったわ!」
いや、何とかなったというか捨てられただけなんだけど…。
メンタル強いのかポジティブなのか…本人幸せそうだから良いんだろうけど…。

「てなわけで憎いのはこの子の父親だけなの。奥様が頑張って息子ちゃんを産んだおかげで、ついでに説得してくれたおかげで解放されたし、使用人たちは私達が森を抜けられるよう準備をしてくれたわ。ジャメリアの通貨ももしかしたら皆で出し合って用意してくれたのかもしれないのよ?」
「それは…侯爵以外の処罰は望まれない、と?」
「そうよ!だから一刻も早く帰って皆を助けて!侯爵は私の前にもう現れないなら何でもいいわ。処罰受けてるところとか見たくないもの」
「ではどの様に処理したかは追って書面にて送らせて頂きます!」

おそらく夜通し馬に乗って来たであろう両陛下に早く帰れは可哀想な気もする。
大神官様もそう思われたのか伝書鳩を両陛下に貸すと話しかけていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

彼女が微笑むそのときには

橋本彩里(Ayari)
ファンタジー
ミラは物語のヒロインの聖女となるはずだったのだが、なぜか魔の森に捨てられ隣国では物語通り聖女が誕生していた。 十五歳の時にそのことを思い出したが、転生前はベッドの上の住人であったこともあり、無事生き延びているからいいじゃないと、健康体と自由であることを何よりも喜んだ。 それから一年後の十六歳になった満月の夜。 魔力のために冬の湖に一人で浸かっていたところ、死ぬなとルーカスに勘違いされ叱られる。 だが、ルーカスの目的はがめつい魔女と噂のあるミラを魔の森からギルドに連れ出すことだった。 謂れのない誤解を解き、ルーカス自身の傷や、彼の衰弱していた同伴者を自慢のポーションで治癒するのだが…… 四大元素の魔法と本来あるはずだった聖魔法を使えない、のちに最弱で最強と言われるミラの物語がここから始まる。 長編候補作品

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

さよなら聖女様

やなぎ怜
ファンタジー
聖女さまは「かわいそうな死にかた」をしたので神様から「転生特典」を貰ったらしい。真偽のほどは定かではないものの、事実として聖女さまはだれからも愛される存在。私の幼馴染も、義弟も――婚約者も、みんな聖女さまを愛している。けれども私はどうしても聖女さまを愛せない。そんなわたしの本音を見透かしているのか、聖女さまは私にはとても冷淡だ。でもそんな聖女さまの態度をみんなは当たり前のものとして受け入れている。……ただひとり、聖騎士さまを除いて。 ※あっさり展開し、さくっと終わります。 ※他投稿サイトにも掲載。

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

処理中です...