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17 未来(終話)
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3年後ー…
私達はロレアル国に戻って来ていた。
大教会の近くにあるお屋敷を両陛下から頂き暮らしている。
ちょうどあの別宅ほどの大きさで、使い慣れた家具などはそのまま運び込んでもらえた。
使用人たちも当時の彼らである。
皆、私達の無事と解放を涙を流し喜んでくれ、喜んで再度仕えてくれることとなった。
そして私は猊下が後見人となり社交デビューを果たしている。
近い内に猊下の甥に当たる公爵家の次男と結婚し、お父様の侯爵位を継ぐことになった。
あのあと、お父様と奥様は離縁した。
奥様はお父様が陛下の招いた人物を囲っているのは知っていたが「妖精姫」が相手とは知らなかったらしい。
逃げるようにご実家に帰ったようだ。
奥様の実家を継いだ兄が子宝に恵まれていなかったのもあり、息子(異母弟)は養子として後継者にしてもらえることとなったらしい。
また、侯爵家のご親戚たちは私達親子を大層大切にし、社交に不慣れな私達を色々と助けてくれている。
皆様一度地下牢に入れられたので恨まれてもおかしくないと思っていたけど「連帯責任と断絶から助けてくれた」と感謝してくださっていた。
おかげで安心して侯爵家を継ぐことが出来る。
そんな事を振り返っていると、わぁぁ…!と歓声が上がった。
今日は王都の収穫祭。
神様に豊作の感謝の舞を捧げるのはもちろんお母様。
神殿でお母様が舞うと光魔法と違う七色の輝きが妖精の粉が舞うように散らばりとても美しい。
踊り終え、人々に向かって一礼するとその光は観ていた人たちに降り注いだ。
これは浄化の光で病気や怪我、呪いや毒などに苦しむ人は症状が軽減するらしい。
「もうオバサンだから」と近隣の国に限っているがお母様はそれぞれの国に年に一度は赴き舞を奉納する暮らしをしている。
巫女姫と手分けして担当しているそうだ。
精霊姫様はご高齢のためお住まいになっている国のみ担当されているらしい。
そんな華やかな祭りを遠目で涙を流し眺める男がいた。
敢えて祭が見える場所に拘束されている。
元侯爵だったこの男は今は精神的に苦痛を受ける毎日を過ごしている。
男娼をさせても物珍しさで買った男色好きが数人いただけ、強制労働をさせても体力がなく邪魔だった。
結果、冷酷だという宰相はその二つ名に恥じない刑を生みだした。
鬱憤晴らしの道具として生きる刑である。
宰相は貴族内の派閥対立に頭を悩ませていた。
対立の原因は二つの公爵家の当主の仲の悪さである。
片方の当主の意地がすごく悪いのだ。
物凄く仕事が出来るが誰かを虐めていたい、そんな困った人物だった。
そこでその公爵にこう言ったのだ。
「あの公爵家との対立を緩和し派閥争いを軟化させるならこの元侯爵を好きに虐げていい。死なせて良いのは15年後。それさえ守れば精神を崩壊させてもよい」
公爵という立場上、人を虐げる欲求を彼なりに抑えていたらしい。
大っぴらに虐げても咎められない相手を与えられ他の人物への嫌がらせはかなり軽減された。
元侯爵の横で嬉しそうに囁く公爵。
「あの華やかに舞う妖精姫が自分だけのものだった時もあるのになぁ?いまや視界に入れてすら貰えんなぁ?」
元侯爵が悔しそうに、悲しそうに涙を流すさまを楽しそうに眺めながらネチネチと言い続けている。
公爵は身体を傷付けない。
精神を抉るように傷付けるのが好きだった。
壊れないよう時に癒やしを与え、時に安心させる。
そうして浮かんできた心をまた抉るのだ。
緩急をつけ、反応が悪くならないように。
そういう事が大層得意な人物だ。
そう、噂で耳にした。
「疲れてないかい?」
婚約者の彼が言う。
公爵家だけど対立している家とは違う、臣籍降下した王弟が当主を務める家だ。
彼の兄の代には侯爵家となる事が決まっている。
「お母様って老けないなぁって思って」
そう笑うと彼も同意してくれた。
「色々強い人だからかしらね」
「色々?」
そう、色々。
サバイバルになってもへこたれないくらいに、ね。
そう心の中で返し言葉の代わりに笑顔を見せる。
「シェリーと婚約出来て幸せだよ」
「私も今幸せっ!」
神殿から皆に手を振るお母様の笑顔を見て、私は心からそう返した。
―――――――――――――――――――――
お読み下さりありがとうございました!
拙い作品にはなりましたがエールも頂けとても嬉しかったです。
本当にありがとうございます!
