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リレーするキスのパズルピース
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――――真っ暗になった画面。独特の音階で、奥行きがあり少し低めの男の響きが、高音域で1音だけ裏声に変わったりをして、メロディーをフリーに歌っていた。
だが、バックで奏でられていたストリングスやドラムの音が一旦、スーッと伸びきって静かになると、しっとりとした歌が始まった。
「♪今ここで みんなで
恋するのは 前から決まってたこと
憎しみや妬みなんかでは
消せない本当の心は♪」
――――画面の左側、三分の二に、真紅と黒の布地のアップが突然映った。それは奥へすうっと引かれていって、颯茄が現れ、自分の胸にそれを置いて、まるで服を購入する時にあてがうようにした。
「あぁ~、躾隊の制服ってこうなってるんですね? っていうか、なんで、退隊した夕霧さんが持ってるんですか?」
物語の資料として、見せてもらっていた颯茄。今は武道家で家にいて、勤めに行っていない袴姿の夫に、素朴な疑問をぶつけた。
「記念にもらった」
夫たちの昔を知っている颯茄は、大きくうなずいた。
「そうですか。十四年も働いたんですもんね」
「そうだ」
なかなかお目にかかれない素晴らしい生地。神がかりなデザイン。しかも、夕霧命のイケメンぶり。それを妄想の世界で足し算してしまった。颯茄は思わず感嘆の吐息をもらした。
「これを着た夕霧さん、似合ったでしょうね?」
隣で聞いていた光命の遊線が螺旋を描く声が、即座に響き渡った。
「えぇ、とても似合っていましたよ」
夫と言ったら、このペアー。というか、焉貴が言っていたように、
『夕霧~、光~、チュ~!』
を毎日繰り返すほど、ラブラブなふたり。颯茄はその間に立って、ムンクの叫びのように口をぱかっと開けて、冷静な水色の瞳をじっと見つめた。
「あぁ、光さんが恋に落ちたお姫さまになったように見えるのは気のせいだろうか~~~~っっっっ!!!!」
颯茄の声の響きが小さくなってゆくと、画面の右側に下から白い文字が流れ始めた――――
=出演者=
独健/明智 独健
貴増参/明智 貴増参(火炎不動明王)
明引呼/明智 明引呼(孔雀大明王)
――――どこまでも突き抜けてゆくような青空。はらはらと舞い散る粉雪のような桜の花びら。クレーンのカメラが上から下へ降りてゆく。その前には、紫のマントとターコイズブルーのリボン。全体的に白を基調にした制服を着た独健がいた。
だが、彼のはつらつとした若草色の瞳は、今や真剣そのもの。少し鼻にかかる声が出かかるが、
「こっ、こっ、こっ、こちら……こっ、ちらは……」
カミカミのセリフ。しかも、物語の一番最初の場面。颯茄がパッと立ち上がって、大声で指示を出した。
「独健さん、ゆっくりでいいんで……」
仕事を休まされた上に、制服だけはちゃっかり使われている状態。独健のひまわり色の短髪はくるっと後ろに振り返った。
「何で、結婚したら、演技することになったんだ?」
颯茄は気にした様子もなく、独健の真正面まですっと近づいて、有無を言わせない感じで言った。
「これからも、ドシドシ出てもらうんで、覚悟してください」
「颯って、結構、スパルタだったんだな」
穏やかな日差しの中に、独健の明智家ハリケーンに巻き込まれっぱなしの独り言が弱々しく舞い上がった――――
=出演者=
孔明/明智 孔明
月命/明智 月命
焉貴/明智 焉貴
――――台本を見つめている颯茄の隣に、聖輝隊の制服が立っていた。深緑のマントとオレンジ色のリボン。白を基調にした服を着た貴増参。独健とは違って、特に驚くこともなく、いや割と楽しんじゃってる感で、ある固有名詞の話をし始めた。
「学校のクラス名をここに使ったんですか?」
「はい、桜咲いてるし、花つながりだからいいと思って……お花畑でランララ~ン♪組」
ロッキングチェアに身を任せていた明引呼のしゃがれた声が、自分のセリフについて口にした。
「デパートの名前にも使ってやがんぜ」
「そこも使っちゃいました。宇宙の平和を守ろうぜ組」
颯茄は台本から顔を上げると、
「でも、あれは使ってないです」
貴増参と明引呼は同時に聞き返した。
「どちらですか?」
「あぁ?」
女装教師がいるくらいである。もっと変な先生も実在する。颯茄の口から出てきたのは、どんな先生だと思わず叫んでしまうような話だった。
「正義の味方は正体を知られてはいけないから、先生の素顔を生徒の誰も知らないって話は、今回は使ってません」
「僕がやりましょうか?」
貴増参の意味不明なオプションがつきそうだったが、明引呼が別の人物に振った。
「月にやらしとけよ。カエル被ってたんだからよ」
十四年前はカエル先生と呼ばれていたのだ、月命は。マゼンダ色の長い髪とニコニコの笑顔が画面の端から入ってきた。
「呼びましたか~?」
さすが地獄耳。聞きつけてきた。颯茄は気にした様子もなく、
「学校のクラス名の話です」
「今回出てませんでしたね、隊長、報告します!組は」
