病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第二十一話 真っ黒な剣が出てきた

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 ほぼ一本道の洞窟を四人とピーちゃんは順調に進んでいく。
 カマキリ、コウモリを倒して、新しく現れたのは茶色のオオトカゲだった。

『ドラゴンが現れた! ドラゴンが現れた!』

 ピーちゃんだけが騒いでいたらしいけど、おじさん達がさっさと倒してしまった。
 まだ灰色ドラゴンに攻撃が通用しなかったショックが残っていたんだね。

「まだまだ先は長そうだな。やっぱり鳥に取って来させるか?」

 魔物を倒し疲れたのか、口顎ひげおじさんが仲間に訊いている。
 ピーちゃんの一番宝箱持ち逃げチャンスの到来だ。

「それはやめた方がいい。宝箱を開けた奴の欲しい物が出る場合もある。鳥のしょうもない願いが叶ったら最悪だ」
「だったら宝箱がある場所を探してもらおうぜ。分かれ道があるたびに全部調べていたら疲れちまう」
「それならコウモリも全部倒してもらおうぜ。空飛ぶ魔物を倒すのは面倒だ」
「おっ、それいいな! 宝箱を見つける頃にはしょうもない願いも叶ってるだろうよ!」
『…………』

 ピーちゃん、馬鹿にされて笑われているけど、やるの?
 便利な雑用係だと思われ始めているよ。アイツと同じになるよ。

『分かった。やってみる』
「おっ、さすがだな! アトラスにも見習ってほしいぜ!」

 えっ、ピーちゃんやるの? 反抗期終わったの?
 信じられないことが起きた。あのピーちゃんが本当にやるみたいだ。
 おじさん達から離れると、一人で洞窟の奥を目指して飛んでいく。

 やっぱり歩くようも早い。
 倒せないカマキリとトカゲは無視して進み、コウモリはバードストライクで倒していく。
 見たことない金色のオオサソリが現れたら当然無視だ。
 ピーちゃんは勝てる相手としか戦わない。

『う~~ん、多分こっち』

 そして、分かれ道が現れたら適当に選んで進み、何もない行き止まりにぶつかったら、舌打ちして引き返す。
 分かれ道を間違えて、来た道を戻っておじさん達と出会ったら、『この先、左。右は行き止まりだった』とごまかして何度も引き返した。

『あっ、なんかある』

 そんな適当に頑張ったピーちゃんの前にやっと現れた。
 広い行き止まりの部屋にたどり着くと、その部屋に真っ赤な色の宝箱が置かれていた。
 フタの部分が半円で、箱の部分が四角い宝箱だ。

『これが一番宝箱かな? 開けてみよ』

 良いねえ~! 僕、ピーちゃんはいつかはやる男だと思っていたよ。
 宝箱の上に降りると、いっさい迷わずにフタをクチバシで持ち上げた。
 パカッと開いた宝箱の中には『剣』が入っていた。
 
『うわぁ! 真っ黒だ!』

 ピーちゃんは剣を見て叫んだ。
 剣の見た目はまるで焦げた木剣だ。
 剣の形をした炭の塊だ。

『これ、いらない』

 僕もゴミはいらないかな。宝箱から現れたのはゴミだった。
 収納袋に炭剣を入れるとピーちゃんは来た道を引き返した。
 来る時にコウモリは倒したから、帰りはスイスイ飛んでいく。
 しばらく進んでいくと、休んでいるおじさん達の姿が見えてきた。

「また戻ってきた。おい、また分かれ道か?」

 口顎ひげおじさんが呆れた顔で立ち上がると聞いてきた。

『違う。宝箱見つけた』
「本当か⁉︎ よし、そこまで案内しろ!」

 でも、ピーちゃんの報告を聞いて、すぐに表情を明るく変えた。

『行かなくてもいい。もう取ってきた』
「…………何だと?」

 でも、それもピーちゃんの次の報告で暗くなった。
 他のおじさん達の表情も取ってきたゴミに負けないぐらい真っ暗だ。

「開けるなって言ったよな」

 ほら、金髪おじさん怒っているよ。めっちゃ怒っているよ。

『言われたけど、守るとは言ってない』
「この鳥野郎がぁぁあ!」

 ピーちゃん、まだ反抗期終わってなかったんだね。
 おじさん達の顔見てみなよ。僕、見えないけど、ブチ切れてるよ。

「ぐっ、済んだことは仕方ない。それで何が入っていたんだ」

 さすがはおじさん、大人だ。
 頑張ってキレるの我慢するとピーちゃんに訊ねた。

『剣が入っていた。真っ黒な剣が入ってた』
「剣か。だったらジュノスのもんだな」
「⁉︎」
「悪いな。ありがたく貰っておく。さあ、渡してくれ」

 あれ? アイツも剣が欲しいって言ってたのに、金髪おじさんの物になるらしい。
 アイツも驚いた顔をして、金髪おじさんを見ている。

『待って。そいつも剣が欲しいって言ってた』

 ピーちゃんもおかしいと思ったのか、アイツの方を見てからおじさん達に言った。

「ああ、そうだったな。わりいわりい。そういえば宝箱を取ってきた礼もまだだったな。マルス、鳥に死ぬほど驚く礼をしてやってくれ」
「ん? ああ、お礼ねぇ~! ちょっと鳥、こっちに来てくれ」
『お礼って何? 何かくれるの?』

 やっぱりおかしかったみたいだ。
 おじさん達が笑顔になると、杖おじさんがピーちゃんに近くに来るように言った。
 言われたとおりにピーちゃんが近づいていくと、手に持つ杖をピーちゃんに向けた。

「ああ、くれてやるよ。”ファイヤーボルト”」
『ピギャ!』

 炎の稲妻がピーちゃんの身体を焼き貫いた。
 ピーちゃんが黒焦げになって地面に墜落した。

「な、何するんですか⁉︎」

 それにアイツが驚いた。
 黒焦げピーちゃんを見てから、おじさん達に聞いた。

「慌てるな。最初からこうする予定だ。コイツに新生ダンジョンがあると報告されると困るだろ。一番宝箱を開けたら、他の宝箱が出るようになる。報告されて他の冒険者と宝箱や魔物の取り合いになるのは面倒だ」

 アイツに説明しながら、金髪おじさんがピーちゃんの収納袋の中を探している。
 
「おっ、これか」

 見つけたようだ。収納袋から真っ黒な剣を取り出した。
 剣をしばらく見つめると軽く振り回した。

「むうっ! 魔法剣か!」

 すると、剣が炎に包まれた。
 それを見て金髪おじさんが子供のように驚き喜んだ。

『ぐぅぅぅ! ま、魔法の剣ならソイツのだよね……』
「まだ生きていたか。ちょうどいい。アトラス、この鳥をこの剣で殺せ」
「えっ?」
「えっ、じゃねえよ。俺達の仲間なら出来るだろ。出来ないならお前も殺す。共犯になるか、死ぬか選べ」
「そ、そんな……」

 良かった。ピーちゃん、生きていた。
 でも、ピンチは継続中だ。
 金髪おじさんがアイツに炎が消えて炭剣に戻った剣を手渡して言った。
 アイツが戸惑うと、口顎ひげおじさんが脅してきた。
 アイツも絶体絶命のピンチだ。
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