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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Karma-因果応報-/14
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先進国の情報が、発展途上国に正しく入ってきているとは限らない。ここにも可能性というものは潜んでいて、崇剛はシュトライツ王国の今までの情勢がどうだったのか、国民はどんな想いで暮らしているのかを、正確に把握したかった。
それをよく知っている人物のうちひとりは、あのダルレという教祖なのだ。集団心理というものは、采配ひとつで、白を黒に簡単に変えるのだ。
千年続いていたとしたって、崩壊してもおかしくないのだった。
崇剛の冷静な頭脳と千里眼の透視能力がどれだけ優れているのか、元はわかるはずもなく、顔を真っ赤にして椅子からいきなり立ち上がり、聖霊師へ指を突きつけた。
「あなたは俺を脅してる! 絶対にそうだ!」
「なぜ、私があなたを脅すのですか? そちらにどのような意味があるのですか? 教えていただけませんか?」
三手連続で鮮やかに打ち込み、スタイリッシュにチェックメイトを決めた、崇剛の心のうちは、
(なぜ、あなたは私に脅すという言葉を使ったのか、自身で気づいていますか?)
元の生き方は糸のほつれがあちこちに見えているのだ。見る人が見れば。
そんな繊細なことに気づく暇もなく、三つも一気に質問されてしまった元は、突き出していた指を力なく引っ込め、落ち着きなくあたりを見渡した。
「そ、それは……。こいつにどんな得があるんだ?」
罠を仕掛けるという快楽に囚われているが、聖書を読み、心優しい人たちの慈愛の中で、澄んだ心で物事を見続けていた崇剛。
優雅な神父は両肘を膝へ落とし、身を前へ乗り出した。胸のロザリオが肌から離れ、シルクのブラウスのぶつかる、犯人に懺悔させるかのように。
神父の中性的な唇から、瞬間凍結させるような非常に冷たい声が放たれた。
「人を脅す――最低の人間がする行為です。相手の心を物のように縛りつけ、本人が嫌がり傷つくことを平気でするのですから。違いますか? 悪を絶対に許さない教えのキリスト教圏では、悪烈極まりない行為です」
「お、俺を侮辱する気かっ!!」
元は醜くも、野蛮に大声を張り上げ、崇剛を罵倒しようとした。
崇剛の腰元には、物質界でも通用する、聖なるダガーがある。しかしそれさえも、聖霊師は理論武装という別の武器を使い、スマートに刃物はさけた。
「逆ギレ……そちらも悪の行為です。なぜなら、受け入れられない事実から逃げるために、怒鳴り散らすことで相手を怯えさせ現実逃避をするからです。ですが、事実は事実です。過去は変えられません。あなたが前世で行った百五十六人を殺したという罪は取り消しにはできませんよ。なぜ、意味のない怒りを人へぶつけるのですか?」
声を荒げるわけでもなく、人を見下すでもなく、崇剛の冷静な水色の瞳は、悪に魂を売り飛ばした元の瞳へ真っ直ぐ向けられていた。
「ぬぐぐっ!」
元は言い負かされて、とうとう何も返せなくなってしまった。千里眼の持ち主は全てを見透かすように、悪に下った者をじっと捉えた。
「自身ではうまく己の心の醜さを隠せたように思っているつもりかもしれませんが、言動の端々で霊層――すなわち魂の透明度は相手に伝わるものです。あなたは先ほど私に対して『脅す』という言葉を使いました。そちらは、あなた自身が他の人に対して同じことを行っている、もしくは思っていると公言しているようなものです。したことがなければ、そちらのような発想さえ浮かばないと思いますが、違いますか?」
「誰でもそう思っているだろう!」
元はごまかそうとしたが、神父として多くの人々と接してきた崇剛は、人の価値観も様々だとよく知っていた。
「思っていない方もたくさんいらっしゃいますよ。人は自身の価値観で他人を見ようとする傾向が強いです。下から上を見ることはできません。己の中に上のレベルがないからです。しかしながら、上から下を見ることはできます。なぜなら、そちらは自身が通ってきた道だからです」
長い説教を終えたところで、人の力ではどうにも動かせない、未来のひとつを、崇剛は容疑者はにもう一度はっきりと提示した。
「よろしいですか? シュトライツ王国は崩壊します。従って、保険金は入ってこないかもしれませんよ」
それをよく知っている人物のうちひとりは、あのダルレという教祖なのだ。集団心理というものは、采配ひとつで、白を黒に簡単に変えるのだ。
千年続いていたとしたって、崩壊してもおかしくないのだった。
崇剛の冷静な頭脳と千里眼の透視能力がどれだけ優れているのか、元はわかるはずもなく、顔を真っ赤にして椅子からいきなり立ち上がり、聖霊師へ指を突きつけた。
「あなたは俺を脅してる! 絶対にそうだ!」
「なぜ、私があなたを脅すのですか? そちらにどのような意味があるのですか? 教えていただけませんか?」
三手連続で鮮やかに打ち込み、スタイリッシュにチェックメイトを決めた、崇剛の心のうちは、
(なぜ、あなたは私に脅すという言葉を使ったのか、自身で気づいていますか?)
