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6章
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しおりを挟む「さすがに治ったよ。っていうか、オレが風邪引いてたこと知ってたんだ」
「あ、すみません。僕が勝手にマキオに喋ってしまって……」
申し訳なさげに説明する北村を差し置いて、マキオは「北やんのやつ、ずっと心配してたんすよー」と叶太に教えてくる。
こっちがマキオということは、筋肉質な方が川崎か。マキオより多少落ち着いた性格なのか、川崎は叶太に軽く挨拶すると、北村に向かって「二人で並んでるのか?」と聞いた。
「買うものが決まってるなら、手分けして買ってきた方がいいぞ。さっきより人が増えてる」
川崎のアドバイスに、北村は「あ、ああ」と気まずそうに笑った。
「あのな、北やんは椿先輩と一緒にいたいから手分けして買い出しなんかしてないの。わかる?」
「あ、ごめん。そうなの?」
マキオのツッコミに対し、バカ正直に北村本人へと聞くあたり、川崎もなかなかだなと思った。
苦笑しつつも、北村の口から否定の言葉は出てこない。なんだかいたたまれなくなった叶太は、自分から北村に声をかけた。
「た、たしかにさっきより人が多くなってきてるし、オレ、きゅうりの一本漬け買ってくるよ。たぶんすぐ終わるから、飲み物も買ってくる。北村はラムネでいいんだよな?」
早口で言うと、マキオが「あ」と声を挟んだ。
「きゅうりの一本漬けなら、今五十嵐が並んでますよ」
突然明かされた青の存在に、叶太はドキッとした。マキオと川崎が来ているなら、青が来ていてもおかしくない。考えれば簡単にわかることなのだが、聞かされるまで気づかなかった。
「せっかく並んでもらってるんで、先輩たちの分も買えって今ラインしますね」
マキオはたこ焼きを持っていない方の手を使い、器用にスマホを操作し始める。スマホを頭上で左右に降り出したのは、それからすぐのことだ。
「ここ人が多すぎんのかなぁ。電波悪いわ」
青のトーク履歴からメッセージを送信しているのに、なかなか送信完了にならないとマキオは言った。
「やっぱりオレ行ってくるよ。もし青がまだ買えてなかったら、オレたちの分も頼みたいし」
「それなら僕が――」
「北村はここ並んどいてよ。な」
半ば強引に北村をその場に残し、叶太は列から一人外れてきゅうりの屋台を探しに行った。
きゅうりの屋台は、唐揚げの店から四つほど店を挟んだところにあった。暖簾に書かれた『きゅうり』の文字を追って来てみたものの、暖簾の下には人がいなかった。代わりにあるのは『売り切れ』の手書き文字が書かれた段ボールだった。
うそだろ。叶太はガックリと肩の力が抜けた。きゅうりが売り切れることなんてあるのか? いや、それはさすがにきゅうり農家の人に失礼か。今日に限って需要と供給がマッチしてなかったとか?
なんにせよ、きゅうりは諦めるしかなさそうだ。せめて飲み物だけでも買ってから、北村と合流しよう。
引き返そうと、その場で踵を返したそのとき。叶太はちょうど後ろを通りがかった人と、肩が派手にぶつかってしまった。
咄嗟に相手が腕を掴んでくれる。
おかげで転ぶことはなかったが、もし掴んでもらわなければ後ろに倒れていただろう。
「す、すいません」
不注意だったのは自分の方なのに助けてくれた相手。叶太は相手を見上げて息を止めた。
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