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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
心霊探偵と心霊刑事/2
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崇剛はどこか遠くを見ているような瞳で、次の写真へ手をかけた。ソバージュの長い髪をした女が微笑んでいるものだった。同じようにして、あっという間に解析した。
「恩田 霧子、没二十五歳、七ヶ月。九月十日生まれ。死亡時刻は、十四年前の四月十一日、日曜日、十七時十六分十二秒。転落死亡事故二件目、恩田さんの二番目の奥様」
次々と出てくる、原因が同じ死亡事故。それでも臆することなく、何の感情も交えず、崇剛は次の写真へ手をかけた。ストレート髪の控えめな女が写っていた。
「恩田 涼子、没二十四歳、四ヶ月、十二月五日生まれ。死亡時刻は、六年前の四月十五日、日曜日、十七時十六分四十七秒。転落死亡事故三件目、恩田さんの三番目の奥様」
そうして、最後の写真へとたどり着いた。缶にぶつかって傾いていたものに、神経質な指先がかけられようとした時、崇剛の動きがふと止まった。
(死装束の女……)
浮かび上がる四桁の数字。向きを正しながら、芯の通った綺麗な顔立ちの女の写真が、涙で少しだけにじむ。
(間に合わなかった……)
崇剛は後悔する。霊体を切断されなければ、結果は違ったのかもしれないと。それでも、冷静という名の盾で、激情という獣は押さえ込まれる。
(もしも……という人生はありません。起きてしまったことを、後悔しても始まりません)
あんなに知りたがった死装束の女のデータを、崇剛はお悔みの心とともに口にした。
「恩田 千恵、没三十二歳、六ヶ月、十月二十一日生まれ。転落した日時は、四月十七日、日曜日、十七時十六分九秒。転落事故一件、恩田さんの四番目の奥様」
崇剛はいつの間にか、神秘的な光を放つステンドグラスの前に立っていた――。
荘厳なパイプオルガンの音色は、不浄を洗い流すように奏でられていたが、あたりはいきなり真っ暗となり、不協和音が爆風のように吹き荒び、
「早く助けて。私はもう……」
千恵のか細く悲痛の叫びが上がると、頭上から一筋のスポットライトが差した。まるで成仏するように彼女は吸い込まれ、消え去った。
冷静な水色の瞳で、血色のよい千恵の写真をじっと見つめていた。
(あちらの夢は人の死期を知らせるものなのです)
子供の頃はずいぶんと悩まされたものだ。もうすぐ死ぬ人がわかってしまうのだから。それを止める手立ては、人間である自分にはないのだから。
ただただ神の御心のままに、見ているしかできなかった。例え、それを告げたとしても、相手は怒り出すか、笑い飛ばすしかしない。
そのうち、うとまれるようになったのだ。今はもっぱら、自身のうちに留めておく、千里眼のひとつだ。
写真から読み取れるのは、助けを求めていていた女は転落事故であって、直接の死因ではない。聖霊師は細かい情報を知りたがった。
「千恵さんは何が原因で亡くなったのですか?」
「白血病だ」
不治の病と聞いて、崇剛はさらに質問を重ねようとしたが、国立が先制攻撃を放った。
「いつ死んだか当ててみやがれ」
挑むようなブルーグレーの鋭い眼光を、冷静な水色の瞳で真正面から受け止めたが、崇剛はくすりと笑った。
「仕方がありませんね。教えていただけないのですね、ご存知なのに」
いつもなら右手で、後れ毛をかき上げるのだが、上着の下から出すことは控えた。悪戯好きという光が、崇剛の目に密かに宿る。
様々な時刻に関するデータを必要な順番で取り出す。
「恩田 元は昨日の二十時過ぎに釈放されたと言っていました。本日十八時から通夜があります。そうなると、前日の通夜の開始時刻には間に合わない可能性が非常に高いです。従って、日付けは昨日の四月二十八日、木曜日です。病院から聖霊寮への距離から考えて、連絡が聖霊寮へきて、恩田 元の釈放の手続きを取り、釈放した時刻が二十時過ぎですから、千恵さんが亡くなった時刻は――」