元の生き方は糸のほつれがあちこちに見えているのだ。見る人が見れば。
そんな繊細なことに気づく暇もなく、三つも一気に質問されてしまった元は、突き出していた指を力なく引っ込め、落ち着きなくあたりを見渡した。
「そ、それは……。こいつにどんな得があるんだ?」
罠を仕掛けるという快楽に囚われているが、聖書を読み、心優しい人たちの慈愛の中で、澄んだ心で物事を見続けていた崇剛。
優雅な神父は両肘を膝へ落とし、身を前へ乗り出した。胸のロザリオが肌から離れ、シルクのブラウスのぶつかる、犯人に懺悔させるかのように。
神父の中性的な唇から、瞬間凍結させるような非常に冷たい声が放たれた。
「人を脅す――最低の人間がする行為です。相手の心を物のように縛りつけ、本人が嫌がり傷つくことを平気でするのですから。違いますか? 悪を絶対に許さない教えのキリスト教圏では、悪烈極まりない行為です」
「お、俺を侮辱する気かっ!!」
元は醜くも、野蛮に大声を張り上げ、崇剛を罵倒しようとした。
崇剛の腰元には、物質界でも通用する、聖なるダガーがある。しかしそれさえも、聖霊師は理論武装という別の武器を使い、スマートに刃物はさけた。
「逆ギレ……そちらも悪の行為です。なぜなら、受け入れられない事実から逃げるために、怒鳴り散らすことで相手を怯えさせ現実逃避をするからです。ですが、事実は事実です。過去は変えられません。あなたが前世で行った百五十六人を殺したという罪は取り消しにはできませんよ。なぜ、意味のない怒りを人へぶつけるのですか?」
声を荒げるわけでもなく、人を見下すでもなく、崇剛の冷静な水色の瞳は、悪に魂を売り飛ばした元の瞳へ真っ直ぐ向けられていた。
「ぬぐぐっ!」
元は言い負かされて、とうとう何も返せなくなってしまった。千里眼の持ち主は全てを見透かすように、悪に下った者をじっと捉えた。
「自身ではうまく己の心の醜さを隠せたように思っているつもりかもしれませんが、言動の端々で霊層――すなわち魂の透明度は相手に伝わるものです。あなたは先ほど私に対して『脅す』という言葉を使いました。そちらは、あなた自身が他の人に対して同じことを行っている、もしくは思っていると公言しているようなものです。したことがなければ、そちらのような発想さえ浮かばないと思いますが、違いますか?」
「誰でもそう思っているだろう!」
元はごまかそうとしたが、神父として多くの人々と接してきた崇剛は、人の価値観も様々だとよく知っていた。
「思っていない方もたくさんいらっしゃいますよ。人は自身の価値観で他人を見ようとする傾向が強いです。下から上を見ることはできません。己の中に上のレベルがないからです。しかしながら、上から下を見ることはできます。なぜなら、そちらは自身が通ってきた道だからです」
長い説教を終えたところで、人の力ではどうにも動かせない、未来のひとつを、崇剛は容疑者はにもう一度はっきりと提示した。
「よろしいですか? シュトライツ王国は崩壊します。従って、保険金は入ってこないかもしれませんよ」
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