颯茄は困ったように頭をぽりぽりとかいた。
「それはちょっと、用途がなかったので、お休みです」
青空を見上げると、兄貴の部下のコンドルがヒュルルーと飛んでゆくのが見えた――――
だが、バックで奏でられていたストリングスやドラムの音が一旦、スーッと伸びきって静かになると、しっとりとした歌が始まった。
「♪今ここで みんなで
恋するのは 前から決まってたこと
憎しみや妬みなんかでは
消せない本当の心は♪」
――――画面の左側、三分の二に、真紅と黒の布地のアップが突然映った。それは奥へすうっと引かれていって、颯茄が現れ、自分の胸にそれを置いて、まるで服を購入する時にあてがうようにした。
「あぁ~、躾隊の制服ってこうなってるんですね? っていうか、なんで、退隊した夕霧さんが持ってるんですか?」
物語の資料として、見せてもらっていた颯茄。今は武道家で家にいて、勤めに行っていない袴姿の夫に、素朴な疑問をぶつけた。
「記念にもらった」
夫たちの昔を知っている颯茄は、大きくうなずいた。
「そうですか。十四年も働いたんですもんね」
「そうだ」
なかなかお目にかかれない素晴らしい生地。神がかりなデザイン。しかも、夕霧命のイケメンぶり。それを妄想の世界で足し算してしまった。颯茄は思わず感嘆の吐息をもらした。
「これを着た夕霧さん、似合ったでしょうね?」
隣で聞いていた光命の遊線が螺旋を描く声が、即座に響き渡った。
「えぇ、とても似合っていましたよ」
夫と言ったら、このペアー。というか、焉貴が言っていたように、
『夕霧~、光~、チュ~!』
を毎日繰り返すほど、ラブラブなふたり。颯茄はその間に立って、ムンクの叫びのように口をぱかっと開けて、冷静な水色の瞳をじっと見つめた。
「あぁ、光さんが恋に落ちたお姫さまになったように見えるのは気のせいだろうか~~~~っっっっ!!!!」
颯茄の声の響きが小さくなってゆくと、画面の右側に下から白い文字が流れ始めた――――
=出演者=
独健/明智 独健
貴増参/明智 貴増参(火炎不動明王)
明引呼/明智 明引呼(孔雀大明王)
――――どこまでも突き抜けてゆくような青空。はらはらと舞い散る粉雪のような桜の花びら。クレーンのカメラが上から下へ降りてゆく。その前には、紫のマントとターコイズブルーのリボン。全体的に白を基調にした制服を着た独健がいた。
だが、彼のはつらつとした若草色の瞳は、今や真剣そのもの。少し鼻にかかる声が出かかるが、
「こっ、こっ、こっ、こちら……こっ、ちらは……」
カミカミのセリフ。しかも、物語の一番最初の場面。颯茄がパッと立ち上がって、大声で指示を出した。
「独健さん、ゆっくりでいいんで……」
仕事を休まされた上に、制服だけはちゃっかり使われている状態。独健のひまわり色の短髪はくるっと後ろに振り返った。
「何で、結婚したら、演技することになったんだ?」
颯茄は気にした様子もなく、独健の真正面まですっと近づいて、有無を言わせない感じで言った。
「これからも、ドシドシ出てもらうんで、覚悟してください」
「颯って、結構、スパルタだったんだな」
穏やかな日差しの中に、独健の明智家ハリケーンに巻き込まれっぱなしの独り言が弱々しく舞い上がった――――
=出演者=
孔明/明智 孔明
月命/明智 月命
焉貴/明智 焉貴
――――台本を見つめている颯茄の隣に、聖輝隊の制服が立っていた。深緑のマントとオレンジ色のリボン。白を基調にした服を着た貴増参。独健とは違って、特に驚くこともなく、いや割と楽しんじゃってる感で、ある固有名詞の話をし始めた。
「学校のクラス名をここに使ったんですか?」
「はい、桜咲いてるし、花つながりだからいいと思って……お花畑でランララ~ン♪組」
ロッキングチェアに身を任せていた明引呼のしゃがれた声が、自分のセリフについて口にした。
「デパートの名前にも使ってやがんぜ」
「そこも使っちゃいました。宇宙の平和を守ろうぜ組」
颯茄は台本から顔を上げると、
「でも、あれは使ってないです」
貴増参と明引呼は同時に聞き返した。
「どちらですか?」
「あぁ?」
女装教師がいるくらいである。もっと変な先生も実在する。颯茄の口から出てきたのは、どんな先生だと思わず叫んでしまうような話だった。
「正義の味方は正体を知られてはいけないから、先生の素顔を生徒の誰も知らないって話は、今回は使ってません」
「僕がやりましょうか?」
貴増参の意味不明なオプションがつきそうだったが、明引呼が別の人物に振った。
「月にやらしとけよ。カエル被ってたんだからよ」
十四年前はカエル先生と呼ばれていたのだ、月命は。マゼンダ色の長い髪とニコニコの笑顔が画面の端から入ってきた。
「呼びましたか~?」
さすが地獄耳。聞きつけてきた。颯茄は気にした様子もなく、
「学校のクラス名の話です」
「今回出てませんでしたね、隊長、報告します!組は」
颯茄は困ったように頭をぽりぽりとかいた。
「それはちょっと、用途がなかったので、お休みです」
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