崇剛はあごに当てていた手をとき、優雅な笑みで国立を見つめ返した。
「昨日、十八時二十七分三十八秒前後ではありませんか?」
「ジャスト! 一秒もずれていやがらねえ」
「恩田 霧子、没二十五歳、七ヶ月。九月十日生まれ。死亡時刻は、十四年前の四月十一日、日曜日、十七時十六分十二秒。転落死亡事故二件目、恩田さんの二番目の奥様」
次々と出てくる、原因が同じ死亡事故。それでも臆することなく、何の感情も交えず、崇剛は次の写真へ手をかけた。ストレート髪の控えめな女が写っていた。
「恩田 涼子、没二十四歳、四ヶ月、十二月五日生まれ。死亡時刻は、六年前の四月十五日、日曜日、十七時十六分四十七秒。転落死亡事故三件目、恩田さんの三番目の奥様」
そうして、最後の写真へとたどり着いた。缶にぶつかって傾いていたものに、神経質な指先がかけられようとした時、崇剛の動きがふと止まった。
(死装束の女……)
浮かび上がる四桁の数字。向きを正しながら、芯の通った綺麗な顔立ちの女の写真が、涙で少しだけにじむ。
(間に合わなかった……)
崇剛は後悔する。霊体を切断されなければ、結果は違ったのかもしれないと。それでも、冷静という名の盾で、激情という獣は押さえ込まれる。
(もしも……という人生はありません。起きてしまったことを、後悔しても始まりません)
あんなに知りたがった死装束の女のデータを、崇剛はお悔みの心とともに口にした。
「恩田 千恵、没三十二歳、六ヶ月、十月二十一日生まれ。転落した日時は、四月十七日、日曜日、十七時十六分九秒。転落事故一件、恩田さんの四番目の奥様」
崇剛はいつの間にか、神秘的な光を放つステンドグラスの前に立っていた――。
荘厳なパイプオルガンの音色は、不浄を洗い流すように奏でられていたが、あたりはいきなり真っ暗となり、不協和音が爆風のように吹き荒び、
「早く助けて。私はもう……」
千恵のか細く悲痛の叫びが上がると、頭上から一筋のスポットライトが差した。まるで成仏するように彼女は吸い込まれ、消え去った。
冷静な水色の瞳で、血色のよい千恵の写真をじっと見つめていた。
(あちらの夢は人の死期を知らせるものなのです)
子供の頃はずいぶんと悩まされたものだ。もうすぐ死ぬ人がわかってしまうのだから。それを止める手立ては、人間である自分にはないのだから。
ただただ神の御心のままに、見ているしかできなかった。例え、それを告げたとしても、相手は怒り出すか、笑い飛ばすしかしない。
そのうち、うとまれるようになったのだ。今はもっぱら、自身のうちに留めておく、千里眼のひとつだ。
写真から読み取れるのは、助けを求めていていた女は転落事故であって、直接の死因ではない。聖霊師は細かい情報を知りたがった。
「千恵さんは何が原因で亡くなったのですか?」
「白血病だ」
不治の病と聞いて、崇剛はさらに質問を重ねようとしたが、国立が先制攻撃を放った。
「いつ死んだか当ててみやがれ」
挑むようなブルーグレーの鋭い眼光を、冷静な水色の瞳で真正面から受け止めたが、崇剛はくすりと笑った。
「仕方がありませんね。教えていただけないのですね、ご存知なのに」
いつもなら右手で、後れ毛をかき上げるのだが、上着の下から出すことは控えた。悪戯好きという光が、崇剛の目に密かに宿る。
様々な時刻に関するデータを必要な順番で取り出す。
「恩田 元は昨日の二十時過ぎに釈放されたと言っていました。本日十八時から通夜があります。そうなると、前日の通夜の開始時刻には間に合わない可能性が非常に高いです。従って、日付けは昨日の四月二十八日、木曜日です。病院から聖霊寮への距離から考えて、連絡が聖霊寮へきて、恩田 元の釈放の手続きを取り、釈放した時刻が二十時過ぎですから、千恵さんが亡くなった時刻は――」
崇剛はあごに当てていた手をとき、優雅な笑みで国立を見つめ返した。
「昨日、十八時二十七分三十八秒前後ではありませんか?」
「ジャスト! 一秒もずれていやがらねえ」
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