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5章
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最近、青の様子がおかしい。
いつからそう感じるようになったのか、叶太は正直思い出せない。ただ一学期の期末テストが始まる前から、「おや?」と引っかかることはちょこちょこあった。
まず登校前に家の前で会っても無駄絡みしてこなくなった。前は家の前で会うたび、やれ寝ぐせが変だの口の横にパンのカスがついているだの。風紀委員並みに指摘してきていたのだが、ここ最近は朝家の前でかち合っても、それがまったくないのだ。
腹話術かってレベルで開いているのかいないのかわからない口から「うっす」と挨拶だけ漏らすと、一人自転車に乗ってさっさと学校へ行ってしまう。
学校の廊下で会ったときもそう。以前は叶太とすれ違うたび、こちらの隙を狙って脇腹をくすぐってきたり、冬は下敷きを擦って髪の毛を逆立たせてきたりと、小学生男子みたいなイタズラを仕掛けてきたものだ。
でも今は、叶太の存在に気づいているのかいないのか。目が合ってようやく「よう」と言ってくるだけで、いたずらのいの字もないほどおとなしい。
叶太が目を開けると、見慣れた部屋の白い天井が、霞んだ視界の中で揺れていた。
体が熱い。そしてしんどい。
声を出そうと喉を震わせてみるが、口から出たのは空気が抜けるような音だった。
「……ぁー……」
少し経ってから、おじいちゃんみたいに掠れた声がやっと出る。
自分はどれだけ寝ていたんだろう。枕元のスマホで時間を確認したいけど、関節が軋むように痛んでだるい。体を動かすのがつらい。
なんとか顔を横に向け、机の上に置いてあるデジタル時計に目をやる。日付は七月二十二日の金曜日。時刻は夕方で、もうすぐ五時になるらしい。
「のどかわいた……」
叶太はベッドに仰向けになったまま、ぽつりとこぼした。
希望を言ったって、飲み物が勝手に出てくるわけじゃない。昼間に母親が枕元に置いてくれた五百ミリリットルのポカリスエットは、さっき寝る前に飲み干してしまった。
夕方は母親がパートに出ているので、飲み物がほしかったら自分で一階の冷蔵庫まで取りに行かないといけないのだ。
「はあ……いくかぁ~……」
気合いで体に掛けていたタオルを剥ぎ取り、叶太はベッド脇から足を下ろした。額に貼っていた冷えピタがペロンと剥がれ、手元に落ちる。
温くなった冷えピタを取る際、枕の横にあるスマホの画面がちょうど光った。見るとラインの通知が何件かきていた。
相手は寺嶋とクラスの友達二、三人。どれもが叶太の体調を心配する内容のものだ。その中には北村から届いたメッセージもあった。
『体調は大丈夫ですか? 何か必要なものがあれば、遠慮せずに言ってくださいね! 持っていきます!』
こちらを気遣うメッセージ。ありがたいなと心の中で感謝しつつ、どこかでやっぱり遠慮が勝ってしまう。
叶太が体調を崩したのは二日前のことだ。期末テストが始まってから、なんとなく夜になると喉が痛くなる日が続いた。テスト期間中はエアコンの風にやられたかな~とやり過ごしていたものの、二日前の夕方――テスト最終日の帰り道になると、本格的に熱が上がりはじめた。
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