私達はロレアル国に戻って来ていた。
大教会の近くにあるお屋敷を両陛下から頂き暮らしている。
ちょうどあの別宅ほどの大きさで、使い慣れた家具などはそのまま運び込んでもらえた。
使用人たちも当時の彼らである。
皆、私達の無事と解放を涙を流し喜んでくれ、喜んで再度仕えてくれることとなった。
そして私は猊下が後見人となり社交デビューを果たしている。
近い内に猊下の甥に当たる公爵家の次男と結婚し、お父様の侯爵位を継ぐことになった。
あのあと、お父様と奥様は離縁した。
奥様はお父様が陛下の招いた人物を囲っているのは知っていたが「妖精姫」が相手とは知らなかったらしい。
逃げるようにご実家に帰ったようだ。
奥様の実家を継いだ兄が子宝に恵まれていなかったのもあり、息子(異母弟)は養子として後継者にしてもらえることとなったらしい。
また、侯爵家のご親戚たちは私達親子を大層大切にし、社交に不慣れな私達を色々と助けてくれている。
皆様一度地下牢に入れられたので恨まれてもおかしくないと思っていたけど「連帯責任と断絶から助けてくれた」と感謝してくださっていた。
おかげで安心して侯爵家を継ぐことが出来る。
そんな事を振り返っていると、わぁぁ…!と歓声が上がった。
今日は王都の収穫祭。
神様に豊作の感謝の舞を捧げるのはもちろんお母様。
神殿でお母様が舞うと光魔法と違う七色の輝きが妖精の粉が舞うように散らばりとても美しい。
踊り終え、人々に向かって一礼するとその光は観ていた人たちに降り注いだ。
これは浄化の光で病気や怪我、呪いや毒などに苦しむ人は症状が軽減するらしい。
「もうオバサンだから」と近隣の国に限っているがお母様はそれぞれの国に年に一度は赴き舞を奉納する暮らしをしている。
巫女姫と手分けして担当しているそうだ。
精霊姫様はご高齢のためお住まいになっている国のみ担当されているらしい。
そんな華やかな祭りを遠目で涙を流し眺める男がいた。
敢えて祭が見える場所に拘束されている。
元侯爵だったこの男は今は精神的に苦痛を受ける毎日を過ごしている。
男娼をさせても物珍しさで買った男色好きが数人いただけ、強制労働をさせても体力がなく邪魔だった。
結果、冷酷だという宰相はその二つ名に恥じない刑を生みだした。
鬱憤晴らしの道具として生きる刑である。
宰相は貴族内の派閥対立に頭を悩ませていた。
対立の原因は二つの公爵家の当主の仲の悪さである。
片方の当主の意地がすごく悪いのだ。
物凄く仕事が出来るが誰かを虐めていたい、そんな困った人物だった。
そこでその公爵にこう言ったのだ。
「あの公爵家との対立を緩和し派閥争いを軟化させるならこの元侯爵を好きに虐げていい。死なせて良いのは15年後。それさえ守れば精神を崩壊させてもよい」
公爵という立場上、人を虐げる欲求を彼なりに抑えていたらしい。
大っぴらに虐げても咎められない相手を与えられ他の人物への嫌がらせはかなり軽減された。
元侯爵の横で嬉しそうに囁く公爵。
「あの華やかに舞う妖精姫が自分だけのものだった時もあるのになぁ?いまや視界に入れてすら貰えんなぁ?」
元侯爵が悔しそうに、悲しそうに涙を流すさまを楽しそうに眺めながらネチネチと言い続けている。
公爵は身体を傷付けない。
精神を抉るように傷付けるのが好きだった。
壊れないよう時に癒やしを与え、時に安心させる。
そうして浮かんできた心をまた抉るのだ。
緩急をつけ、反応が悪くならないように。
そういう事が大層得意な人物だ。
そう、噂で耳にした。
「疲れてないかい?」
婚約者の彼が言う。
公爵家だけど対立している家とは違う、臣籍降下した王弟が当主を務める家だ。
彼の兄の代には侯爵家となる事が決まっている。
「お母様って老けないなぁって思って」
そう笑うと彼も同意してくれた。
「色々強い人だからかしらね」
「色々?」
そう、色々。
サバイバルになってもへこたれないくらいに、ね。
そう心の中で返し言葉の代わりに笑顔を見せる。
「シェリーと婚約出来て幸せだよ」
「私も今幸せっ!」
神殿から皆に手を振るお母様の笑顔を見て、私は心からそう返した。
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お読み下さりありがとうございました!
拙い作品にはなりましたがエールも頂けとても嬉しかったです。
本当にありがとうございます!
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一気読み、嬉しいです✨
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ありがとうございます!!!