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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
天使が訪れる時/10
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「注意事項がいくつかあります。よくお聞きください」
「はい」
聖霊師の中でも、聖なるダガーを持った聖霊師しか知り得ない話を、崇剛はゆっくりと話し出した。
「あなたの魂に入り込んでいる邪気を払います。ですが、あなたの魂は肉体に入っています。ですから、引き剥がすことがとても困難です。少しでもずれた時には、肉体、魂いずれかに損傷を残すこととなってしまいます」
旧聖堂での戦闘とは比べもにならないほど、細心の注意が必要とされる。浮遊霊や怨霊はすでに魂だけになっているが、元は肉体という器の中にある。勝手が違うのだった。
モデル張りにポーズを決めている俺様天使――シズキを、崇剛はチラッとうかがう。
(ラジュ天使もそうですが、私の魂の修業のために、幽体離脱はしていただけませんからね)
脅しでも何でもなく、ただの注意事項だったのだが、気の弱い元にとっては十分恐怖となるもので、のどをごくりと鳴らした。
「はい……」
「終了するまで、目を閉じていていただけますか?」
安心させるために、崇剛は優雅に微笑んで見せた。その心のうちでは、
(見えていると、ダガーを投げる仕草が入るので、怖がる――驚くという可能性が高くなってしまいます)
聖霊師が武器を所持しているとは知らない元は素直に「わかりました」とうなずいて、すぐさま目を閉じた。
崇剛は椅子から立ち上がり、まぶたを閉じ、ロザリオをシルクの生地越しにつかんで、祈りを捧げる。
主よ、どうか、こちらの者をお救いください――
さっと開け放たれた水色の瞳はどこまでも冷静で澄み切っていた。
いつもと違い、効き手ではない左手で瑠璃色の貴族服の隙間から、聖なるダガーのシルバー色のつ柄をつかもうとする。
すぐに触れるチャンネルを変えて、霊界の透き通ったものを取り出す。
線細い体の前へと持ってくると、慣れた感じで床と平行にすうっと上へ投げた。
右手の甲で横向きのダガーを受け止め、手をくるっと外向きに回し、まるで手に吸いついているように回転した、短剣の柄を人差し指に引っ掛け回し、中指との間に入り込ませ、二本の指ではさみ持ちした。
冷静な水色の瞳と同じ高さへ持ってきて、千里眼のチャンネルを最大限に引き上げる。
(邪気にも意志があります。従って、消滅させられるとわかっている以上暴れまわります)
元の肉体の中をじっとうかがう。黒い煙みたいなものが、あたふたと逃走しようとしているのがはっきりと見えた。
(相手の動きを予測することが必要となります。右、左、右上、上……今です!)
手の甲を元に向けたまま突き出した。
紺の髪は艶やかに揺れ、聖なるダガーはシルバーの線を描いて、元の額を目掛けて真っ直ぐ飛んでいった。
刃先が相手に触れると、そのまま貫通する。肉体を通り抜けたあと、真っ黒な影だけが診療室のドアに磔となった。
ズバン!
霊界だけで、ダガーが刺さった音がしたが、悲鳴も何も上がらなかった。邪気はゆらゆらと風船のように揺れていた。
(成功したみたいです――)
聖霊師の役目は終了し、天使へ引き渡されたが、
「消滅して、俺の前に跪くがいい!」
俺様なセリフが響くとともに、
ズバーンッッッ!!!!
まわりのものを引き裂くような爆音が響き渡った。さっきまで静かで穏やかなベルダージュ荘に突如湧き上がった大きな音に、瑠璃はびっくりして、大きく目を見開いた。
「な、何じゃっ!?」
驚きはしなかったが、崇剛は冷静な水色の瞳を、天使の手元に素早く向けた。そこには、ダガーとは違った鉄の塊があった。
「魂の浄化に拳銃を使われるのですか?」
「はい」
聖霊師の中でも、聖なるダガーを持った聖霊師しか知り得ない話を、崇剛はゆっくりと話し出した。
「あなたの魂に入り込んでいる邪気を払います。ですが、あなたの魂は肉体に入っています。ですから、引き剥がすことがとても困難です。少しでもずれた時には、肉体、魂いずれかに損傷を残すこととなってしまいます」
旧聖堂での戦闘とは比べもにならないほど、細心の注意が必要とされる。浮遊霊や怨霊はすでに魂だけになっているが、元は肉体という器の中にある。勝手が違うのだった。
モデル張りにポーズを決めている俺様天使――シズキを、崇剛はチラッとうかがう。
(ラジュ天使もそうですが、私の魂の修業のために、幽体離脱はしていただけませんからね)
脅しでも何でもなく、ただの注意事項だったのだが、気の弱い元にとっては十分恐怖となるもので、のどをごくりと鳴らした。
「はい……」
「終了するまで、目を閉じていていただけますか?」
安心させるために、崇剛は優雅に微笑んで見せた。その心のうちでは、
(見えていると、ダガーを投げる仕草が入るので、怖がる――驚くという可能性が高くなってしまいます)
聖霊師が武器を所持しているとは知らない元は素直に「わかりました」とうなずいて、すぐさま目を閉じた。
崇剛は椅子から立ち上がり、まぶたを閉じ、ロザリオをシルクの生地越しにつかんで、祈りを捧げる。
主よ、どうか、こちらの者をお救いください――
さっと開け放たれた水色の瞳はどこまでも冷静で澄み切っていた。
いつもと違い、効き手ではない左手で瑠璃色の貴族服の隙間から、聖なるダガーのシルバー色のつ柄をつかもうとする。
すぐに触れるチャンネルを変えて、霊界の透き通ったものを取り出す。
線細い体の前へと持ってくると、慣れた感じで床と平行にすうっと上へ投げた。
右手の甲で横向きのダガーを受け止め、手をくるっと外向きに回し、まるで手に吸いついているように回転した、短剣の柄を人差し指に引っ掛け回し、中指との間に入り込ませ、二本の指ではさみ持ちした。
冷静な水色の瞳と同じ高さへ持ってきて、千里眼のチャンネルを最大限に引き上げる。
(邪気にも意志があります。従って、消滅させられるとわかっている以上暴れまわります)
元の肉体の中をじっとうかがう。黒い煙みたいなものが、あたふたと逃走しようとしているのがはっきりと見えた。
(相手の動きを予測することが必要となります。右、左、右上、上……今です!)
手の甲を元に向けたまま突き出した。
紺の髪は艶やかに揺れ、聖なるダガーはシルバーの線を描いて、元の額を目掛けて真っ直ぐ飛んでいった。
刃先が相手に触れると、そのまま貫通する。肉体を通り抜けたあと、真っ黒な影だけが診療室のドアに磔となった。
ズバン!
霊界だけで、ダガーが刺さった音がしたが、悲鳴も何も上がらなかった。邪気はゆらゆらと風船のように揺れていた。
(成功したみたいです――)
聖霊師の役目は終了し、天使へ引き渡されたが、
「消滅して、俺の前に跪くがいい!」
俺様なセリフが響くとともに、
ズバーンッッッ!!!!
まわりのものを引き裂くような爆音が響き渡った。さっきまで静かで穏やかなベルダージュ荘に突如湧き上がった大きな音に、瑠璃はびっくりして、大きく目を見開いた。
「な、何じゃっ!?」
驚きはしなかったが、崇剛は冷静な水色の瞳を、天使の手元に素早く向けた。そこには、ダガーとは違った鉄の塊があった。
「魂の浄化に拳銃を使われるのですか?」
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