病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
1 / 70

第一話 怪我した青い小鳥

しおりを挟む
「こほぉ、こほぉ……」

 今日も咳が止まらない。このまま良くなる日は来ないのかもしれない。
 窓の外の世界は寒そうだ。ヒューと冷たい風が吹いている。
 暖かいベッドから出たら、きっともっと病気が悪くなると思う。
 そしたら、お父さんとお母さんがもっと心配する。
 僕はこのベッドから一生出ない方がいいんだ。
 もうこれ以上、誰にも迷惑かけたくない。

「ピピピィ」
「こほぉ、こほぉ……鳥さんはいいなぁ。僕も自由に空を飛べたらよかったのに……」

 青空を元気に飛び回る、三羽の茶色い小鳥が見えた。
 僕の身体はとても弱い。生まれてから一度も走ったことがない。
 体調が悪い時は家の中を歩いただけでも、とても疲れてしまう。

 だから、こうやって窓の外を眺めることしか出来ない。
 誰かが通るのを、雨が降るのを、木の緑色の葉が茶色になって落ちるのを。

「あれは……何だろう?」

 木の下、緑色の雑草に隠れて青い何かが見える。とても鮮やかな青色をしている。
 小さいからハンカチだろうか。何処かの家の洗濯物が風に飛ばされたのだろうか。

「あっ」

 でも、違うみたいだ。青い何かが動いた。よろよろと動いている。
 ジッと目をこらして見てみると、やっと何なのか分かった。

「鳥だ。怪我してるのかな?」

 ツバメみたいな細い身体をした、綺麗な青い鳥がよろよろ歩いている。
 体調が悪い時の僕と同じだ。僕も歩くのが辛い時はあんな風になる。

「どうしよう……」

 助けないと可哀想だ。
 でも、お母さんは家にいない。お父さんは仕事で家にいない日が多い。
 僕は外に出たらいけない。誰かが助けてくれるのを待つしかない。

「あっ、わぁっ、ああっ!」

 駄目だ。心配で見ていられない。今にも鳥さんは力尽きてしまいそうだ。
 歩こうとしては倒れている。誰かを待つ時間なんてない。
 僕がやるしかない。助けられるか分かんないけど、僕が助ける番が来たんだと思う。

「ぐぅぅぅ!」

 杖を頼りにベッドから立ち上がった。今日の体調は良い方だからきっと大丈夫だ。
 悪い時は村一番のお婆さんと競走しても負けるけど、今日なら良い勝負できると思う。
 それでも無理せずに一歩一歩慎重に進んでいく。
 部屋を出ると廊下だ。僕にとっては長い廊下だ。
 右手には杖、左手は壁をついて、両手で身体を支えて進んでいく。

「ハァハァ」

 ちょっと胸が苦しくなってきた。世界が回っているみたいだ。
 鳥さんよりも先に僕の方が力尽きてしまいそうだ。
 でも、今、頑張らないとダメだ。僕の人生を助けられるだけの人生で終わらせたくない。
 僕だって、誰かを助けたい。このままでいいなんて思っていない。
 僕だって、頑張れば何か出来るって信じたい。

「あとちょっと……」

 玄関の扉を開けた。右に曲がって、僕の部屋の窓に向かって歩いていく。
 もう一度右に曲がると僕の部屋の窓が見えた。その窓の先にある木の下に青い鳥がいた。
 地面に倒れている。ゆっくりだけど、僕の最大速度で向かった。

「ハァハァ、もう大丈夫だよ」

 地面に座り込むと鳥さんに笑顔で言った。
 鳥さんは目を閉じて反応がない。
 左手を伸ばして手の平に乗せようとすると……

「ピィーッ!」
「痛っ……!」

 飛び起きて鋭いクチバシで左手を突かれてしまった。
 手の平に赤い血の線が出来ている。刃物で切られた傷みたいだ。
 痛いけど、少しだけだ。引っかかれた程度の小さな傷だ。
 きっと怖い目にあったんだと思う。右手に持つ杖を捨てて、両手の手の平を見せて笑顔で言った。

「大丈夫だよ。僕は君を傷つけたりしないから。ほらねぇ?」
「…………」
 
 ジッと小さな目で見ている。
 笑顔で見つめていると、その目を閉じて、地面に寝てしまった。
 どうやら分かってくれたみたいだ。両手の手の平に優しく乗せると立ち上がった。
 傷薬なら人間用ならある。あと用意する物は水と食べ物だ。
 しっかり食べて休めば元気になるとお母さんも言っている。

 この日から僕の生活はちょっとだけ変わった。僕の生活にピーちゃんが加わった。
 食べ物はパンクズよりも木の実の方が好きみたいだ。
 大きな木の実は砕いて、食べやすい大きさにするのが僕の仕事だ。
 窓の外を眺めるよりも、ピーちゃんの為に頑張る方がずっと楽しい。

 でも、ピーちゃんが元気になったら、さよならしなくちゃならない。
 今は楽しいけど、その日が来ると思うとちょっと寂しいなぁ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...