【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

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4章

4ー4

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「ちなみに誰? オレが知ってる子? 一年? 二年? あ、中学一緒だった子?」

「教えるわけないだろ」

「いいじゃん、教えろよ。誰にも言わないからさ」

「無理」

 門扉から離れると、青はうんざりした様子でシッシと叶太を手で追い払う真似をした。

 こんなにも面白い話を聞かされて、すぐに退散する自分じゃない。叶太はニヤニヤと青との距離を詰め、五十嵐家の門扉に両手をかけた。

「そっちからそんなすげー面白そうな話振っといて、その反応はないんじゃないの~?」

「……言わなきゃよかった」

「後悔してももう遅いでーす」

 変顔を門扉の上から出すと、青は顔を横に向けて「だる」と声を漏らした。

 茶化したい気持ちはあるものの、青自ら好きな人の話を振ってきたのだ。ということは、ちょっと聞いてほしい気持ちがあったんじゃないのかな。本人がそんな自分の気持ちに気がついているかは、さておいて。

 同級生には言いにくいことがあるのかもしれない。やれ年上の自分が聞いてやろう、と叶太は尋ねた。

「好きなら告白すればいいじゃん。青ならすぐOKもらえるんじゃないの?」

 我ながら的確なアドバイスだ。自信満々に相手を見ると、青は細めた目の奥から冷たい視線を叶太に送っていた。

「……これだから非モテは」

 青が小声で舌打ちする。

「おい! 聞こえてんぞ!」

 門扉を揺らそうとした瞬間、叶太はガンッと顎を強打してしまった。

「痛ったぁ~!」

 激痛が走る顎を押さえてうずくまる。青は呆れつつ叶太と同じ目線まで膝を折り、「大丈夫かよ」と門扉の格子に指をかけた。

「ケツアゴんなったらどうしよ……オレもうお嫁にいけない」

 青がフッと笑う。

「そしたらオレのところに来たら」

「青くんはやさしいね」

「そうそう、オレ優しいの」

 ひと通り冗談を言い合ってから、叶太は本題に戻した。

「告白しねーの? その人に」

「うん。しない」

「なんで?」

「絶対振られるから」

 門扉越しに、青は諦めたように笑った。優しいけれど、どこか寂しい表情が格子の奥にある。青にそんな顔をさせる人間がこの世界のどこかにいる。そんな現実をまざまざと感じ、なんとも言えない気持ちになった。

「あー……まあ、非モテにはわかんないけどさ、なんで振られるって最初から決めつけんのよ? その人だって、密かに青のこと好きかもしれないじゃん?」

「ないない。そもそもオレのこと、そういう目で見てない。オレが好きってことにも気がついてないし」

「そんなのわかんなくない?」

「わかる。毎日見てるから」

 青はきっぱりと言い切った。

「ま、毎日……」

「うん、毎日」

 ということは同じ学校の人か?

 さっきから繰り出される、清々しいほどの受け答え。

 日々たくさんの好意に晒されている青がここまで言うのだ。青の好きな人は、青のことなんてまったく眼中にないのだろう。恋愛初心者の自分でも、青が難しい恋をしていることは理解できた。

 大人びた恋愛の渦中にいる青に対し、いっそ感動を覚えるくらいだった。

「めっちゃ一途じゃん」

 思わず心の声を漏らすと、青は「良く言えばな」と自嘲気味に返してきた

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