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6章
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しおりを挟むそのときだった。河川敷一帯に、花火の打ち上げられる音が響いた。
「あれ? もしかしてもう花火始まった?」
きょろきょろと周囲を見渡すと、青が「もうすぐ始まる合図だろ」と教えてくれる。確かに周囲の観客も、まだ平常通りだ。
早く北村たちのところに戻らないと。それにまだ自分は買ってくると約束した飲み物も買えていない。
懐かしさの上に焦りが重なる。でも、もうちょっとここにいたい気持ちがあった。
「昔よく食ったよな、それ」
屋台の煙で白んだ夜空を見上げながら、青がフッと笑った。久しぶりに見る青の柔らかい表情。最近は青の硬い表情しか見てこなかった気がする。一瞬、昔よく一緒に花火大会に来てた頃の青と重なった。次の瞬間、目の奥が熱くなった。
「あ、れ……?」
我慢していたつもりだったのに、なぜか涙が頬を伝う。まるで蓋の失くしたペットボトルを倒してしまったみたいに、涙が次から次へと溢れて止まらなかった。
「ごめ……っなんか、急に……」
自分でも説明ができない。どうして泣いているのか。どうして涙が出てくるのか。
叶太はわたあめを持ちながら、もう片方の手で目をゴシゴシと擦る。
ただ懐かしかった。久しぶりに食べたわたあめが美味しかった。今より仲が良かった頃の青の面影がちょっとだけ見えた。それだけだ。悲しいわけじゃない。なのにどうして……。
「移動するぞ」
人目を気にしてか、青の手が叶太の手を取った。昔よく繋いだ手は、記憶の中のそれよりもだいぶ硬く、そして大きくなっていた。
自分よりずっと子どもだと思っていた幼なじみ。思えば一歳しか違わないのに、どうして自分は青のことをずっと子ども扱いしていたんだろう。
紛れもない。今ではこんなにもしっかりした『男』なのに。
泣いているからなのか、顔が熱い。繋いだ手から向こうの体温が自分の中に入ってきて、心臓が無性に騒いでいる。ドキドキする。
青に手を引かれながら、屋台の並んだ河川敷を二人で外れる。人混みの喧騒を離れると、青と自分だけの息遣いがそこにあった。
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