明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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ベッドに誘って

忘れろや:明引呼の場合

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 颯茄が部屋からリビングへやってくると、あちこちでおもちゃ箱を逆さにし、中身を取り出して遊んでいる子供たちに遭遇した。

「きゃーきゃー!」
「ブーン!」
「あ、そっちに行くよ」
「向こうでやろう?」

 話し声だけで、大変な賑わいである。何せ、二百人以上もいるのだから。

「小説進まないから、部屋から出てきたけど、すごいことになってる」

 一人で静かに酒でも飲もうかと思ったが、母親である自分にできるはずがない。今の状況のままで、とりあえずダイニングのカウンター席に腰掛けた。

「子どもたちであふれかえってるなあ。我ながらよくこれだけ産んだものだ」

 飛行機のおもちゃを片手に、子供の一人が嬉しそうに走り寄ってくる。

「ママ、お仕事終わったの?」
「ううん。一休み」
「そうなんだ。お仕事、楽しんでね!」
「ありがとう」

 エキュベルのジンを慣れた感じで取り出し、キンキンに冷えたショットグラスに注ぐ。一杯目を一気飲みして、颯茄はほっとため息をついた。

「よ」

 背後からしゃがれた声がかかった。

あき
「疲れてるみてえだな」

 そう言うなり、明引呼は颯茄の隣に腰掛けた。颯茄は空になったグラスをしげしげと眺める。

「んー、疲れてるっていうより、頭がパンクしてる」
「そうか」

 もう一杯飲もうと、瓶に手を伸ばしながら、颯茄は、

「明は、スランプの時どうしてる?」
「オレは潔くやらねえな」

 彼女に思いつかない返事が返ってきた。

「社長は違うね。部下が動いてるから、一人じゃないもんね」
「だな。てめえも一人じゃねえだろうが」

 明引呼が酒を一口煽って、颯茄は少しだけ微笑む。

「ま、担当さんとかいるしね。音楽のほうは、蓮や光さんがほとんどやってくれてるし。助かってるよ」

 本当にありがたいことだと、颯茄は思う。いつも自分一人じゃなくて、誰かが一緒に走ってくれているのだ。

「こういう時はよ、違えことして一旦頭空っぽにすんだよ」

 明引呼は言って、大きな手で颯茄の片手を包み込んだ。彼女は強く握り返す。

「どうすればいいの?」

 バーボンを飲んで、葉巻の灰をトントンと落として、明引呼は今颯茄を見た。十分な間だ。

「……するか?」
「久しぶりだね」

 颯茄も葉巻の煙を上げ、子供たちには絶対聞こえない、やり取りをする。明引呼は葉巻を灰皿ですり消した。

「なら、オレの部屋に移動すっか?」
「そうする」

 颯茄も軽く葉巻をすり消して、

「連れてくか?」
「甘えちゃおうかな?」
「じゃ、行くぜ」

 明引呼の瞬間移動で、子供たちの前から、パパとママは消え去ったが、子供にはよく慣れている光景なので、誰も気づいていなかった。なぜ、パパとママが消え去ったのかは。

 颯茄は明引呼の部屋にきても、明るい中で、長々と小説のことを語っていた。

「……っていうわけで、今のところ動かなくなってる」

 夫してやれること。それは……。

「いつまでも小説のこと話してねえで、とりあえず忘れろや」

 意識下でつながっている明かりを全て消して、遠くの街明かりだけになる。颯茄を強く抱き寄せて、明引呼は口付けをした。

「ん……」

 口を塞いだのだ。

 地上よりも簡単に脱ぎ着できる服はあっという間に、ベッドの下へ散らばった。

「女はこの形が好きなんだろ?」
「ふふふっ、そう」

 夫婦だけの暗号。

「ならすっか」

 ベッドの軋む音が響くと、二人はまた唇を合わせた。
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